第49話 中州でキャンプ
フミギュ川を遡ること5日。
上陸ができないけど、海と違って、色々景色が変わるから面白いよ。
僕は、森の中で育ったから、森なんて見飽きている、て思ってたけど、全然だ。
見たことのない木や花が、陸地には生えていて、とっても興奮してる。
それは僕だけじゃなくて、僕と一緒に育った3人も同じだ。
あんなに見てきた森なのに、まったく知らない森があるんだね。
しかも、今まで海に食傷気味だった僕らは、潮の香りと違う、水の香り、漂ってくる木々の香りに、ちょっぴりはしゃいでいたよ。
「随分と川幅が狭くなってきたのは分かるかの?」
僕たち子供4人は、ドクのお話しを聞いていた。
「もうちょっと行くと、中州があるんじゃが、上陸してみたいかの?」
「中州?」
「川の中にある島のことじゃよ。」
「川に島があるの?」
「山から運ばれてきた土砂が堆積してつくられる土地のことだよ。」
僕は、ぽかんとしてる3人に、ちょっぴりドヤ顔で言ったよ。
「山?どこにもないよ。」
「ドクが言ってたでしょ。フミ山から流れてるんだよね、この川って。」
「アレクの言うとおり。フミ山だけじゃなくて、その辺の岸の土も削っているがのぉ。それを水が持ってきて、土の場所をつくるんじゃ。まぁ、エッセルの受け売りじゃがの。ホッホッホッ」
「僕、その実験見せられると思うよ。」
僕は、なんとなく前世の子供時代に学校でそんなことをやった気がする。
僕は、それがとっても楽しくって、一人でずっと水を流し続けていたんだ、と、思う。まぁ、これは、自分じゃなくて、誰かのお話かもしれないけど・・・
「ほぉ。それは楽しみじゃのお。」
「実験?勝手にやったらまた怒られちゃうよ。」
「ニーは心配性だなぁ。ドクが一緒なら大丈夫だよ、ねぇ、ドク。」
「そおじゃのぉ。」
「で、どうやるんだよ。」
興味津々でナザは言った。実験、好きだもんねぇ。
「面倒、かけないでくれよ。」
そう言うのは、クジ。お兄さんぶってるけど、実は興味あるんでしょ。鼻の穴がピクピクしてるよ。僕とナザは、クジのお鼻ピクピクに気づいて、肘をつつきあった。やばい。笑いが漏れちゃう。
「なんだよ。」
「別に、なんにも。ねぇ、クジは実験参加しないの?」
「しない、なんて言ってない。」
「面倒なんだろ?」
「面倒かけるなって言ってるだけだ。ダーとナザが実験って言うと、絶対ゴーダンの拳骨が落ちるからな。」
「だから、ドクがいれば大丈夫なんだって。」
「俺がどうしたって?」
その時、背後から低いおっさんの声がしたよ。
ヒィッ、て、男3人は震え上がったけど、ニーだけはにやにやしている。知ってて教えなかったな。
「ねぇ、ゴーダンさん。ダーがなんか実験するんだって。ドクも来るけど、やっていい?」
ニーが言った。ギロリと、ゴーダンが僕を睨むけど、ドクがいれば問題ないよね。
「何をするつもりだ。」
「んとね、山から川が流れて、中州をつくるんだ。」
「は?いや、全然分からんが。」
ゴーダンは、ドクに目を向けた。
「いやはや、異世界は科学とやらで、いろんなことを知ってるようじゃのぉ。前にエッセルが言ってたのを覚えてないかのぉ?中州のつくられ方だとか、川が山や川岸を削ってなんちゃら、言ってたじゃろ。どうやらアレクは、その様子を作れるらしくてのぉ。そういうことじゃろ、アレクよ。」
「そうそう。ねぇ、ここに土を持ってきて、水、流してもいい?」
「ここでか?」
「いや、待て。アレクよ。船ではさすがに儂も怒られると思うぞい。せっかくもうすぐ中州が見える。どうじゃ、上陸してから、ちいとばかり休憩せんか。」
「え、ほんと?やったー!」
真っ先にナザが、飛び上がったよ。
僕だって、土に降りたいよ!あ、ドクってはじめからそのつもりだったんだね。最初に言ってたもんね、中州に上陸。
「うーん。まぁ、中州なら危険は少ないが・・・」
「そうじゃろ。ついでに食材も確保したらどうじゃ。バフマ坊なら、うまいもんつくってくれそうじゃわい。」
「ねぇねぇ、中州って危険は少ないの?」
僕は、ゴーダンの言葉が気になって聞いてみたよ。
「ああ。中州は川で区切られているから、飛ぶか泳ぐかしなけりゃたどり着けねぇ。博士のいう中州は、この辺りの最大のもんで、植物やなんかは、陸地と変わらんが、凶悪なやつは少ないな。おかげで、鳥や両生類を中心とした産卵場所になってるから、卵や幼体といった食材が豊富だ。」
「へぇ。それは楽しみだね。」
「狩りに行くなら、大人を連れて行けよ。親の方はそこそこ強いし、子供がいると普通はおとなしい奴でも、攻撃してくるからな。」
「「「「はぁい。」」」」
僕らは、ゴーダンの言葉にお行儀良く、答えたよ。
楽しみだなぁ、中州。
「まぁ、長い航海だったし、2,3日、キャンプでもして休憩するか。」
「いいの?」
「ああ。お前ら、手分けして、みんなに伝えてこい。」
「「「「はぁい!」」」」
ゴーダンの言葉に、僕らは、テンションマックスで、乗組員のところに走ったよ。
やったぁ。中州でキャンプだ!楽しみだね~。
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