ナスカッテ国編

第44話 いざ異国へ、出航!

 僕らは船でミモザに戻ってきたよ。

 用意されていた、港の船着き場へと、船を泊める。

 船は外洋を渡ることを主眼に造られたから、そこそこでかい。

 フェリー、とは言わないけど、馬車も乗れるし、実際今も乗ってるよ。


 港に入ると、噂を聞きつけた多くの人が見に来たよ。


 「以外と普通だね。」

 そう言ったのは不屈の美蝶のノアさんだ。

 うん。外見はいたって普通の木造船。

 ただし、防御力はすごいよ。木も特殊ならコーティング替わりの魔法陣や魔導具も特別製。作成者その1が言ってました。


 不屈の美蝶さんが全員来てたし、ここに彼女たちと残る予定のミラ姉が船内を希望者に案内することになった。見られて困る物は全部リュックの中。美蝶さんやミラ姉の目を盗んで不届きなことをする人もいないだろう、ってことで、自由に散策して貰うことにしたんだ。


 残りの僕らは、丘の上の代官屋敷へ。

 忙しい伯爵はとっくに帰っちゃったけど、一応名前だけは責任者のドクに変わって執務を担当してくれる人達や、諸々の手続きのために、一度集合して欲しいんだって。

 そんなわけで、来たけど・・・


 なんだ、サダムさんとセジさんじゃん。


 相変わらず、きれいなお辞儀で迎えてくれた二人。

 どうやら、二人が優秀なのは本当で、ここの執務を担うのは、メインがセジさん、補佐がサダムさん、らしい。二人は同い年で学校も一緒に通っていたらしい。けど、文武いずれも、女性のセジさんの方が連戦連勝。ということで、ここでもメインはセジさんなんだって。確かにもセジさんの方が、ちょっぴり、良いかも・・・



 前に伯爵とお話し合いをした大広間に連れてこられた僕たち。

 そこは、前世での結婚式場みたいに、大きなテーブルがいくつか置いてあって、その周りに椅子が並べられ、ちょっとした軽食とか飲み物が置かれていた。

 で、何故か、ドクとゴーダン、僕は、正面の花婿・花嫁席みたいなところに案内され、他のメンバーは一番中央の子供達が座っている席へ。おや、僕の乳兄弟ズも、ここに呼ばれたんだね。顔が青いぐらい緊張していて、ちょっとかわいそう。アンナを見て安心したのか、見る見る顔色が戻っていったよ。良かった。


 僕たちの横には、軽食とか何も乗っていなくて、書類が置かれている小さなテーブルが一つ。そこに、セジさんとサダムさんが、立ったまま着いた。


 僕は、前の席から、みんなの様子を見てみる。

 目の前にいるのは、ダンシュタのみんな。

 その右後ろには。虐殺の輪舞の面々。反対の左側には、バフマ君と、誰だ?別に二人の知らない人。そして、彼らのテーブルの向こう側に、何度か見た従業員の人と一緒にトッドさんミンクちゃん、それにあれはギルドのスタッフのお兄さんかな?


 「それでは、これから船舶許可証交付およびエッセル号出港祈念式を執り行います。」

 僕らが席に着いたのを見て、サダムさんが宣言したよ。どうやらなんらかの式典が始まるらしい。


 「では、まず、アレクサンダー・ナッタジ殿、前へ。」

 え、僕?ゴーダンに促されて、セジさんの前に立ったよ。


 「では、まずは船舶許可証の交付を行います。ダンシュタ領商業ギルド所属ナッタジ商会の所属として、以下の概要の商船『エッセル号』を、タクテリア聖王国所属の商船である旨、これを証明する。聖王ティオ・ジネミアス・レ・マジダシオ・タクテリア。アレクサンダー様、商会を代表してご確認ください。」

 表彰式みたいな感じで、書類を渡される。僕は両手で受け取ったよ。

 後で聞いたけど、この証書は船籍の証明する書類みたい。名前は申請するときに、ドクとゴーダンが勝手につけたらしい。まあいいけど。

 僕はママの名代で書類を貰ったってことだね。こういうことは先に言ってて欲しいよ、まったく。


 その後も、どうやら王様の名代としてのドクの任命式とか、よくわかんない書類を前に座らされた3人で順番に受け取ったよ。そして、最後の最後には、出港の無事を祈って、とか言われて、船旅に参加しない人に、塩とお酒を頭からかけられた。今は代表して前の3人がかけられたけど、実際に出港する際は、港に集まった人が好き勝手に乗組員にこれらをぶっかけてくるんだって。うわぁ。服の用意が要りそうです。



 そんな感じで、よく分からない式典に参加した僕たち。


 翌朝、教えられた通りに、船に乗るところを狙われて、塩とかお酒とか、いっぱいかけられちゃったよ。ちょっぴり有名になってしまった僕に、集中するとか、ちょっといじめだよね。5歳児をお酒でおぼれさせてはいけません!


 そんな感じで、結局最後に乗船となった僕。

 乗る前には、一緒に行く、とダダをこねたミンクちゃんに、いっぱいお土産を約束させられたり、とか、お見送りに来てくれたアンナを見て、ちょっぴり目から水が落ちた、とか、そんな一幕もあったけど、結構大所帯になった僕たち。

 はじめての土地へと向かって出港です。

 ヨーソロー!!

 

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