第42話 ママからの手紙
僕たちが、宿に戻ると、なんと!アンナだ!
僕は、「アンナだ!」と叫びながら、アンナにタックルしたよ。
アンナは、「おやおや」なんて言いながら、僕を簡単に抱きとめてくれた。
別に、アンナがいなかったからって、そんなに寂しかったわけじゃない。わけじゃないんだけど、何だろう、奥底からわいてくる泣きたくなるような感情は?
アンナは産まれた時からずっといたから、離れていて再会できると、妙に鼻の奥が痛くなる。ミサリタノボア子爵に買われて、会えなくなってて、だけど思わぬ森の中で再会したときも、死ぬほど安心したし、ね。
が、これは失敗だったな。
アンナに夢中で、周りを全然見てなかったけど、気がつくと、僕のことをニヤニヤしながら見てるたくさんの視線・・・うっ。恥ずかしい。僕はアンナに抱っこされたまま、アンナの胸に真っ赤になった顔を埋めたよ。
といっても、永遠にそんな風に隠れているわけにもいかなくて・・・
覚悟して、顔をあげる。
「はいはい。ダーはいつまでも赤ちゃんだねぇ。だけどほら、来たのは私だけじゃないんだ。みんなに挨拶をおし。」
アンナはそういうと、僕を下ろして、背中を押した。
アンナの後ろにいるのは、気づかなくても仕方ないほど、小さな影。
ナザ、クジ、ニーだ!
て、みんなどうしたの?
「ほれ。」
クジが前に出てきて、僕に何かを渡したよ。
?
手紙?
クジを見ると、目線で読むように促される。
僕は封筒の中から書かれた紙を出す。
あ!ママだ!ママからの手紙だよ!
あれ?なんか、目の前がにじんで、字が読めないよ。おかしいな。
そんな風に思って手紙を見つめていたら、ふわっと体が浮き上がった。
顔を上げると、目の前にセイ兄の顔?
「手紙は後にしようか。まずはみんなお腹すいただろう。ご飯にしようか。」
セイ兄はハンカチで僕の目を押さえながら、そんな風に言った。
そうして、僕らは、懐かしい顔たちと、いっしょにご飯を食べたんだ。
ママからの手紙は、ドクに頼まれたものを渡して欲しい、ということと、僕がこれから買い出しに行くと思うけど、その時に土も探して欲しい、っていう内容だったよ。それと、将来のために、3人の子供と一緒に頑張って良い物をみつけてきてね、って書いてあった。
うーん、何の話だろう?
手紙を読んでいるところに帰ってきたドクに、手紙を渡して何のこと?って聞いたんだ。そしたらビックリ。僕のベルトの新機能で、ベルトにはめて僕の魔力を充填した魔石を使って、遠距離通信を可能にしたんだって。まだ完成じゃないけど、この前見つけたガーネオの魔法陣、あれを参考に魔力を増幅することによって、念話を魔法陣越しに行う、というものらしい。その媒介として、話す相手の魔力入り魔石がいるんだって。僕の魔力満タンの魔石をベルトから外し、とある魔法陣を書き込んだ魔導具をママに送っていたんだそうです。そして、ママの魔力をいっしょに送った魔石に充填して貰って送り返すように伝えてるんだって。僕はママの魔力の入った魔石をベルトにはめ込めば良いんだそうで、その術式は今からベルトに仕込む、らしいよ。もともとは壊れたら、別の場所においてある魔法陣を燃やして知らせる、あの反射の魔法陣の応用だって。ドクとガーネオという二人の魔導具作成の天才の技の合作ってとこかな?問題は、大量の魔力を魔石に込め、また使うときにも距離に比例して大量の魔力を使っての念話となるので、使える人間がむちゃくちゃ限られるってこと。幸い僕とママなら、大陸を超えても大丈夫な計算なんだって。やっぱりドクはすごいよね。これからは離れていてもママとお話しできるんだもん。
「まぁ、ミミがこれを寄こしたということと、手紙の内容から、アレクのナスカッテ行きは問題ないということじゃろ。あのチビどもも、連れてかなきゃならんようだが、その辺も込みで、ゴーダンと相談せにゃならんのぉ。」
ドクはそう言うと、僕のベルトを持って、どっかにいっちゃったよ。
それにしても・・・
ドクは本当にあんな子供達を、別の国へ連れて行くつもりなのかな?
僕が年齢のことをいうのは可笑しいかもしれないけど、僕より年長といったところで、クジで11歳、ニーは8歳、ナザにいたっては、6歳だよ。こんな子供達を異国、しかも安全とは言えない旅路に連れて行くのは、どうかと思うけど・・・
僕が考えてもしかたないこと、と思いつつ、これからどうなるんだろう、って、ちょっぴり不安になった夜でした。
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