第29話 仲間が増えた?!

 「明日は、みんなで最後の場所の調査に行くぞい。」

 夕方、みんな揃ったところでご飯。

 その最中にドクが突如、何の脈絡もなく、そう言ったんだ。


 「最後の場所、ですか?」

 と、ミラ姉。

 「そうじゃ。アレクが突き止めた、そのくっさい場所じゃ。」

 「一応、あそこには行く予定ですが、みんなで、ですか?」

 ヨシュ兄が、首を傾げた。

 ふうん、行く予定なんだ。でも、今日一日あったし、誰か調査に行ってるんじゃないのかなぁ。ちゃんと昨日、あの場所も報告してるはずだし・・・

 僕が、もぐもぐと、やっと食べられるようになった通常食のお肉を食べながら、そんな風に思っていたら、ヨシュ兄が解説してくれたよ。


 「いくらこの界隈で活動している冒険者と言っても、実際に目にしていない森の、ピンポイントの場所を探すのは簡単じゃありませんよ。それに、ダー君、見られたかもしれないって言ってたでしょう。予想通りのガーネオがいるなら、生半可な冒険者では、かえって危ないです。」

 「そうじゃ。だから、情報は止めてきたぞい。それと、宵の明星単独での調査を受けてきた。」

 ・・・・・

 みんな、?。

 顔を見合わせる。

 「おい、まさか、今日の用事ってギルマスに交渉にいったのか?」

 「交渉じゃないわい。要請じゃ。あいつは、駆け出しの頃から知ってるからの。ちょっとお話、と言えば喜んでしっぽを振ってくるわ。フォッフォッフォッ。」

 「おいおい・・・」

 「あ、それとな、このアレクをさらおうなんつう、おつむの軽い奴の始末は、儂が全権貰ってきたからのぉ。フォッフォッフォッ。」

 「いやいや、誰からだよ・・・いや、言うな。やっぱり言わんでいい。」

 なんか、ゴーダン、頭を抱えているよ。

 お食事の時に難しいお話しすると、消化に良くないんだけどなぁ。


 「もちろん、ティオのガキじゃよ。フォッフォッフォッ・・・」

 ブーッ、と口の中のモノを吐き出したのは、まさかのヨシュ兄。お行儀がダントツでいいはずのヨシュ兄にしては、珍しいね。て、ティオって誰だ?

 「グ、グラノフ博士・・・もしや、その、今、口に出されたご尊名は・・・」

 「坊主は硬くていかんのぉ。若い内から、そんなしゃちほこばっていたら、早く老けるぞい。まぁ、聞きたいことは分かるがのぉ。坊主の考えている通りじゃ。儂が許可をもぎ取ってきたのは、ティオ・ジネミアス・レ・マジダシオ・タクテリア、その人じゃのぉ。」

 ティオ・ジネミアス・・・・えっと、なんとかタクテリア?・・・・タクテリアって王族のファミリーネーム。って、ええ?ティオのガキって、王様のこと?

 まじか・・・


 「まぁ、そんなわけで、宵の明星の優先任務は、アレク誘拐未遂犯の捜索となった。ワーレン伯爵にも、その旨さっき伝えておいたからのぉ。」

 いや、勝手にそんなこと言われても。

 「おい、あんたは宵の明星とはなんも関係ないだろうがよ。何、勝手、言ってんだ。」

 「ほれ。」

 ニヤニヤ笑いながら、ドクはギルドカードを出したよ。

 S級冒険者ワージッポ・グラノフ。所属『宵の明星』

 ハハハハ・・・・

 誰もメンバーの知らないうちに、ドクってば、メンバーになってるよ・・・・

 反対、は、・・・・誰もしないようです。

 てか、ドク、S級?!



 ドクの話によると、僕のベルトが壊れたのを知ったドクは、僕の元へ駆けつけるべく、まずは王様に会いに行ったんだって。一応、魔導師養成校のオーナーで、ドクを雇ってる人、だからね。

 で、王様に、「校長、やめるから。」と、軽い感じで言ったらしい。いや、魔導師のトップ、だよねぇ?


 慌てた王様だけど、僕のことも気にしてくれている王様だから、僕の元に駆けつけることはOKしてくれたらしい。でも、校長を辞めさせたくない王様は、ドクに休職にして欲しい、と、お願いしたんだって。ドクってそんなに人望があったんだね。ちょっとビックリです。

 そこで、ドクが休職にする条件として、おそらく僕が巻き込まれたであろう事件についての、完全な指揮権を要求。王様の名の下に、人も情報も物も、あらゆる事項に優先してドクに寄こすように、命令書を発行させた。


 僕は知らなかったんだけど、そもそも直々に王様に任命される養成校の校長ともなると、侯爵レベルの権限を持つんだって。侯爵ってね、伯爵より上なんだ。つまりそもそもドクはワーレン伯爵やその他領主級の人に命令できる立場にある。でも、その権限を確実にするために、王様の命令書まで持ってきたんだって。相手がどんな立場の人か分からないけど王様より上はいないから、らしい。

 そもそも王都にいる段階では、僕がどんなトラブルに巻き込まれたか分かんなかったから、強権も発動やむなし、と思ったんだって。これって、感謝すべき?うーん。僕としては、そこまで大事おおごとにしないで欲しい、というのが、ちょっぴり本音です。



 「まぁ、そういうことでじゃ。事件が解決するまでは、アレクも王都に行かんでいいからのぉ。とにかく、敵はぶっつぶす。後顧の憂いを絶つってやつじゃのう。やるとこまでやれば、あとに続く馬鹿者も、諦めるじゃろうて。フォッフォッフォッ。」

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