第26話 えらい人達と、答え合わせ
そんなことを言っている間に、すぐに伯爵邸に到着。
話は通ってるみたいで、すぐに門番さんは馬車を通してくれて、玄関まで行くと、ゴーダンが一人で待っていたよ。取り次ぎとか面倒だから、出てきたんだって。
僕らは、ゾロゾロとゴーダンについていくんだけど・・・
「なぁ、なんでダーを抱いてんだ?まだ体調戻らないのか?」
とゴーダンが言った。そうだよねぇ。早く下ろしてよ。
「いや、今日はさすがにオイタが過ぎたから、罰として、1日抱っこの刑です。」
しれっと、ヨシュ兄が言ったよ。
えー、そんなの聞いてなかったよ!
「ふーん。詳細は帰ってから聞くとして、まぁ、伯爵なら文句も言わんだろ。しっかり反省してろ。」
ゴーダンは、そう言って、セイ兄に抱かれている僕にデコピンすると、そそくさとヨシュ兄のところに言って、なにやらしゃべっているよ。
だから、暴力は反対なんだって!
すぐに、到着した僕ら。
ゴーダンが「ガキはお仕置き中だから、無視してくれ。」なんて、伯爵様に告げ口して、なんだか、しれっとお話し合いが始まったよ。
まずは、ヨシュ兄が、ペンダントを出した。
ギルドマスターはさっきチラッと馬車で見たけど、はじめて手にとにとってチェックして、すぐに苦虫をかみつぶしたような顔をしたよ。
伯爵様も、同様だった。裏向けた時には、こめかみを押さえて、しばらく黙っちゃったよ。
みんな、伯爵様の言葉を待っていて、いやな静寂が訪れる。
そこそこ長いフリーズから復帰した伯爵。
「これは、あの魔導師ガーネオと見て間違いないんだな。」
「おそらく。」
ヨシュ兄が答える。
「分かった。先の鎧といい、このペンダントといい、あの二人が手を組んだという噂は真実であったか。狙いは・・・」
伯爵が僕を見た。次いで、全員の視線が僕に集まる。
「すみませんが、我々が呼ばれている以上、多少の情報開示はしていただけるんでしょうか。そのぉ、ダーちゃんの秘密、みたいなことにも触れるんですよね。」
おずおずと、マリンさんが発言する。いつも快活なだけに、新鮮な反応だけど、伯爵様の前だとこうなるのかな?うちの人達は王様の前でもここまで変わんないけど・・・
しばらく腕を組んでいたゴーダン。
「ミミ、どう思うよ?」
て、ママに丸投げかい!
「んー、二人には全部言っても良いと思うよ。秘密にするほどのことは何もないし。」
ママはなんでそんなこと聞くのか、本当に分かんないみたい。だって、この人達、ぼくのこと大好きじゃん、ってことらしい・・・うん。ぶれないママのこと、大好きだよ。
「そっか。まぁ、ミミが良いなら、お前らが困らん程度で。簡単に言えば、ダーは国中の貴族から狙われてる。」
「「はぁ?」」
マリンさんとバンジーさん、何故か素っ頓狂な声が被ったよ。この二人、見た目違ってもよく似てる。さすがに有名パーティの脳筋リーダーだね。ハハハ。
「まぁ、ミミがナッタジ商会の忘れ形見ってのは、知ってると思う。商会のゴタゴタで、ミミがなんとか商会を取り戻した、ってのは、まぁ、これも有名だな。」
二人は、まだ困惑顔で頷く。
「それで、商会の正式な承継ってのは、王の前で行うってのは知ってるか?」
二人は、首を傾げた。商人ギルドの人間ならいざ知らず、普通の人には関係ないし、ほとんど知らないんだろうね。二人のような高ランク冒険者でも、なんとなくそんなこと聞いたかもしれない、って程度だと思うよ。
「まぁ、そういうことだ。ミミが正式にナッタジ商会を承継するために、王都に行った。たまたまナッタジの先代エッセルの関係で、個人的にダーも王様にお目にかかったってやつだな。」
二人は、何かを察したように、ああー、と言ったよ。二人はゴーダンと同年代。ひいじいさんのことは、直接知ってるらしいし、そもそもここトレネーにおいては、ひいじいさんは相当有名で、まぁ、いろいろ噂には困らない、みたいなんだ。そりゃ王様とダチになるぐらいはするわな、心を読まなくても、二人の態度がそう語ってるよ。
「色々あるにはあったが、ナッタジ承継の儀は大々的に貴族やら何やら集めて行われ、異例のことに、王自らお言葉を述べた。のみならず、ダーを抱き上げて、国の至宝だ、国全体で育てる、とかぬかしやがった。」
もしもしゴーダンさん。伯爵というえらい貴族もいるのに、不敬罪でしょっぴかれるよ?まぁ、気持ちはわかるよ、ねぇ。
二人は、「はぁーーー。」と、ため息とも肯定とも思える息を吐き出し、むちゃくちゃ気の毒そうな目を僕に向けてきたよ。
はぁ。そうだよ。王様公認の僕は、取り込んだらとってもおいしい、後ろ盾のない子供として、お貴族様達に狙われちゃったんだよ。
でも、お互い牽制してるし、あんまりご無体なことをすると、王様に怒られるから、今まで直接手を出すような人はいなかったんだけど・・・
うむ、とみんなのやりとりを黙ってみていた伯爵が、話が途切れたのを見て、大きく頷いた。みんなの注目が伯爵に集まる。
「先日のミサリタノボア子爵襲撃事件だが、実際に狙われたのは、そこのアレクサンダー、君たちの言うダー君だ。そして、その襲撃した魔導師の護衛だが、同じ鎧を来た兵士が宵の明星によって目撃されている。また、森の中からは弓兵の遺体も複数、発見された。これらの武器防具から、ある子爵の名が上がっている。」
ある子爵だって?僕が言うのもなんだけど、身分が低すぎない?まぁ、ミサリタノボア子爵も僕を狙ってるから、ありっちゃありなんだけど・・・
「ザワランド子爵。ミモザの代官だ。」
伯爵は、続けて言った。
ミモザ?海の隠れ家の?
僕は、何度か訪れたことのあるその地域のことを思ったよ。
確か、ミモザの代官って、暴れ者だけど、強いから海の魔物に相対するのに仕方なく任命してたんだっけ?
「そして、このペンダントにあるガーネオだが、おそらくお前達が遭遇した魔導師がそうだろう。彼はトフシュク領の魔導師リヴァルドの愛弟子だ。」
伯爵の言葉に、僕以外は想像がついていたようではあったけど、苦い顔をせずにはいられなかったみたい。
どういうことかは、後でメンバーに聞いた方が良さそうだね。
ともあれ、さらなる情報の共有と今後の方針は、後日に持ち越しとなった。
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