第25話 伯爵様のところへ行こう
そうこうしてる内に、お昼の便がやってきたよ。
あれ?また引率はダヤだ。なんで?
「帰りならダーさんとお話しできると思って、今日は全部僕にして貰ったんだ。」
そうなんだ。ねぇ、こんなこと言ってくれてるんだし、もう、馬車の中なんだから下ろして貰っても良いよね。と思ったけど、セイ兄は許してくれそうにないや。
「そのままでいいよ。ダーさん、抱っこされてても違和感ないし。」
それはそれで悔しいです。
その後は特に何かが起こるわけではなく、一緒になった冒険者に遊ばれつつ、ダヤともいっぱいお話しして、無事トレネーに帰ってきたよ。
馬車は門の外で降りて、そのままギルドへ直行。
到着すると、ママとギルドマスターが待っていたよ。
僕は、よく知っている人なら、かなりの距離離れていても念話で話しかけられるんたけど、特にママになら、かなりの遠距離でもOKなんだ。と言っても、細かくお話しできるわけじゃなくて、感情を送れるぐらいなんだけど、そこはママのすごいところで、内容は「なんとなくわかる」らしい。
どうかな、って思ったけど、ママに、「帰る。証拠発見。」という気持ちを伝えていたら、こうやってギルドで待っててくれたみたいです。
「なんかお昼便でだいじなもの持って帰ってきそう、ってゴーダンに言ったら、関係者とギルドマスターを連れて、伯爵の所へ連れてきてって言われたの。」
だって。
どうやら、たまたま伯爵邸で、ご飯を食べてた時にキャッチしたみたいで、ゴーダンだけじゃなく伯爵も直接話を聞きたいから、みんな連れてくるように、ってなったらしい。
「いや、なんで、お前の母ちゃんが伯爵様と飯、食ってんだよ!」
って、アルが僕に怒鳴ったけど、そんなの本人が前にいるのに聞けばいいじゃん?僕、知ってるよ。アルはママが初恋の人なんだよね。恥ずかしくって顔も見れない、うぶな男の子です。
伯爵とご飯食べてたのは、ナッタジ商会の支店開設がらみだろうけど、きっとまだオフレコだろうから、内緒です。
僕らが、こそこそ(?)話していると、取り急ぎ、宵の明星全員と、各パーティリーダーのバンジーさん、マリンさん、それにギルドマスターが、伯爵の所に出頭することになったよ。ギルドが持ってる近距離用の小さめ馬車に乗って、僕らは伯爵邸へ。
人目のなくなった馬車の中で、ヨシュ兄がさっきの成果を出してくれたよ。
手先の超器用なヨシュ兄と、魔力操作がとっても上手なミラ姉の手にかかれば、ほんとすごいね。言い出しっぺの僕ですら想像以上のしっかりとした固い型どりができてた。ヨシュ兄いわく、粘土っぽい土があったので、それを自分の土魔法で練り上げて、ペンダントに貼ってみた、だって。細かい傷まで完璧に写し取ってるよ。本来なら乾燥にも時間かかるだろうけど、ミラ姉が均等に上手に乾かしたからあっという間に出来たんだって。精巧な型が、しかも5つも!僕がやらなくて本当に良かったって思ったよ。
事情を知っているバンジーさん、マリンさんは、ヨシュ兄の作った型を見て、あんぐり口を開けていたよ。あの場でなんとなくやろうとしたことは理解してたみたいだけど、いざ現物を目の前に、僕らに脱帽した、らしい。いや、僕はアイデアを出しただけなんだけどね。すごいのはここまでの形にした2人です。
二人には、作った型を1つずつプレゼント。
あ、そうだ!
僕はなにやらうらやましそうに型を見ているセイ兄に、あれを焼ける?って聞いてみた。焼くとちょっと小さくなるけど、固くて壊れなくなるハズなんだ。僕も火を使えるけど、この小さい物にうまく合わせられるかな?て自信あんまりないし。
温度は結構高くていいはずなんだ。確か800度ぐらいだったよね、僕のうっすら記憶が、そう言ってるよ。ただし、こっちの世界で800度と言っても分かんないよねぇ。鉄が完全に熔けるちょっと前?鉄って、確か1000度より高かったはず・・・
「いや、そんな火出したら、馬車が燃えちゃうだろ。」
そりゃそうだ。
そこは帰ってからお試ししようね。
そう言ったら、一人制作から省かれて残念そうだったセイ兄の顔がパッと輝いたよ。まったく、お子様なんだから。
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