第22話 現地調査(中)
「それも込みで、ここら一体にソナーの魔法使っても良いかな?」
僕は、本当の本題であるそのことを、みんなに言ったよ。
「ソナー魔法ですか?」
ヨシュ兄が、首を傾げる。
僕が今、勝手に名付けたこの魔法。
以前、ダンシュタの町を僕の魔力で覆って、その中の特定の魔力をマーキングすることで、GPSみたいに探索したことがあるんだ。それの応用。
この僕の魔力に満たされた所はどうやら、僕の感知能力を底上げしているみたい。だから、この魔力を薄く広く広げると、かなりの範囲の把握ができそうな気がするんだ。もし、まだ見つけていない、人の目に触れにくいものだとしても、木の息づかいですら分かるこの魔力溜りの中ならきっと把握できるよ。
僕は、みんなにそのことを伝えると、3人は顔を見合わせて、作戦会議を始めた。
結論として、今、僕は、この前僕がいたその場所に座ったミラ姉の膝の上で、ゆっくりと自分の魔力を広げていっている。
思った通り、この辺りに散らばっているであろう、魔石のかけらに込められた魔力が、僕の思うとおりに吸い寄せられ、拡散していく。僕の体から離れても、魔力自体は操れるんだね、新しい発見だよ。
僕は、魔力と共に意識を森にも広げていく。
いっしょに来た冒険者たちが、ある人は真面目に草や木を押しのけて、何かを探しているし、別のある人は、そんなこと関係なく、小さな魔物の狩りをしている。
敏感な魔物達が、僕の気配に逃げていったり、逆に好奇心旺盛に覗きに来たり。
僕とは違う、強烈な魔力の残滓もいくつか、見つかった。
なんとなく記憶にある、まるで爪で黒板をひっかく音を幻聴してしまうような魔力の残滓。
僕は気が滅入りながらも、それを追ってみた。
大きな塊は、6つ。
うち、4つは、多くの小さな魔力を強引にまとめたみたいな、いびつさが感じられて。
うち、1つは、あの魔導師が立っていた辺りかな。僕の魔力に隠れて、異物感が半端ない。
そして、うち1つは、なんだろう、異臭がする、としか言えないよ。嗅覚なんて、その場にないのに、なぜか暴力的な異臭が僕を襲った。
「ダー!」
と、浮遊感が僕を襲う。
どうやら、プチトリップしてた僕の様子がおかしいのに、待機していたセイ兄が気づいて、ミラ姉の膝から抱き上げてくれたみたい。
はじめから、一番魔力の強いミラ姉が、僕が魔力の行使中、ずっと、僕をモニタリングしてもらっておいて、やばくなったら、セイ兄が僕を抱き上げ、リンクを強制解除する作戦。ヨシュ兄は、その間、周囲の警戒に当たってくれていたんだけど、これは強制解除して貰って、助かったかもしれない。だって、あのねっとりとした腐臭の先に、なにか、こちらへと視線が向けられたような気がしたから。
僕は、僕の感じ、見た、それらの光景をみんなに報告したよ。
「その4つの塊ですが、おそらくは、被害魔導師のいた場所ですね。」
僕がおおざっぱな位置を言いながら告げた内容に、ヨシュ兄が、そんな風に結論づけたよ。
「まずは、ここに行ってみますか。」
ヨシュ兄は、簡単な地図を地面に書いて、僕の言った魔力を強引に集めたみたいな場所、の1つを指さして言う。
「ああ。後の3つはもう探索済みのところだよな。」
「ええ。魔導師の死体があった場所ですね。」
セイ兄とミラ姉も、ヨシュ兄に同意する。
どうやら、最後の1つは、まだ探索されていない場所のようで、一番街道から離れている場所にある。しかし、あの最後の1つ、異臭のした場所には一番近い、とも言える。近いと言っても、かなり離れてはいるんだけど・・・あそこにはあんまり近寄りたくないなぁ、と、みんなの話を聞きつつ、思ったんだ。
そして、到着したのは、魔導師が死んでいたと思われる4つめの場所。
他の3つの内、1つはセイ兄たちが最初に見つけていたし、別の1つをすぐにやってきた兵士さんたちが周辺調査のときに見つけていたみたい。もう1つも、調査依頼を受けた冒険者パーティに発見されていて、今回4つめを僕らが見つけたんだ。
見つけた、と言っても、ここに魔導師たちの死体はなかった。
前に冒険者パーティが見つけたときも、食い散らかされた骨が散らばっていただけだったらしいけど、今、僕らが見つけたのは、骨すらなかったよ。ただ、あちらこちらに、服や靴の残骸が散らばっている。きっと、魔物にやられたんだろうね。
僕は相変わらず、ミラ姉に抱かれて、さっきよりも小規模にソナーを使っていたんだけど、僕を抱いたミラ姉を含めて、他の二人も、色々と周辺を探索していた。
そんな中、僕らを呼んだのは、さすがの、ヨシュ兄だった。
ヨシュ兄が、見つけたのは、小さなネックレスだった。おそらく、中央には魔石が埋め込まれれていたんだろうけど、そこに魔石はなく、台座だけになっている。
ヨシュ兄が気づいたのは、その台座に刻まれたもの。
それは、『吸収』を現す魔法陣。そして、それを覆うように『溶解』を現す魔法陣。このぐらいなら、僕でも読める。とっても簡易な、だからこそ強力な魔法陣だ。魔力を強引に魔石に吸収し、キャパ越えしたらペンダントごと溶解する、そういう魔法陣なんだろう。だけど、たまたま残ったその1つには、そんな魔法陣などあることも知らなかったのかもしれない、その持ち主らしき人が裏に刻んだのだろう文字が、『溶解』の魔法陣にかかっていたために、消失をまぬがれたみたい。
そこには、『愛しのガーネオ様より賜る』と記されていたんだ。
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