第4話 文明
「じゃあ俺らまだ仕事あるから、適当にここで休んでてくれ」
「いいのか? 部外者だけにしておいて」
「まーいいだろ、異世界人サマだし。でも明らかに破壊工作とかしたら流石に咎めるからそこは気をつけてくれ」
「りょうかい。二人とも頑張って」
「昼は突っ立ってるだけだけどな」
二人を見送り俺は一人取り残された。正確な時間の経過はわからないが、ここまでの体感では元いた世界と時間の経ち方はあまり変わらないように思う。とすると、夕暮れまでは大体三時間といったところか。
『ぅあああぁぁぅ』
三時間ただぼーっとしてるのはちょっときつい。部屋の観察でもしてるか。
部屋の中を歩き回る。どうやらこの建物は部屋が二つあるようだ。ここと、もう一つは仮眠室になっていて、二段になった木製のベッドが二組あるだけの部屋だ。仮眠室があるということは朝も夜も見張りの仕事があるのだろう。大変だ。
『あぁあぁああぁあぅ』
そしてここの部屋は休憩部屋だな。キッチンがあったり、作業台があったり、食料棚があったりと十分人が住める環境だ。ちなみに建物の隣にはトイレもある。さっき使わせてもらったが、なんと水洗だった。
『あー』
そう。この世界、もしくはこの国、上下水道の仕組みができているのだ。あの二人に聞いたところ、魔法がそれを可能としているらしい。どう可能としているか聞いたが、二人はよくわからないと言った。まあ、俺だって元の世界の上下水道について聞かれても答えられないから、そんなもんだろう。
『あ』
「なあ、さっきからうるさいんだけど」
なぜか呻いてやがる。俺は人の呻き声が嫌いなんだ。
『レベルアップのサウンドよ。レアバージョンが聞けて良かったわね』
「どうせ暇なだけだろ」
あらかた部屋を見終わったが、まだ気にはなるものがある。あの通話機だ。実際に使ってみたい。
「触ってみるか」
電話機みたいなものだし、爆発したりはしないだろう。外の二人に悪いと思いつつ、受話器を手に取った。
耳に当てる。無音だ。電話機だったらプー、と鳴るが、壊れてるのかってくらい変化がない。
少し考え込むと思い出した。あの時、あの兵士は何番へ、とか言っていた。あれが発信先の指定だったんだろう。ならば発信先は、
「スマホへ」
ポケットに入れていたスマホを手に取り、ダメ元でそれを指定した。するとスマホは振動と共に陽気な音楽を鳴らし出す。
「ま、まじか⋯⋯」
少しビビりつつ画面を見ると、非通知と表示されていた。応答し声を出してみると受話器からしっかり俺の声が聞こえる。聞く、話すを逆にしてみても同じ結果になった。
「無線もいけるのか」
通話機の後ろ側にはコードが伸びている。おそらくこれの先に電話線みたいなものかがあって有線での通話を可能としているのだろう。無線も魔法が電波の代わりとして使われてると予想できる。
「文明が進んでるってことだよな」
素直に凄いと思った。⋯⋯それはそれとして、なんでスマホで通話できたのか。考えたところでわからないので保留にしておこう。
「ふう」
一息吐き、さっきまで座っていたイスに座る。
『暇よ、何か面白い話しを話しなさい』
「我慢しなさい」
『今何レベになったのよ』
「今開く。⋯⋯一万三千とちょっとだな」
一万三千二百八。数字にすると13208。とくに意味はない。
『あっそ。ひまー、なんかないの? あんたがいた世界の話しとか』
「あー? じゃあうろ覚えだけど小説の話しでもしてやろうか?」
『ん、いいじゃない』
「つまらなくなったら言えよ、朗読だって疲れるから。⋯⋯じゃあ、ごほん。あ、文章は適当に言うから。メロスは激怒した————」
それ以降は大まかな流れしか知らないのでうろ覚えで話した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます