第2話 森を抜けて
差し当たっての問題は衣食住の確保だ。文明が発達しているならその為に金が要るだろうし、金を得る為の職も必要になってくるだろう。そうなってくると身分証明できないとまずいかもしれない。そのことをサリーに聞いてみると、何も教えてくれなかった。自分で見て知りなさい、と突っぱねられた。その代わりと言ったらなんだが、解析で見れるステータスの項目とかシステムについては割と丁寧に教えてくれた。もうこいつのことは、ちょっと話せるカーナビみたいなものだと思った方がいいだろう。
『レベル上がったわよ』
現在8000ジャスト。キリのいい数字だ。またすぐ変わるけど。
ステータスはこの数字には伴ってない。でも全く上がってないわけじゃない。若干ステータスは増えてる。多分ここまで歩いてきた分だろう。こうして成果が見えるというのは良いかもしれない。
「お」
サリーと話すこともなくなり、これからのことを考えながら歩いていると、目の前に広い景色が広がった。
「正解だったな」
広がる大地の中央に人工物がある。見た感じ街だ。
最初に森の中に続く川を見つけた時は迷ったが、森に入るのを厭わず川伝いに歩く選択は間違ってなかった。
「これで野垂れ死にはなくなったはず。にしても広いな。名前とかあんのかな」
『そういうのがわかるスキルとかあるわよ』
「スキルかー、やっぱあるよな。てか、アドバイスくれるんだ」
『まあたまにはね。別に意地悪してるわけじゃないのよ。何事も身をもって体験する前にわかってたらつまんないでしょ?』
「いや、街の方向を教えてくれなかったのが原因で、最悪死んでたんだが」
『そこはほら、あんたが死ねば私はこの仕事から解放されるから。win-winってヤツ?』
「俺の勝ち要素あるか?」
とはいえつまらないって理屈はわかる。
『ホントのこと言うと、そういう決まりがあるのよ』
「まあいいや。ちょっとスキルって単語でテンション上がったし。どのくらいスキルってあるの? 漠然とした数でいいからさ」
『そうね。何かを教えるってのじゃなく、ただの世間話しとしてならいいかもね。そりゃあたくさんあるわよ。ピンからキリまでね』
「ヒヨコのオスメスを判定するスキルとか?」
『何よそれ』
「ツボの良し悪しを判定するスキルは?」
『知らないわよ。というか絶対ないわ、そんなの』
「へえ、この世界にはないんだ。遅れてるな」
『は? じゃああんたがいた世界にはあったわけ? そんな意味不明なスキル』
「スキルじゃないけどな。ヒヨコ掴んでオス、メス。ツボ指差して百万、一万。みたいな? そういう職業があるんだよ」
『凄いわね。そんなムダな仕事があるなんて』
「レベルアップの読み上げも大概だけどな。あ、仕事じゃなく罰だっけ?」
『さてね』
実際のところはどっちもムダな仕事ではないだろう。鑑定士というのはそんなものだ。
「なにやらかしたんだよ。人間の尺度で計るのもなんだけど、ひとの人生分の罰って大分重いんじゃないか」
『別に大したことじゃないわ。かるーい犯罪を何⋯⋯個か犯しただけよ』
「割と大事なとこで間があったけど? まあ深くは聞かないけどな。理解できるかもわからないし」
気にはなるが、そろそろ街だ。
近づくとよくわかる。かなりデカイ。外周を取り囲むようにしてある堀だか池は魔物を除ける為ものだろうか。魔物いるかわからないけど。その水路に掛かった橋には二人の門番が武器を持って立っている。よもや入れてくれない、とかも有り得るか。
「行くか」
既に目は合っている。彼らはまじまじと俺を見ていた。
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