第12,4話孤児院⑮

 みくは今自分の下駄箱に靴を入れて、俺の方向を向いた瞬間目の前に相撲部のメンバーが目の前を横切った。

 何故だか強制的に腕を掴まれ持ち上げられたので、避ける事も出来ずにそのまま相撲部に巻き込まれて学校より遥か遠くに押し出された。

 急いで下駄箱に戻っても、みくの姿はもうなく校舎には1人もいなくなっていた。

 何で数少ない相撲部がここの高校にあるんだよ。


 次の日になり今日こそはと気合いを入れて望んだが、今度は野球部のメンバーに巻き込まれて、校舎からどんどん離れてしまった。

 またかよ。

 しかも今度は野球部。


 そんな日が連日続き、みくに姿をあかすのは諦めた。

 これは神の思し召しだろう。

 だって何やっても必ず邪魔が入るんだもん。


 久しぶりに、本当に久しぶりに孤児院施設『ヒマワリ』に戻ったら『もも』と言う一人の小さな女の子が質問してきた。

「どこ行ってたのパパ?」

 たけるとはかなり仲が良く結婚すると言っていたほどだ。

 おいおいみくはママで俺はパパか。

 どうやら俺もここに随分と馴染んじゃったようだな。

 まだ俺の事を覚えてくれてる何て嬉しいよ。

「別にどこも行ってないよ。それにしても人数がだいぶ減ったけどみんなは?」

 確認出来るのは目の前にいる、ももちゃんと食事の準備をしている中学生の斎藤塚間さいとうつかまだけだ。

「たけるやママの評価が高くてみんな里親を見つけて出て言ったよ」

 たけるはどうか知らんがみくも評価がいいのかが怪しいぞ。

 だってメイド喫茶で働いているほどだぞ。

「それとこのヒマワリももうすぐ取り壊すんだって」

「え、どうして?」

「ももちゃんもそこにいるつかま君も近いうちに里親に引き取られるからだよ」

 自分の事をももちゃんと言うとはこの子はどうやらお嬢様気質があるらしい。

 突然寂しさが体を襲った。

 俺にとっては第二の家………いやむしろこちらが本当の家だと言っても過言ではない。

「ご飯できたよ」

 斎藤が俺の思考を無視して唐突にお盆を両手で持ちその上に料理が置いてあった。

「ご飯ご飯」

 とももは言って自分の席に座り、俺も後に続くように空いている席に座った。 

「パパ早く食べないと冷めちゃうよ」

 ももは自分のお茶碗を持ち、中に入っているご飯を高速ですでに食べていた。

「…お……おうそうだな」

 俺は目の前にあるお茶碗に入っているご飯を箸で掴み口に入れたら閃いた。

 前にも思ったが嫌われ者は嫌われる方法でお別れしないとな。


 みく、たける、この『ヒマワリ』から卒業した全ての人に一通の手紙をだした。


 内容はこうだ。

『ヒマワリを卒業した人は明日ヒマワリに集まって下さい。もしもこれない場合は神が……神よりちょっと上位な儂が怒りの鉄拳を与えちゃうぞ』

 

 

 誰も来ねー。

「パパ屋根の上に登ってどうしたの?」

 ももが下から俺を見上げていた。

 ももの言葉を無視して俺は遠くを見つめていた。

 あれか。

 あの最後の一文がふざけすぎていたか。

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