第12、3話孤児院⑭

 みくととある二人組の生徒は当たり前のように会釈をして指定された座席へと座ったので、俺も見える所に座った。

 おいおい指摘ないのかよ。

 早くみくを咎めてあいつの人生をめちゃくちゃにしてくれよ。

 まさかと思いこっそりと、二人組の脱いだ制服の中から生徒手帳を取り出し、学校における規則事項を確認すると『やむを得ない場合はバイトを許す』と一文が書いてあった。                                                     

 くそー浅はかだったぜ。

 どうりでこんなにも自然の接客をしていると思ったぜ。

 しかもあいつらスペシャルメイドパフェ頼んでやがる。

 みくの「ニャンニャンニャンニャン」と言っている近くで、この後どうするか考えたがいっこうにいい案が思い付かない。

 前みたいなチャチなやり方をしていても、埒があかないしさてとどうするか。


「あのーさっきから何をしてるんですか?」

 みくと一緒にいた友達がメイド姿で怪しそうに、俺に話しかけてきた。

 みくがいるって事はいつも一緒にいる友達もいるって事だ。

 忘れてたぜ。

 さっきから何も頼まずに、ただ座っているだけなので怪しまれてもしょうがないか。

 やべーどうしよう。

 きょろきょろと店内を見回し、アルバイト募集のチラシが目に留まった。

「アルバイトしたいと思ってるんだけど」

「あ、すいません。男性の方はお断りしているんですけど」

「すいません」

 そりゃあーそうだよな。

「何か注文しますか?」

 財布の中身を確認すると昨日食べたスペシャルメイドパフェがひびいてか、スッカラカンになっていた。

「すいません間違えてメイド喫茶に入っちゃっただけです」

 自分で言ってあれだけど、何の間違いだ。

 普通この店に入ると決めているから、絶対に間違いないと思うんだが。

「そうだったんですね」

 バカだ。

 この子ちょっと頭足りない人だわ。

 その後ご丁寧に出口に導かれた。


 昨日寝ずに考えたがもう何も思い付かないので、単純にみくの鞄をひったくるというアホみたいな考えを思い付いたがこれをやってしまうと自分の人生が終わってしまうので当然無しだ。

 もうこれしかないな。

 単純でありみくの人生に驚きを与える方法。


 夕方みくの学校の校門の前に俺は変装をとり、自分の姿を晒していた。

 もうこれしかない。

『みくが紙に書いた大好きだった』という一文。

 これを根本的に否定するしかない。

 つまりみくがこの校門を通る時お前の地獄が訪れるのだ。


 少し経つとまばらだがぼちぼち下校する生徒が見えてきた。

 いつも人から取られている距離よりも、少し多めに距離を取られている気がする。

 気ではなく間違いなく不審者と間違われているだろう。

 校門の前で仁王立ちで腕を組んでいる男の姿をみたら。


 さらに待つこと数分下駄箱についに待っていた女性みくの姿を確認した。

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