第27話高嶺の花⑮

「こんな遅い時間に何してるの?」

「夜空」

 庄内の言葉と同時に上を見上げたが、ただ星が無数に光ってただけだった。

「願い事をしにきたんです?」

「願い事ね。ただ流れ星はでてないみたいだけど」

「私の中だと流れ星がでてなくても、星に願いをのせれば叶うと信じてるんです」

「ふーん。それで何のお願いを?」

「好きな人にもう一度会えます様にって」

「今、部屋行けば会えると思うけど」

「私が会いた人は別の人ですよ」

 庄内のその時の表情は今までみた中で、1番寂しかった。


「さてと今日はみんなで本場のSドナルドに行くぞ」

 朝起きてからやたら俊介のテンションが高い。

 昨日の庄内が彼氏と認めてるが効いたかな。


Sドナルドに着くなり入口が溢れて行列が出来ていた。

「さすが本場、こんなにも朝から行列できるんだ」

「いや、俺がいつも行く時は行列は出来てないから、何か撮影でもやってるんじゃないのか」

 人の合間を縫って中に入ると確かに撮影が行われていた。


「カット違うんだよ違うんだよ。俺が求めてるのはそこじゃないんだよ」

 日本人の監督が、俳優さんや女優さんに檄を飛ばしていた。

 俊介、庄内も遅れて俺の方にきて、撮影を覗いていた。

「人手が足りないんだよな人手が」

 監督がぼやきながらお客さんの所をみていたら、俺を指差した。

「俺ですか?」

「違う違う。後ろにいる女性だよ」

「私ですか?」

「いいからちょっときたまえ」

 庄内は言われるがまま監督の所に近付くと「女優の代役をお願い出来ないか?」 と言われていた。

「美咲なら出来る。頑張れ」

 俊介の言葉を聞くとやる決心を固めたみたいだった。


『嫌われ者』

 映画のタイトルがこれとは。

 主演はどう考えても俺だろ。

 まさに映画ではなくて、現在進行形で活動してるんだから。

「カット。ダメだダメだ。主演が弱い弱すぎる」

 監督は再び俺の所を指差した。

「俺ですか?」

「違う違う。後ろにいる人だよ」

 監督は後ろにいる俊介の方へ指を差していた。

 俊介はもちろん映画に出演する事を了承していた。


「あーなぜあなたは私のもとからいなくなってしまうのですか?」

 熱の入った庄内の演技に、みな注目をしていた。

「それは僕が嫌われているから。だから君の為に離れるんだ」

 素人の目からみても、俊介も中々の迫真の演技、美男美女だから画になる。

「カット弱いんだよ弱いんだよ。ヒロインはいい、だが主演の目が輝き過ぎている。本当の嫌われている目はあんなに輝かない。むしろ灰色っぽく濁っている」


 三回目の監督による指名で、遂に俺に白羽の矢が立った。

 嬉しいけど、それって目が死んでるって事じゃん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る