第22話高嶺の花⑩

 発言を出来る者ではなくて、この前の殺すなら俺を 『殺してくれねぇーか』 でやばい奴だと思われているんだと思う。


「それでは各々ペアになってる人と行動して下さい」

 学校の近くにある大きな動物園に来ていて、先生の言葉で俺は松本と行動した。 


「ここが有名なサルパークか」

 サルのコーナーに来ると、相方の毛繕いや、エサの取り合いなど様々なサル模様が閲覧出来る様になっている。

 俺はちょっとだけテンションが上がっていた。

 何故ならサルが好きだから。

 松本をチラッと見ると目線の先には一匹のサルが複数のサルに奪い合いをされてる姿をみていた。

「何かあれ、松本さんに似てるね?」 

「そうですかね」

 松本は俺と2人の時は普通に喋る様にしていた。

「あーやって誰かからも好かれる。俺からしてみれば本当に羨ましいよ。それで嫌われたのかは分からないけど、教えた事実践してみてどう?」

「はい。正直心が痛くなる時があります」

 松本がみていたサルの一匹が、複数のサルの一匹と岩の陰に隠れた。

 松本の目線がこちらに向けられ、ほぼ同時に俺も松本に目線を戻したから、目線が重なった。

「私ももう楽になってもいいかなって」

「楽になるって……おいどういう意味だそれ?」

 まさかこの前の事があったから死にたいって事じゃないだろうな。

 俺の目線は険しくなり松本をみていた。

「勘違いしてますよ」

「え?」

「私の楽になりたいっていうのはこういう事です」

 松本が俺の頬にキスをしようとしてきたが寸前の所で止まっていた。

 真横には松本の顔が、心臓の鼓動が早くなるのが自分でも分かる。

「いいですか?」

 いいですかって何がいいんだろうか。

 多分キスしてもいいんですかって意味だろう。

 もちろん断る理由はない。

 ないけど何か違うんだよな。

「今日は止めとくよ」

 言っちまった。

 正直こんないい女、絶対この先現れないぞ。

 やっちまった。

「前の約束の保留の件、今いいますね」

 前って何かあった………あー前にフルコンボされた時のあれか。

「私を一生守って下さい」

 松本は俺から数センチ距離を取り、背筋をピンとさせ上目遣いでこちらを見てきた。

 何この子。

 好かれる子から嫌われる子から男の心を鷲摑みする子へとジョブチェンジしたの。

 絶対そうだよね。

 そうとしか思えないもんね。

 男として答えは一つ。

「約束だからな」

「はっきり答えて下さい」

「あなたを一生まも「いたいた松本さんこんな男と一緒にいちゃいけません。離れて下さい」

 松本は自分の所に群がっているメンバーの数人に強制的にどこかに連行されていった。

 結局俺が嫌われ道を教えた意味が全くなかったのだが。

 根っからの好かれる体質ということなのだろう。

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