第17話高嶺の花⑤
「あんた名前は?」
「吉良です。吉良悟です」
何だこいつの上から目線の態度は。
これじゃあ翼が嫌がるのも無理ないぞ。
まぁギャルだから人の心の中をあつぞこブーツでずかずか入るのもしょうがないか。
同じクラスだが翼って奴がモテるって事以外ほとんど知らんがな。
しかも席替えもさせられて、俺とこのギャルは一番後ろの窓際の席になった。
「名前は何て言うの?」
同じクラスで一年間は勉強してきた中だと言うのに、初めましての自己紹介から入るのだから笑える。
この前、翼と俺を交換する時に引き合いに出された時、俺の名前認知してたのにもう忘れてやがる。
「
ギャルなのに男みてーな名前じゃねーか。
「よろしく」
手を差し伸べたが、自分の机をガラガラと動かし、俺から距離をとった。
もういつもこんな感じで嫌になるわ。
授業が全て終わると、俺は田中の家に行く事になっていた。
教室をでるまえにチラッと松本を見ると、朝の光景と同じく男子生徒が群れていた。
結局誰となっても松本はいつもあれじゃん。
「早く行くわよ」
「はいはい」
「凄ーな。ここがお前の家?」
日本にもあるんだな、こんな大きな家が。
例えると東京ドーム半分位の大きさだ。
「まぁー普通よ。それと馴れ馴れしく喋んないでくれる」
「す···すいません」
何でか知らないが、俺と田中の上下関係は成立してしまっていた。
家の中に入ると西洋風の作りになっていて、日本じゃなく外国にいる気分になった。
大広間に案内されると長テーブルに料理が運ばれていて田中達の家族とご飯をとることになった。
「今度の彼氏はこの人か?」
「やめてよパパ」
田中のお父さんの言葉に笑顔で返していたが、目は俺を睨んでいた。
こいつは根本的に俺の所が嫌いだと、今確信した。
「明日は日曜日なのでみんなで出掛けましょう」
何故だか知らないがお母さんの言葉で田中の睨みがとけた。
「俺もいいんですか?」
「ええもちろん」
優しく笑顔で頷いてくれた田中(母)とは違い田中は無言のまま、また俺の所を睨んでいた。
だから何だよ。
睨むんじゃなくてしっかりと喋ろよ。
「さてと今日はみんなでファッションショーを観に行くわよ」
俺達四人は田中家の玄関の前で集まっていた。
まだ朝の六時だというのに田中のお母さんだけ妙にテンションが高く張り切りっていた。
「ママこんなに早く行かなくても大丈夫だよ」
「ダメよ。一番最前列でみないと、意味がないのよ」
「田中のお母さんっていつもあんな感じなの」
田中の近くでボソッと喋ったら、ただただ睨まれた。
俺そこまで何かした。
見覚えないんだけど。
俺達はファッションショーの会場が開かれたと同時に走って最前列を確保した。
まさに年末の福袋を狙って走る主婦たちの様に。
俺達の他にも見覚えのある顔が見えた。
あれはクラスメイトの男達。
あーそうかファッションショーと言えばモデルさんが出るから必然的に松本もでるんだな。
ファッションショーが始まるとモデルさん達が続々とこれから流行る洋服を着て、ランウェイを堂々と歩いている。
松本が登場すると改めて凄い人で、生きてる世界が違うんだと実感した。
最前列まで松本が歩いて立ち止まると、嫌われ者だけが持つ特技、嫌われセンサーが反応した。
ものすごい殺気で誰かがこちらをみていたが、松本が振り返り来た道を戻ると殺気が消えた。
その後に出て来た庄内も俺に気付き軽く会釈をした様に見えた。
やっぱりこの子いい子だよ。
一通り終わるとチラホラとお客さんが帰っていく人もいれば、まだ余韻に浸っている人もいた。
俺達も見たいものはだいたいみたので、どこかのお店で夕飯を食べて帰る事にした。
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