第15話高嶺の花③

 続いて向かったのは叩いてドンという音楽ゲームだ。

 リズムに合わせ持っているバチで太鼓を叩いて点を競い合うゲームになっている。

「松本さん賭けをしないかい?」

「か···賭けですか?」

「うん。勝った方が何でも一つ願いを叶えられるって言うのはどうだろう」

「いいですよ」

 バカなやつめ。

 俺の特技である音ゲーに乗ってくるとはな。

 嫌われ者は一人の時間が長くなる。

 となればゲームセンターに足を運ぶ。

 そうなれば必然的にゲームが上手くなる。

 だがこの弱点は一人で太鼓の達人をやらなければならないのでめちゃくちゃ目立つという事だ。

 めちゃくちゃ恥ずかしかったなあれ。

 みんなと戯れないからこそ、いろいろな事に集中して追求できるのだ。 

「さてといくぜ」

 お互い太鼓のバチを持ち、決戦の火蓋が切られた。


「つ…つよい」

 負けた完敗だ。

 世間知らずだと思って甘くみていたがフルコンボを叩きだされボコボコにされた。

「私、昔太鼓をちょっとだけかじった事あるので」

 普通の家庭では太鼓何てかじんないけどね。

「勝者の松本さん。何か願い事ある?」

 松本は首を傾げながら少し考えていた。

 あ、その姿も可愛い。

「保留にしときます」

「今でお願いしますよ」

 こういう嫌な事はとっと終わらせたいんだよ。

「勝者は私何で好きにさせて頂きます。それよりもあれ何ですか?」

 松本が指を差したのはリア充が良く使うプリクラだった。

「あれはプリクラだよ」

「何ですかプリクラって?」

 まぁ説明するとリアルに充実している人が使う所だね。


 説明がうまく出来なかったので、まずは使ってみようと思い、初めて俺もリア充御用達のプリクラ機の中に足を踏み入れた。

 まずは好きなポーズを決めなければならない。

 機械の音声が手順を説明してくれていた。

 俺はどうしていいか分からず無表情のままだが、真横にいる松本もどうしていいか分からず無表情でいた。

 カップルなら顔を引っ付けたり、カップルらしいポーズをとるのだろうが、お互いにそんな余裕はなくパシャリとシャッター音がした。

 プリクラの機械から写真がでたが、証明写真を撮っているかの無表情だ。

「これがプリクラですか?」

 その疑問に満ちている表情も可愛いな。

「本来ならもっと正しい形で撮るかも知れないけどこんなもんだね」

 自分で言ったがこんなもんで正しい。

 だって人を楽しませる方法何て分からないんだもん。

 プリクラを半分切って松本に渡し、俺達はゲームセンターをでた。


「次の会場はここです」

 俺が案内したのは英語でSと書かれた、皆が知っているフードチェーン店だ。

「ここなら私も何度か行った事あるので知っています」

 さすが全国展開してるだけあって認知度が高いな。

「そろそろ小腹も減ってきたし、ここで軽く食べましょう」

 

 サックの中に入ると店員さんがマニュアル通りの挨拶をして出向いてくれたのと、周りにいる男が俺達の所をチラチラと見ていた。

 やっぱりあんたの美貌は天下一品だよ。

 そんな事はどうでもいいと思いメニューを手に持った。

「さてと何にするかな。松本さんは何頼むか決まった?」

 松本は自分の目の前にあるメニューと格闘中だったので、俺が先に頼む事にした。

「サクドナルドのセットでお願いします」

「私もそれでお願いします」

 一緒かい。

 まぁいいけど。


 席に座ると、松本はエスドポテトをこちらに渡してきた。

「あれ、食べないの?」

「一応仕事上食事には気を遣ってるんです」

 松本は自分のお腹を手で抑えながら喋ってきた。

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