第13話高嶺の花

 「私は皆がまたこうして全員揃ってくれて嬉しいです」

 先生は教壇の前で俺に目線を合わせて言った。

 よく退学にならなかったと驚く位学校に来ていなかったが、何故か退学にはならなかった。

「それで突然何ですが今日からうちのクラスに転校生が来ますので、皆さん仲良くして下さいね」

 皆 「はい」 といい頷いた。

 俺以外は。

「ちなみに先生転校生は男性ですか女性ですか?」

 クラスメイトが俺の席の後ろの方で質問した。

「女性です」

 それを聞いた瞬間男は盛り上がり、女は少しテンションが落ちていた。

「それでは入って」

 何、今廊下にいるのかよ。

 さっきの会話全部筒抜けだぞ。

 変な事言ってなくて良かったけど。

 いやただ俺に発権限がない方が正確だな。


 ガラガラと女性がドアを開け入ってくると、ほんの数秒だが男子生徒があまりにも綺麗な顔立ちにフリーズした。

 俺もたその中の一人だ。 

 堂々とゆっくりと一歩一歩進み教壇の上に立ち、俺達の正面を向いた。

 その瞬間さっきよりも長く男性生徒の時が止まった。

 どこかの二次元から飛び出した様な顔立ちにスタイルのよさ。

 この人に一目惚れしない人はいないだろう。

 この空間を動けるのは担任の飯沼と女子生徒だけだろう。

 担任が挨拶をしろて催促したら、転校生はクラス全体を見渡し言葉を発した。

「初めまして仕事の関係でこの学校に引っ越してきました『松本りほ』です」

 そう言い彼女は一礼をした。

 採点を付けるとしたら第一印象二重マル。性格=不明。声も低くもなく高くもなく俺個人的には最高だ。

 多分ビジュアルのおかげで、どんな挨拶をしても好かれるんだと、思うが。

「松本さんの席は悟君の横でお願いします」

 松本さんが顔をキョロキョロしていると、先生は俺の場所を手で差し示した。


 彼女が教壇を下り一歩ずつ俺に近付いてきた。

一歩近付く度に俺の鼓動は早くなっていた。

「あのー何で横の人との席が離れているんですか?」

 それは俺が嫌われて…いや違う俺が神だから。

「一人が好きだからみんな気を遣ってくれてるんだよ」

 嘘言っちまった。

 これで話しかける可能性ガクンと減ったよ。

 一番誰かと関わりたいのに。

 どうしてだろうか。

 興味のない女性にはちょっとした仕草や言動は気にならないが、興味のある女性にはほんの些細な事が気になってしまうのわ。

 授業中松本の顔を横目でみていると、やっぱり可愛い。

 可愛いすぎる。

 黒板に先生が書いた文字を自分のノートに書き写している仕草や、時折窓の外の景色をこちらに向けている姿が可愛い。

 やばい。

 完全に好きだわ。

 

 授業が終わり昼休みになると、松本の周りにはクラスの約九割が囲っていた。

 松本の事が気にならない素振りを見せていた一割の俺は机に突っ伏していたが、会話が気になり聞き耳を立てていた。 

「この雑誌に写ってるのって松本さん?」

「そうですよ。仕事がモデルでして」

 みてー。

 その写真超みてー。


 放課後になり横を見るとすでに松本さんはいなかった。

 いかんいかんこうしちゃおれん。

 俺も先生から職員室に備品を運ぶ用頼まれていたんだ。


「好きです。付き合って下さい」

 職員室から用事を済まして教室に向かう帰り道に、ちょうど誰もいなくなった教室で、うちのクラスメイトだと思われる人が松本に告白していた。

 初日で告白されるとはさすが誰もが認めるかわいこちゃん。

 もう一度言おう。

 初日だぞ。

「すいません。あなたの事まだ知らないので」

「何でだーーー」 といい男はどこかに走って行った。

 当然過ぎる結果だったが哀れに感じてしまった。

 

急に教室のドアが開くと覗き見していた俺の体は前につんのめった。

 いけねー。

 さっき反対側のドアから振られた男がでてきたのを集中し過ぎて松本に意識を向けてなかった。

「何してるんですか?」

 やばい。

 何て言おう。

 覗いてました。

 言えない言えない。

「き…教室に幽霊がいないか確認を…」

 とんでもない嘘言っちまったよ。

「あーそう言えばさっき一人が好きって言ってましたから、幽霊さんと友達になろうとしてたんですね」

 どういう解釈してんの。

 でもこの子いい子だよ。

 絶対いい子だよ。

「ま、そんな所だね」

「それじゃあ私はこれで」

 俺はその後、誰もいなくなった教室に二時間ポツンと座っていた。


「松本さんうちのクラスは特別でペアを作って寝食を共にして仲良くなろうって言うのを実行しています」

 先生は朝、教室に入ってくるなり松本に説明した。

「目的は将来、学校を卒業してもずっと仲良くいて欲しいから」 

「…あ、はい」

「それで松本さんにペアになってもらうのは吉「俺がなります」 「僕にならして下さい」 「僕と結婚して下さい」

 先生の言葉を遮り、クラスの男が血走った目を先生に向けていた。

 待てい。

 おかしいだろ。

 どう考えても俺が松本さんとペアだろう。

 今俺相手いなくて1人なんだから。

 しかもお前らのペアになっている人に失礼だろ。

「それじゃあクジにしましょう」

 何でー。

 先生もさっき俺の名前をいいかけてたよね。


 クラスの誰かが持ってきたクジの箱の中にしぶしぶ手を入れた。

 本当は俺がペアなんだけどな。

 神様お願いします。

 どうか当たりクジを。

 あ、俺が神様だったんだ。

 引いた紙を開くと丸印が書かれていた。

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