第12話孤児院⑪

 朝起きた瞬間に光の速さで身支度を済ませ、みくが通う学校(北信濃高校)に身体が動いていた。


 やべー朝早く来過ぎたから誰も人いないわ。いるのは学校の校門に雀が一、二羽のみ。

 雀と同じ時間に登校する羽目になるとわ。

「おはようございます」 

 雀を見ていたら声をかけられたので、その方向を確認するとスキンヘッドの強面の男が太陽よりも輝かしい笑顔で挨拶をしてきた。

「眩しい」

 笑顔以上にちょうど太陽の直射日光が頭に反射していたので思わず口に出してしまった。

 その事については何も言わずに強面の男は俺の横を横切って行った。

 神様みたいな人だな本当に。

 それから刑事並みに張り込んでいたらみくが学校の校門をくぐって行った。


 夕方になると生徒達がちらほら校門を抜けていたが、みくの姿がいっこうに現れない。

 あれ? 朝通ったのみくだよな。

 

 待てども待てども現れず、生徒達が全員学校から帰宅したんじゃないかと思える位、人の出入りは少なくなっていた。

 そんな事を思っていたら、みくが大人の女性と一緒に学校から出て来た。

 あれがみくの里親だろうと何となく思えた。


 しばらく後を付いて行くと手を繋ぎながら、他の人が見ても本当の親子なんじゃないかと思える位、二人の笑い声が聞こえた。

 あーちょっと間違えたかも知れない。親とも言えるし友達だと言えてもおかしくない状態だな。

 ふと思ったが俺は刑事ではなくストーカー気質があるのかも知れない。

 しかも相手から絶対に気付かれない、完璧なストーカーだ。

 自画自賛していたらみく達は自分の家に入っていった。

 

 家には灯りがつき、外にいる俺に届く位、大きな笑い声が聞こえたきた。

 みくの二日間を見てきたが、何とも楽しい時間を過ごしているではないか。

 友達、親、完全にリアルに充実しているという言葉はこの為にあるのではないかと再確認出きた。

 ここに来るまでは転校して、違う土地に来たから可哀想だと思っていたが、実際の所は俺と別れた方が良かったと思えるほどだ。

 何故だが知らないが、怒りがふつふつと込み上げてきた。

 俺はこんなにもお前の事を心配したのにバカみたいじゃあねーか。

 しかもみくよお前は無責任だぜ。

 俺を残していなくなったのと、孤児院『ヒマワリ』のみんなをほっといて。

 確かに孤児院という所はいい里親に引き取られるのが一番の幸せだと思う。

 だけどそれは何かが違うのだ。

 幸せは皆幸せにならないと駄目なのに自分だけが幸せになっているのかが俺は許せないのか?

 自分に問いてもその答えは一生答えは出ないとは思うがただ違うのだ。

 みくよ今のお前の人間関係と、親のイメージをぶち壊してやる。

 これはただただ俺の八つ当たりだけどな。

 嫌われてる者は嫌われてる方法でお別れをするって決まってるんでね。


 翌日、みく達が昨日遊んでいた『enjoy』でみく達が来るのを待っていた。

 ここはいつ来ても女性が多めのゲームセンターで、やはり男一人はだいぶ目立つので入り口近くで張っていたらみくと友達が入店したので、その後を追うよう俺も入店した。


 みくと一人の友達はプリクラ機に入っていった。

 このプリクラ機は中で撮影したら、筐体の外に排出口が設置されていてそこからプリクラが排出されるようになっていった。

「三、二、一」 と機械音性にしたがって写真が撮られプリクラが外に排出されたので、俺はそれを盗むと直ぐに横のプリクラ機に身を隠した。

 みくともう一人の友達がプリクラ機から出て、プリクラが排出される所に手を入れても何もなかった。

 あれどうしたのかなー見たいな顔を見て、俺はフフと思わず小さな声で笑った。

 

 それからみく達は何回か同じ事を試すが、何度も俺をプリクラを取ったので永久にみくの手にプリクラが渡る事はなかった。 

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