第11話孤児院⑩

「先生みくはどこにいるんだよ?」

 飯沼先生をリビングに招き入れた瞬間に、俺は慌てながら質問をした。

「まぁ落ち着きなさい」

「落ち着くことなんてできませんよ」

 飯沼先生の両肩を掴み左右に振った。

「やめーい」 と言われ脳天にチョップされた。

「少しは落ち着いたかい」

 飯沼先生は優しい言葉遣いで俺の顔を見ていた。

 落ち着きよりも頭が痛い。

 これって暴力だよね。

 指導といいうなの暴力だよね。

「ずいぶん痩せましたね」

 飯沼先生はこけた俺の頬、窪んだ瞳、あきらかに前とは違う体型を見てそう思ったのだろう。

「原因はみくさんの転校ですか?」

「……」

 その質問に対して返答はしなかったが、答えは出ていた。

「この企画やって良かったでしょ?」

 正直言ってこのせいで何回も辛い気持ちになった。

 人前で泣くはめにもなったし。

 それでもこの企画はやって良かったと思う。

 みくやたけるという大切な存在を知ることができた。

 この企画をやっていなかったら一生関わらずに、学校を卒業していたから。

「はい」

 飯沼先生は俺の真っ直ぐな嘘偽りのない表情を見て安心したのか、目を細めてうっすらと笑った。

「みくさんの居場所ですが…」


 ここでいいんだよな。

 担任から「みくさんの居場所ですが今東京にいます」と言われた瞬間、体力のない身体なのに家を飛び出し学校の正門の銘板には『北信濃高校』と書かれたに着いていた。

 俺の学校からそこまで離れていない場所だと判明した。むしろ学校よりも俺の家からの方が近い位だ。

 みくの授業がいつ終わるか分からないので、学校(北信濃高校)の校門の物陰から来るのを待つ事にした。

 

 しばらく経つと生徒がちらほらと玄関からでて来ると、みくの姿もそこにあった。

 話しかけようと近寄ろうとしたが、みくは別の友達と一緒にいたので俺は物陰からとどまった。

 危ない危ない。

 思わず手を振りそうになっちゃったよ。

 校門の物陰からみくを見ている俺は通りかかる生徒達から不審者を見る様な目でみられていた。 

 けして怪しい物ではないと言えない状況だ。

 柱から頭だけを出し体は隠しているのだから。

 みくが徐々に校門に近付いて来たので、柱にピタッと体を合わせて、何とかバレずに回避した。

 いつもなら近付こうとしても離れてしまうのに、今日は向こうから迫ってくるとわ。

 以外に避けるのも大変だわ。

 変な関心をしていたら、そのかんも生徒達からは一部始終見られていて、目線を生徒達に合わせ様とするとこいつは危険人物だといわんばかりの速度で目線をそらされた。

  

 みく達の後を付いて行くと、『enjoy』とかかれたゲームセンターに入ったので、俺も一定以上の距離を保ちつつ中に入った。

 店内はプリクラ専門のゲームセンターで女性九割男性一割でその中に俺がいるので当然目立っていた。

 女性からいやらしい視線でこちらを見てくるなと言わんばかりの目線を送られてる様に感じた。

 凍える様なあまりにも冷たい視線だったので、俺は思わず店内から出てフゥーっとため息をし『enjoy』の看板をただただ睨んでいた。

 

 その後みくは友達とカフェでお茶したり、カラオケで歌ったりと高校生活を充実させていた。

 まさにリア充ライフ全快だ。

 

 日も完全に落ち暗くなりようやく友達と別れみくは一人になったので、声をかけようと思ったら 「ただいま」 とみくは自分の家に着いていた。

 声をかけると同時に肩を叩こうと思ったから危なかった。

 今日はもう遅いのとタイミングが噛み合わないので家に帰る事にした。


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