228話サキュバスと森の番人

カテナの森に入った僕達はものの数分で迷子になってしまった。


手を繋いでいたソフィアとミュウ以外はどこにいるのかわからない。


それに、出口に戻ろうとしたが同じ場所をぐるぐると回る羽目になってしまった。


「完全に迷子になってしまったな……」


「まさかここまでの森だったなんて。私達が一緒にいられるのはこうやって手を繋いでいるおかげなのよね」


ミュウはギュッと手を握り直す。


「ひとまず、森に出るか皆と合流したいな。ソフィア、探知機はどっちに反応している?」


「森の中央なのは変わらないみたいです」


「そしたら、ひとまず中央をめざすとしようか」


探知機の発信源に向かって歩き出す僕達。


そこに、身の丈が僕の半分くらいかと思われる小さな子供が現れた。耳の先は尖り、栗色の短い髪に民族的な衣装を身に付けている。


「おい、お前たち止まれ!!」


その子供は僕達と目が合うと、素早く木に登り、僕を指差した。


「何、あれは」


「なんだろう、森の住人かなにかなのか」


僕達は至って冷戦にその子供の方を見る。


「この森になんの用だ!!」


「この森の奥に用があるんだよ」


「なんだと!!つまりは貴様等…泥棒だな!!」


「どういう理論でそうなるんだよ…」


独り合点がいったように、威嚇してくる子供を呆れた目で見つめる。


「この森の出方を知らないか?」


「出方などない!ここは迷い森だ!入ったが最後、迷うしかないのだー!!」


「そしたら、お前も迷子なのか?」


「んなっ!そんなわけないだろー!!」


ムキーッと怒り顔になる。髪の毛が逆立つほどの怒りのようだ。


「でも、出方はないんだろ?で、そこにいるってことは」


「出方はある!結界を解除すれば出口が現れるからそこから帰ることが出来るんだよ!!」


あっさりと答えを教えてくれる。あれか、馬鹿なのかこの子は?


「そっか、ありがとう」


子供に礼を言ってその場を通り過ぎようとすると、


「おい!待て!話はまだ終わっていない!!」


木から降りて追ってくる子供。


「まだなにかあるのか?」


「まだも何もこれ以上森に立ち入るな!!」


「仲間を捜さないといけないんだよ。それがダメなら全員出口に帰してくれ」


「そんなことは出来ない。誰がここにいるかは知らないからな。にしても、お前たち、何故はぐれない方法を知っていた」


子供は繋いだ手を指差す。


「これ?これはたまたまだよ。別にその方法を知ってたわけじゃないけど。やっぱりこのおかげではぐれてないわけなんだな」


「この森では繋がることが迷子防止の掟だ。それを知っているということは…お前やはり泥棒の心得が」


「だからどういう理論でそうなるんだよ!!」


どうしても僕達を泥棒にしたいらしい。


「僕はシオリ。訳あって森の奥に行く必要があるんだ。出来ればここを案内してくれないか」


「僕はキッドル。この森の番人だ。僕の役目は、余計な天使達をここに入れないことだ」


「キッドルは迷子なの?」


「だから迷子じゃなーーい!!!」


「ミュウ、話がややこしくなるからからかわないでくれ」

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