229話_サキュバスと森の鬼ごっこ

「お前達、この森から出ていけー!!」


「だから出て行きたいんだって!!」


ミュウ、ソフィアと手を繋いだまま僕はキッドルから逃げる。


キッドルは森のお猿達を呼び執拗に僕達を追い回していた。


「ちょっと、どこ触ってるのよこのエロ猿!!」


小さな猿がミュウに抱きついてはお尻を触る。それを蹴飛ばしてはまた新しい猿が抱きついてくる堂々巡り。


ソフィアも同じように猿の餌食にあっていた。


「いや、そこは……」


「この猿ども!!」


猿を追い払いたいが両手が塞がっているので蹴ることしかできない。


せめて片腕でも使えれば。


「ミュウ、僕の背中に乗ってくれ!!片手を使いたい」


「わかったわ」


おもむろに僕の胸の上に乗っかるミュウ。


「背中だ背中!!」


「お姫さまだっこの方がいいのだけれど」


「片手が空かないだろ!!」


「仕方ないわねぇ。はい」


ギュッと僕の首に抱きつく。


「よし、これなら」


僕は走っていた手を止めると、迫ってくる猿を見定める。


呼吸を整えればこれくらいの動きを捉えるのは造作もない。


ガッガッガッ!!


「キキーッ!!」


飛びかかってくる猿の頭を片っ端から掴んでは投げる。


「シオリ、やるじゃない。ご褒美のキス」


「いらんわ!死角から来てないか見てくれ」


「はーい」


ものの数分で猿を撃退し終え、一息つく。


「ぐぬぬ……意外とやるようだな」


キッドルは再び木に登り、僕達を離れた距離から見つめている。


「ねぇ、シオリ。ひとつ気付いたのだけれど」


「どうして、あの子供は1人でいるのに私達を追えるのかしら。迷子になるのではないの?」


「たしかに……変な話だな」


ミュウの言うとおり、僕達は1人になった時点で迷子になることを考えると、キッドルが迷子にならないのは合点がいかない。


これは、別の理由がありそうだな。


「シオリ、あそこに。グールが……」


「!!?」


その時、キッドルの後ろの方に病院で対峙した奴と同じグールが姿を現したのであった。

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恥じらうサキュバスが家に来た~反面他の娘たちはガンガン襲ってきます~ 綴字みかな @Ru-ne

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