194話_ドタバタ旅館アタック1
何故私はこんなところにいるのか。
ソフィアは頭の整理が出来ないまま、旅館の一室にあるお風呂に入っていた。
一室にある風呂にも関わらず露天風呂になっており、眺めが非常に良かった。
ずぶ濡れの状態で風邪を引いてはいけないと、ゴリラ顔の男性に誘導されるがまま、シオリとソフィアは旅館の一部屋に案内された。
そのまま、服は乾燥のために女将さん?らしき人(ゴリラ顔)に持って行かれてしまい、こうして今、茫然としたまま湯船に浸かっているのであった。
「お風呂、気持ちいい……」
冷えた体が芯から温まるのを感じながら、ソフィアはひとまず考えることをやめた。
◆◆◆◆◆
「どうしてこうなったのかしら」
「わからん」
「私もこの展開は読めなかったな」
ミュウ、シェイド、チャミュの3人は広めの露天風呂に浸かりながら、こうなった経緯を思い返していた。
噴水のある公園で、迷子の子供の兄と出会ったところまでは良かったのだが、そこから噴水で溺れている子供をソフィアが助けてから怒涛の展開で、気付けば旅館まで追ってきてしまっていたのであった。
「まさかゴリラ顔の兄が旅館の関係者とは」
「あの人、どこかで見たことあるのよね…」
「ともかく、ソフィアは風邪を引かなそうで良かったよ」
「そうだな」
背にもたれ、ゆっくりと空を見上げる。夕方になり、日が落ち始めていた。
「それで、あの2人は泊まっていくんだろう?」
シェイドが核心に触れる。
「そうなるわよね…。しかも、Tバックなわけでょ。これはもしかしたりするのかしら」
「Tバックは別にそういう意味でやったわけでは…」
困惑しているチャミュを無視して、ミュウは腕組みをする。
「気になるわね……」
「2人の隣に部屋はとったが、どうやって確認するかだな」
「シェイドの行動の早さには驚かされるよ……」
「あの2人、良い感じになるかしら?」
「わからん。今日の感じは、今まででは予想できないものだからな」
それぞれが、2人のこれからのことを想像する。
お風呂から上がったソフィアは、所在なさげに部屋の隅に座るのであろう。シオリもまた、どうしたらよいかわからず部屋のどこかで座っているに違いない。
そこから夕飯が出てきて一緒に食べる、までは良さそうだが…………。
シオリに会いに行きたいのをグッとこらえるミュウ。今日は、姉に華を持たせたいと思っていた。そういう分別はある女性であった。
「なるようにしかならないのではないかな。ひとまず、風呂から上がった後は夕食を楽しもうではないか」
「シェイドはシェイドでこの展開を楽しんでるよな…そういえば、彼女には連絡しなくていいのか?」
呆れていたチャミュが、ふと彼女のことを思い出す。
「彼女?」
「ほら、着物の」
「あぁ、青女。いいのよ、今頃、学校でお勉強でも教えてるでしょうよ」
ミュウは、邪魔がいなくてせいせいする、とでもいった風に大きく伸びをした。
◆◆◆◆◆
シオリはドキドキしていた。
久しぶりの胸の高鳴りだ。
不安と期待が入り交じる。
何を期待している?
いや、そんなことはない。
シオリは煩悩を振り払うために頭を振った。
ソフィアが露天風呂に入っている想像なんてするわけがない。柔らかな肢体、艶のある山と谷、それが湯に触れ、形状を変化させる───。などと考えているわけがない。
大体、どうしてこうなったんだ。
気付けば旅館の前まで連れてこられていて、気付けば部屋でちょこんと座っている。
迷子の子の兄が見つかったのは良かった。そこまでは良かったのだが、ジュースを買いに戻ってきたら、予想できない状態になっていた。
ひとまず、ソフィアの冷えた体をなんとかすることが出来て一安心といったところだが。
ソフィアのずぶ濡れになった姿を思い起こし、透けた白いブラジャーや、パンティのラインが脳裏に浮かぶ。
結構過激なデザインだった……?
「シオリ、そこにいますか?」
「はっ、はい!!」
お風呂の方からソフィアの声が聞こえて、思わず飛び上がる。
「あの、タオルを持ってくるのを忘れてしまって…」
「わ、わかった、今持ってくるよ」
タオルを持って行こうと、押入の中にあるタオルを手に取ったその時。
コンコン。
その時、扉を叩くノックの音がした。
女将さんかな?そう思って、扉を開けようとしたのと同時に、女性の声が聞こえてきたのであった。
「…旦那様?」
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