179話_大胆不敵に笑う敵

ソフィア、チャミュと合流した僕はワイバーンの元へ急いでいた。


ワイバーンの根城は全部で5階層。

地下も複数の階層があるようだった。


僕達は2階で低級悪魔と戦いながら次の階に繋がる階段を探していた。


戦力としては前衛2人を僕とリュウキ、後衛をソフィアとチャミュが担当し、バランスの取れたメンバーで戦う。リュウキはお構いなしに先に行ってしまうので、それを後から追いかける形となる。


ソフィアのおかげで体力も回復でき、より動きやすくなった。


階層が上になればなるほど、敵の強さも少しずつ増しているようだが、今の僕達には特に

関係ない。


3階に上がると広い場所に出る。

そこには、青い悪魔と赤い悪魔が僕達を待ち構えるように立っていた。


身の丈は僕の倍くらいか。どちらも細長い体型をしている。


「君達が侵入者かい?」


青い悪魔は爽やかな声で僕達に話しかけてくる。


「随分と美味しそうな子達じゃないか」


赤い悪魔も同じく爽やかな声で囁きながらソフィアチャミュを眺める。


「ワイバーン様からここで侵入者を止めるように言われていてね。残念だけど、君達はここで終わりだよ」


その言葉を聞いた僕は、


「それはどうかな」


2人の悪魔の前に立つ。


「先を急がないといけないんでね。さっさと倒していくよ」


「人間風情が随分と調子に乗ってるね」


余裕そうな僕の顔が気にくわないのだろう、少し苛立ちを見せる悪魔。


「俺は先に行く、お前らはそいつらと遊んでろ!!」


リュウキはそう言うと1人奥へと走って行ってしまった。悪魔たちが止める間もなく。


「あっ……ホント勝手な人だ」


「なんだ、仲間割れか」


ハッハッハと笑う悪魔たち。


「あんたらこそ、あっさり敵を中に入れていいのかよ。仕事しろ仕事」


僕は、そんな悪魔たちのことなんかお構いなしに2人に近づいていく。


「なめやがって!!」


「気に食わないんだよ!!」


悪魔の攻撃をかわして打撃の連打を浴びせる。


「ぐっ……な……」


バタリと倒れる悪魔たち。


「だから言っただろ。さっさと倒していくって」



◆◆◆◆◆



赤と青の悪魔を倒した後、僕達は頂上に向けて急いでいた。おそらく、リュウキはもう一番上の階に辿り着いているだろう。


リュウキの強さはわかっているつもりだが、ワイバーンが何か罠を張って待ちかまえているとも限らない。


まぁ、あんな人だが無事でいるに越したことはない。


僕は階段を駆け上がり、目の前の扉を蹴破る。


中は大理石でつくられた綺麗なつくりだった。目の前に移るのは、ワイバーンとリュウキの姿。


リュウキは膝をつき、ワイバーンを見上げている。どうやら劣勢のようだ。


「先輩!!」


「なんだ、ゴミ。やられなかったのか」


「あんなところでやられませんよ。怪我、大丈夫ですか?」


リュウキの腕には切り裂かれたような傷痕があった。


「お前に心配されるほど落ちぶれちゃいねぇよ」


「怪我を見せてください。治療します」


「いらねぇっつってんだろ」


ソフィアの手をはねのけ、リュウキは立ち上がる。


「卑怯な手使いやがって」


「私はいつも通りやっただけですよ。その戦い方を否定されるのはなんとも悲しい。そもそも、敵の本拠地に乗り込んでおいて正々堂々などと言う方も言う方ですが」


ワイバーンは、クククと笑みをこぼす。


「まぁ、私にとってあなたがどうなろうがいいんですよ。私が待っていたのは──」


ワイバーンは目を見開いて僕を指差す。


「君ですよ!君!!」


ワイバーンは心底嬉しそうな顔をする。


「君は実に良い。そして、また力を上げたようですね、いい、実に良い」


「何を言ってるんだ?」


ワイバーンが僕を見て喜ぶ理由がわからない。


「君は自分の価値を理解していないだろうが、素材として最高の資質を持っているのだよ。一体誰がつくったのかはわからないが、実にありがたいことだ―――というわけで」


ヒュッとワイバーンの尻尾が僕を絡め取ろうと迫ってくる。


「うおっ!!」


すんでのところで尻尾をかわす。


「動きも良い。これはますます欲しくなってきたな」


「シオリ、奴はシオリを何かの復活に使おうとしているようだ。敵に捕まるのだけは気をつけてくれ」


チャミュが後ろから援護をしてくれる。


「邪魔するな!!これは俺の戦いだ!!」


リュウキが僕達に向かって叫ぶ。


「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!!」


「うるせぇ!!やっとここまできたんだ。こいつにとどめを刺すのは俺だ」


「ククク、勝てる気で話をしていますが、果たしてそんなに上手くいきますかね」


リュウキは怪我も構わず、再び戦闘ポーズをとる。


「見せてやるよ、お前を倒すために覚えた技を」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る