178話_更にその奥深くへ
ソフィア達を救うため、そしてリュウキはワイバーンを倒すため本拠地に乗り込んだ僕達。
薄暗い廊下を、左右に灯された灯りが照らしている。
ソフィア達は無事なのだろうか。5人ともその辺にいる適当な敵には負けやしないと思うが。
先をどんどん進んでいくリュウキから離れないように歩く。
「先輩、敵の場所は?」
「わからん。奥に行けばいるだろ」
安直な理由だった。しかし、他に手掛かりもない以上先に進むしかない。
「敵から聞き出した方が早いか」
そう思っていると奥の方から大小様々な悪魔が襲いかかってきた。ようやく異変に気付いて確かめにやってきたらしい。
扉を開けたときにそこそこ大きな音が鳴ったと思うんだけどな。
雄叫びを上げながら迫ってくるモンスター達。とても会話できそうな知能レベルではないようだ。
「前言撤回だな、話にならなそうだ」
僕とリュウキは襲い来る敵を迎え撃つため戦闘態勢を取った。
◆◆◆◆◆
一方、ソフィアとチャミュは出口に向かって走っていた。ソフィアは弓矢を、チャミュは拳銃を携帯し、自分達を捕らえようとする敵を倒していく。
階層をひとつ上がっても、見える景色はあまり変わらず、出口に近付いているのかがよくわからない。
「出口はこっちで合っているのかしら」
「シェイドが言うにはそうだ。どこかで外が見えるところまで行く必要があるな」
「敵の数も多いから気をつけないといけないわね」
「あとは彼女達が無事戻ってこれれば、といったところだな」
「ミュウ達、無茶しないといいけれど…」
その時、ミュウ達はと言うと、自分達を売り飛ばそうとした元凶をぶん殴るために敵を片っ端から片付けていた。
「青女、ひとつ勝負といこうじゃない。シオリに会うまでに敵を多く倒した方が、シオリとの時間をもらえるっていうのはどう?」
「それは面白いですわね。ダブルの差をつけて力の差を思い知らせてやりますわ」
「それはこっちの台詞よ。3倍差で足下にも及ばないことを教えてあげる」
2人とも一振りで数匹の悪魔を蹴散らしていく。
「やる気なのは良いのだがな」
後ろの方ではシェイドが敵を処理していた。前は2人に任せている。違う方向から奇襲を仕掛けてくる敵を的確に倒していく。
そこに大柄な悪魔が1体、ミュウとレティの前に立ちはだかった。
黒光りした体の上から黒い甲冑を身に纏い、漆黒の剣を携えている。他の悪魔とはレベルが違う。
ミュウとレティは、ゆっくりとその敵に近付いていく。
「なんだ貴様らは。ここは弱き者が来てよい場所ではない」
悪魔は野太い声で、語り掛ける。
「弱いかどうかは戦ってみればわかるわ」
「私達を捕らえた事を後悔していただけないといけませんので」
レティがスッと前に出たのを見てミュウがその前に出る。
「なんですの」
「なんですの、じゃないわよ。私が先よ」
「ポイントを稼ごうったってそうはいきませんわ」
2人のいつもの喧嘩が始まる。
「貴様らなどまとめて相手してくれるわ」
悪魔は荘厳な声で語り掛けるが、2人ともそんなこと全く気にせずお互いのことを罵り合い続ける。
「そんな貧相な胸で旦那様を誘惑しようなどと。笑わせてくれますわ」
「大きければいいってものではないのよ。脳筋ゴリラ女」
「だ、誰がゴリラですって…!?このペチャパイチビ娘が!!」
「誰がペチャパイよ!!CはあるわよCは!!」
「そんなのないと同じですわ!!」
ギャーギャーと声が次第に大きくなる。
「あのー……」
話の輪に入れてもらえず、おいてけぼりになる悪魔。
「聞いてます?話」
「「うるさい!!」」
2人の気迫に思わず圧倒される悪魔。見ているこっちが可哀想になってくるな、とシェイドは思っていた。
「2人とも、そろそろ先へ進まないとまた敵が増えてくるぞ」
最早進行係と化したシェイド。物事を進めるために行動を促していく。
「わかったわよ、じゃあ公平にじゃんけんで決めましょう」
「望むところですわ」
おもむろにじゃんけんを始める2人。31引き分けという驚異のシンクロ率を見せ、なかなか決着がつかない。
「あのー……まだ終わりませんかねー……」
バッチリ決めた黒の甲冑も、意味をなさないくらいの無視具合。流石に悪魔も怒りが頂点に達したのか、雄叫びを上げて2人に襲い掛かってきた。
「俺を無視するなー!!!」
「うるさいって、!!」
「言ってるでしょう!!」
ミュウの蹴りと、レティの拳が悪魔の甲冑を打ち砕く。
「ぐはぁっ!!」
そのまま、壁に激突し、意識を失う悪魔。
「……ドローだな」
両手を上げて引き分け、の合図をするシェイド。
「そんなぁ…」
「ゴシック女がじゃんけんに負けないのがいけないんですわ」
「こっちの台詞よ!!」
「やれやれ、この2人はずっとこうだな……」
再び喧嘩を始めたので、シェイドはそれが収まるまで後ろから追ってくる悪魔達を蹴散らすのであった。
◆◆◆◆◆
出口へ向かうソフィアとチャミュ。
チャミュが前に立ち、悪魔達を次々と撃ち落としていく。
「思っていたより数が少ないな」
「確かにそうね。元々そんなに多くないのかしら」
「そうであれば好都合だ。出口を急ごう」
急ぐ2人の目の前には、3つに分かれた廊下が現れる。
「どれが外に繋がっているのかしら…」
悩んでいると、右の方から悪魔がどんどん吹き飛んでくる。
「ギィヤァー!!!」
「駄目だ!!僕達じゃあ勝てねぇ!!逃げろー!!」
小さな悪魔達が、一目散に逃げていく。それを追っていくリュウキとシオリ。
「シオリ!!?」
「おぉ!!?ソフィア!?どうしてここに!!?」
流れに乗って、ソフィアとチャミュもシオリ達の後を追う。
「それは、こっちの台詞です。でも、シオリ助けに来てくれたんですね」
「あったり前だよ!!これから僕達は親玉を倒しに行く。ソフィア達は先に外に脱出してくれ」
「いえ、私も行きます」
ソフィアは思わずシオリの手を掴む。会いたかった人に会えたことで心に少し余裕が出来ていた。
「わかった、行こう」
ソフィアの瞳を見つめる。今はもう、目を合わせるだけでなんとなくわかる。
あの時の2人ではない。
「おいこら、いちゃついてんじゃねぇ。置いてくぞ」
いらつくリュウキに言葉を返す。
「行きますよ!!さっさと倒して、僕達の家に帰ろう!!」
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