120話_天魔舞闘会 闘いの決着

天帝と僕、互いに最後の一撃を繰り出す。


それは一瞬の出来事だった。


「……ぐっ」


ほんの少しの差で天帝の腹部を僕の拳が捉えた。膝をつき、倒れる天帝。


「また、貴様に阻まれるのか……」


「何度だって防いでやるよ。お前が立ちはだかる限り」


「口では…なんとでも言える」


そのまま意識を失う天帝。


「勝者、天寿ーシオリ!!」


舞台を駆け上がってくるソフィア、ミュウ、シェイドの3人。彼女たちの顔を見るとホッとする。


「シオリー!!」


「シオリ、お疲れ様でした」


「無事勝てたようだな」


「皆、ありがとう。終わったよ。思ってたよりあっさりだったけど」


「とにかく、終わって良かったです」


「そうだな。帰ろう」


僕とソフィア達は舞台を下りていく。それを眺めていた長は満足げに会場を後にした。



◆◆◆◆◆



試合が終わり、僕達のチームが優勝した。レティが途中で抜けるというアクシデントがあったものの、なんとか最後まで勝ち抜くことができた。


表彰式が終わり、僕達のチームには天界、魔界を自由に行き来できる権利とひとつ願いを叶えることができるという宝石が授与された。


願いの使い方については家に帰ってから考えることになるのだが、これがまた一悶着を起こすこととなる────。





舞闘会が終わり地上に戻ってきた僕達。


天界は、地上人の優勝者が決まったことでお祭り騒ぎとなっていた。取材に囲まれていたところを逃げ出して今に至る。


「で、どうするの?この宝石は」


コロコロと宝石を転がすミュウ。青く光るその宝石は、はたから見ればただの宝石だ。願いが叶うような大層なものとは思えない。


「願いを叶えられるといっても1回だけだからなぁ。何にしたらいいのか皆目見当もつかない」


自宅のリビングでそれぞれゆっくりくつろぎながら会議をする。


「私は特にない。シオリが好きに決めたらいい」


「シェイドはそういうところ無欲だよなぁ」


「シオリのそばにいられればそれでいい」


真顔で言われるので少し照れてしまう。


「私はシオリと結婚して、子供をつくって、豪邸に住みたいわ。子供はサッカーチーム2つ分くらいがいいかしら?」


「ミュウは少し落ち着こうか」


「あら、私は本気よ」


「私もシオリと一緒にいられれば…」


「一緒にいたいという願いを叶えた場合、何が起きるんだろうか?」


「今、既にそれが叶えられてるからなぁ。無効になるのかな――ってミュウ、どいてくれよ」


「嫌よ。結婚してくれるのならどいてあげてもいいわよ」


「それは勘弁してくれ」


「勘弁ってどういうことよ!!」


「ミュウ、ストップ!苦しいから!!」


「シオリは少しそうやって反省してなさい」


「ミュウ、ほどほどにね」


「ソフィア、そこはミュウを止めてくれ……」


「しかしまぁ、具体的な願いもないようだし今はそのままでもよいのではないか?」


「確かにそうなんだよな。焦ることはないんだし、もう少し考えてみよう。それとは別に気になってることがあるんだけど」


「なんですか?」


「レティのことだよ」


ミュウの顔つきが険しくなり、僕の腕をつかむ。


「シオリ……あの女の話はタブーよ。私、結構頭にきてるんだから」


グッと僕の腕を掴む力が強くなる。


「ミュウ…確かに、あの時のレティがしたことは裏切りだったと思う。でも、どうしても違和感が残るんだ」


僕は話さずにはいられなかった。


「シオリ、あの女の話は!!…っ!?」


詰め寄ったミュウの両腕をつかみ唇を奪う。予想外のことに驚くミュウ。次第に、その行為に身を委ね、表情がとろけていく。


「レティの行動と長とのやりとりは、なにか関係がある。僕はそれを確かめたい」


「私はシオリがそうしたいのならそれで構わない」


「私も、構いません」


「……仕方ないわね。ついていくわよ」


「ありがとう、皆」


「にしても、」


シェイドが違う話題を口にする。


「シオリもすっかり女たらしになったな。魅力が増えたと喜ぶべきなのか、主を持つ身としてはいささか不安でもある」


「なっ!?」


シェイドの指摘に顔を赤くする。


「天使の翼と関係があったりするんでしょうか」


「かもしれないわね」


「そうだ、天使の翼!!あれはなんだったんだ?」


ミュウはこちらを見て真顔で答えた。


「シオリが天使化してるってことよ」


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