114話_天魔舞闘会 魅惑のドッペルゲンガー
試合を終えたシェイドは、ゆっくりと皆の元へ戻っていく。
「お疲れ様、シェイド」
「お疲れ様です」
「あぁ、ありがとう。しかし、ソフィアにつくってもらった衣装が…」
「大丈夫です。衣装ならいつだって直せますから」
「そうか、それなら地上に戻った時にお願いするとしよう」
「はいっ」
「じゃあ次は私ね」
ミュウは少し伸びをすると、舞台へと歩いて行く。
魔界側から現れたのは、黒いマントで全身を覆い、顔には無地の仮面を付けた者だった。
「あなたが私の相手なのかしら」
黒いマントの者は何も喋らず、ゆっくりとその仮面をとる。
「!!?どういうこと…!?」
仮面の奥からはミュウと同じ顔が現れた。マントを脱ぎ捨てると、衣装もミュウと全く同じ。ミュウの目の前にいるのはミュウそっくりな相手だった。
「ミュウが2人!!?」
「どうなってるんだ!?」
「ふふふ、驚いてる?私はドッペルゲンガー。私は何にでもなれる」
声もミュウそのもの。
「ドッペルゲンガー…自己幻視ということね。それも何かの魔法なのかしら」
「自分の目で確かめて見るといいわ」
ドッペルゲンガーは、普段ミュウがやるような動作をそのまま真似、黒と白の薔薇の花びらを巻き起こす。
「私の技を知っている!?姿や声だけを真似るわけではないの!?」
「私はあなた。あなたが出来ることは私にも出来る」
ドッペルゲンガーはそう言って、上着を脱ぐとそれを放り投げた。黒と白の薔薇がそれを巻き込むと一気に上着を切り刻む。切り刻まれ、ボロボロになる上着。
「!!?」
「あなたのお姉さんがつくった大事な衣装。これと同じふうにしてあげる」
ドッペルゲンガーはニヤリと嫌らしく笑う。顔や声はミュウそのものだが、中身は全く違う。ミュウはそんな風には笑わない。
「趣味の悪いやつね」
ミュウはドッペルゲンガーの腕を掴むと、それ以上に服を脱がせないように拘束する。
「私はね、相手を挑発するのが大好きなんだ。相手を辱めるのも興奮する。君は好きな人以外に下着姿を見られるのが嫌なんだろ?だから私が代わりに皆に見せてあげるよ、君のセクシーな下着姿を」
「あんたは…私が大嫌いな部類だわ」
ミュウはドッペルゲンガーを押さえる腕に力を込める。
「ミュウ、気をつけて!!」
「敵はミュウを挑発しようとしている!!」
「仲間は気付いているみたい、でも君は少し頭に血が上ったね。お姉さんのジャケットを傷付けられて怒ったかな?」
ドッペルゲンガーはニヤリと笑うと地面から黒い手を出し、ミュウの両足、両手と拘束する。
「くっ……!!?」
「形勢逆転だね。周りはちゃんと確認しないとダメだよ?」
ドッペルゲンガーは笑いながらミュウを見回すと、自らシャツを脱いでブラジャー姿になる。紫レースの下着が姿を現す。
観客席から男たちの歓声が沸き上がる。
「随分と大人っぽいのを付けてるよね。そういう風に見られたいのかな?」
ドッペルゲンガーはもがくミュウの方を見る。
「これだったら人気出るよねぇ。君って汗がサキュバス特別の甘くて美味しい味だったりするんだろ?君の汗や体液を集めて欲しがる輩は魔界に沢山いそう、君を持って帰るのもいいかもなぁ」
ゲスな笑い声を浮かべるドッペルゲンガー。それがミュウの声だからなおさら嫌悪感が強く感じられた。
「やめろ!!ミュウを放せ!!正々堂々と戦え!!」
僕はドッペルゲンガーに向かって叫んでいた。これ以上、ミュウが
「あらぁ、怒ったかな?ねぇ、君の大好きな人が怒ってくれてるよ、どう、嬉しい?嬉しいよね。君のためにあの人が怒ってくれてるんだから」
「……」
もがくのをやめ、黙るミュウ。
「あら、反抗するのやめちゃった?ダメだよ、もっとみっともなくあがいて、顔を真っ赤にして
ドッペルゲンガーはスカートを徐々にたくし上げる。タイツで覆われたふとももが徐々にあらわになり、観客席からは男たちのどよめきが起こる。
「ねぇ、次は君の大事なところを皆に見せちゃおっか!カメラにもバッチリ写るし、永久保存版だよ」
ドッペルゲンガーはスカートを再び掴むと、横についてあるファスナーを徐々に下ろそうとつまんだ。
「じゃあ、いっくよー」
ファスナーを下げようとしたところでドッペルゲンガーの動きが突如止まった。
「あ、あれ、?」
腕も、脚も、1ミリたりとも動かない。目の前のミュウを見ると、彼女を掴んでいた黒い腕が少しずつ彼女の体に取り込まれていく。
黒いオーラを全身にまとい、ゆっくりとドッペルゲンガーに向かって歩いていくミュウ。髪の奥の表情は見えず、ただ静かな怒りをたたえているのだけがわかる。
ミュウはドッペルゲンガーを片手で掴む。掴んだ手の先から徐々にドッペルゲンガーのエネルギーが吸い取られていく。
「ド、ドレインだと…君は使えなかったはず………」
驚きを隠せないドッペルゲンガー、掴まれた腕を剥がそうとするがビクともしない。
「……そうよ、ついさっきまでね」
ミュウはドッペルゲンガーに視線を向ける。冷徹な、それでいて冷静な。
「私の大嫌いなことをいくつやったか覚えてる?」
「わ、わからない…」
「4つよ、そのまま死に値するわ。干からびて動けなくなりなさい」
「や、、やめろぉぉおおお、うぉぉぉぉお」
ミュウの姿を維持していたドッペルゲンガーはみるみるうちにその形をなくし、最後には無地の仮面だけになってしまった。
「ギリギリ、命だけは残しておいてあげたわ。私の温情に感謝することね」
「勝者、ミュウ!!!」
「ミュウ!!あの場で新しい技を使えるようになるなんて」
「しかもあれはサキュバスの能力です。ミュウも成長してるんですね」
「うむ、見事であった」
ホッとする仲間一同。
ミュウは戻って来るなり、僕に飛びついてくる。
「ミュウ!!?お疲れ様、よく頑張った」
ミュウの頭をポンポンと叩いてあげる。
「チューして…」
「ん?」
「チューして!!さっきの全て忘れさせて!!」
ミュウは僕の唇に思いっきり唇を重ねてくる。興奮しているせいなのか、僕もエネルギーを吸われている気がする…。
「ミュウ、落ち着いて!!シオリまでドレインが!!」
慌てて唇を外させるソフィア。
「ごめんシオリ…上手く制御出来なくて」
「はは、大丈夫…(あのままだったら僕死んでたな)」
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