第11話 ピラミッドの戦い
ソヴァルは窓からのぞく。
どこの都市同盟もそうだが五メートルの高い壁に囲まれている。ナスカ都市同盟も他の都市と同じ造りである。崩壊前はナスカ市という名前だったが崩壊後はレイダーやミュータントに対策でいくつかのの村や町と一緒に団結して高い壁を建設した。その中にコブラアイ基地はある。
ヘリポートに着陸するセンチュリー号。
機外に出るミラーたち。
「トブルク司令官」
驚きの声を上げるミラーたち。
「ヒラリオン議員とクミツ議員の船に乗せてもらったの。南アメリカ方面軍のプリム司令官よ」
トブルクは隣りのペルー人将校を紹介する。
「案内します」
プリム司令官は促した。
「けっこう深いわね」
吉田が疑問をぶつけた。
「地下二五階に司令室はあります」
プリムは答える。
エレベーターは地下二五階で止まりミラーたちはロビーに出る。彼らは異星人やコブラアイのスタッフが忙しく行き交う中を進み司令室に入った。
「すごい・・・」
絶句する吉田。
「ここには情報が集まる。中枢部はロズウェルのエリア51基地よ。我々がイブラヒム博士やあなた方の支援をするのは人類の歴史や貴重な遺物を守る事により人類は再び再建できると思っている」
トブルクは語気を強める。
「ですがナスカ遺跡周辺はミュータントやレイダー、モンスターが出没が相次いでプロジェクトが凍結になりました」
ガレットがわりこんだ。
「もしかして僕たちが討伐するとか?」
ソヴァルが口をはさむ。
「そういう事になる。発掘調査するには討伐をしないと始まらない」
言い切るトブルク。
「地図で見るとミュータントやロードランナーの野営地が近いわね」
アンナが指摘する。
「やるしかなさそうね」
しれっと言うグレース。
「どのピラミッドか検討はついているのですか?」
如月がたずねる。
「海側にあるピラミッドには地下の出入口らしい仕掛けがあるのは研究でわかっているのですが攻撃が激しくなったのでコンクリートで塞いで避難しました」
ガレットは地図を指さす。
「この三つのピラミッドは野営地から離れているな」
ミラーがわりこむ。
「センチュリー号には光学迷彩装置で周囲に溶け込める装置もつけた。よっぽど目がいい奴がいなきゃそのまま潜入できる」
マグーが腰に手を当てる。
「銃を借りるわ。自分の面倒くらい見れる」
腹を決める吉田。
「僕もアサルトライフル位は使える」
ガレットが名乗り出る。
「後方支援をするわ」
トブルクがうなづく。
「では出発だ」
ミラーはうなづいた。
ナスカ基地を離陸するとセンチュリー号はナスカから離れた。砂漠に出ると周囲に溶け込み周囲の景色と同化する。
「・・・本当にすごい装置だ」
感心するミラーとタリク。
「SF映画やSFアニメで言う時空潜航艇とかあるの?」
ソヴァルは目を輝かせる。
「あるよ。それはスパイ任務専用だし特殊部隊専用だ」
ヨセフは機器を操作しながら言う。
「そうなんだ」
窓の景色に視線をうつすソヴァル。
眼下には荒野の平原が広がる。
ソヴァルはおもむろにガイアからもらった
「時空のコンパス」を出した。
コンパスの針は今向かっている方向を指している。
しばらくすると三つのピラミッドが見えた。
「ミュータントやレイダーの野営地から一〇キロ離れているわね」
地図を確認するグレースと京極。
「真ん中のピラミッドへ行ってください」
唐突に言うソヴァル。
「わかった」
カイルは操縦桿を傾ける。
センチュリー号は真ん中のピラミッドに機首を向ける。
時空コンパスをチラッと見るソヴァル。
針は真ん中のピラミッドを指したままだ。
丘のそばに着陸するセンチュリー号。
カイルとマグー、ヨセフを機内に残してソヴァルたちは機外に出た。
「コンクリートがボロボロになっていて穴が空いている」
ため息をつくガレット。
「爆破されるよりはマシよ」
吉田は銃を抜いた。
ミラーたちはピラミッド内部に足を踏み入れる。しばらく回廊を進むと教室がすっぽり二つ入りそうな部屋に出た。
「ガイアス」
あっと声を上げるソヴァルたち。
「やあ、雪風。また会ったね」
ガイアスは笑みを浮かべる。
「あんたにはどこにも逃げ場はないけど」
ビシッと指をさすグレース。
「逃げ場は作る物だよ。それに君らは僕たちがどこにいるのか突き止めていない」
核心にせまるガイアス。
「居場所や本拠地は突き止められないように時間断層の中を行き来しているのは知っている」
しゃらっと言うクマラ。
ガイアスの顔から笑顔が消えた。
「図星だね」
ヴァイワムスがわりこむ。
「そんなのもはどうにでもなる。雪風。こいつらについていくともっと苦しむ事になるよ。雪風と融合して船体が受けたダメージは痛みや苦しみとなって君を苦しめる」
ガイアスは核心にせまる。
無言になるソヴァル。
もちろん正解である。船体が受けたダメージや損傷はみんな痛みや苦しみとして電子脳に通達される。それに感覚まで鋭くなっているし海流の動きや水圧の変化までわかるようになった。
「なんでだか言ってやるか?おまえは金属と機械で出来ている。そして戦艦でもある。もうおまえは人間じゃないんだよ。宇宙船であり機械であり金属の塊なんだ」
笑い出すガイアス。
歯切りするソヴァル。
くやしいけど反論できない。
「何がおかしい!」
ミラーは一喝した。
「ではなぜそんな船についていく?」
ガイアスは真顔になる。
「あんたよりはマシだからよ」
たんかを切るアンナ。
「僕たちが住む地球は問題だらけだ。だから団結するしかない」
如月がはっきり言う。
「住めば都とかよく言います」
セシルがわりこむ。
「やっかいごとを持ってきているのはおまえらだろう」
タリクは指をさす。
「でもあんたは下っ端ね」
グレースが指摘する。
「時空管理局はおまえの仲間を追っている。それだけでなく本拠地もいずれは突き止める」
ルミナスは声を低める。
「どこにでも逃げ場はありませんよ」
デグラが言う。
「この星は問題が山積みだから一つ一つ対処するしかない」
ミラーは語気を強める。
ソヴァルはナイフを投げた。
正確にガイアスの額に刺さる。
「それが答えか。雪風。おろかな戦艦だ。おまえはもっとその力に苦しむんだよ」
ガイアスはナイフを抜くと袋から銀色のキューブを出した。
「それは!」
声をそろえるクマラとヴァイワムス。
「もともと僕たちの先祖が造ったんだ。それをあいつらが取り上げて隠した。やっと装置を稼働できる。すべて飲み込んでやる。でもその前に」
ガイアスは燭台のスイッチを押す。
背後の壁が引き戸式に重々しい音を立てて引き込まれていく。その奥は果てしなく暗く奥行きを見えない。
「我々は止まらないぞ」
ガイアスは高笑いしなからどこかにテレポートしていった。
「レプテリアンの巣だ!」
クマラは出し抜けに叫ぶ。
「やられた」
くやしがるヴァイワムス。
「僕の「解き放つ」力ならここを吹き飛ばせる。ロドリコ、グレース、シエナ手伝って」
ひらめくソヴァル。
直感で自分ならやれると思っただけだ。それに四人のパワーを増幅すれば波動砲のモノマネができると思っただけだ。
「なにやるかわからないけどあまり吹き飛ばさないでね」
釘をさす吉田。
「了解」
うなづくソヴァル。
「ここを離れるぞ」
ミラーは合図するとアンナたちと一緒に出て行った。
ソヴァルは大きな穴に飛び込んだ。
シエナ、グレース、ロドリコは互いに顔を見合わせると飛び込む。
「とんでもなく広い地底空間だ」
ロドリコが声を張り上げる。
「こんな所にレプテリアンのアジトがあったなんてね」
グレースが穴の奥をにらむ。
ソヴァルとシエナの姿が緑色の蛍光に包まれ戦闘艦に変身した。
艦橋構造物から碍子(がいし)を三つ出す雪風。碍子は電柱のように太い。
「ロゴス、グレース、ロドリコ。エネルギーを僕にぶつけて。それを増幅してアジトに行ったら「解き放つ」よ」
ソヴァルは声を荒げる。
「了解」
三人は声をそろえる。
ロドリコは黄金色の魔法陣を出し、グレースはまんじゅうをこねるようなしぐさをしてオレンジ色の光を出した。
ロゴスは船底から筒状の発射機を出すと青色の光線を放射した。
雪風の艦橋構造物から飛び出す増幅アンテナに三人のエネルギーが溜まっていく。
二隻と二人は長いトンネルを抜け広大な地底空間に飛び出した。彼らの目の前に都市が広がる。
「‥気持ち悪い」
猛烈な吐き気とめまいを覚えるソヴァル。
ロゴス、グレース、ロドリコは照射するのをやめた。
「じゃあ行くよ。ロゴスたちは先に行って」
ソヴァルは促した。
「了解。使いすぎないでね」
釘をさすグレース。
「わかった」
ソヴァルはそう言うと精神を溜まったエネルギーに振り向ける。
ロゴスと二人はどこかにテレポートした。
とたんに地下都市に警報が鳴り出す。
雪風の船底から格納されていた粒子砲の発射機が飛び出す。
ソヴァルは精神を発射機に振り向け、船体から六対の鎖を出し、両手を広げるしぐさをした。せつな、閃光とともに黄金色の衝撃波が同心円状に広がった。
ナスカ平原を飛び去るセンチュリー号。
その背後で衝撃波が広がり、ピラミッドを中心に放射状に地割れが広がり、地割れから爆発と炎が噴き出す。閃光とともに爆風が広がりキノコ雲が立ち上がるのが見えた。
センチュリー号のそばにテレポートしてくるロゴスとロドリコ、グレース。
ロドリコとグレースはセンチュリー号の後部ハッチから機内に入る。
ロゴスも緑色の蛍光に包まれて縮小して元に戻るとハッチから機内に入った。
「すごい威力だ」
絶句するミラーとタリク。
「あんな所にアジトがあるなんてね」
ルミナスがため息をつく。
「だがあの子は「鍵」だ」
はっきり言うヴァイワムス。
「私も同じ見解だ」
うなづくクマラ。
爆発の濃密な煙から飛び出す雪風。艦橋の窓に二つの光が灯っている。
「ミラー隊長。ただいま戻りました」
ソヴァルの声が通信装置から聞こえた。
「よくやった。ナスカ基地に戻るぞ」
ミラーはうなづいた。
三〇分後。ナスカ基地
蛍光に包まれて元の姿に戻るソヴァル。
ミラーたちと一緒にエレベーターに乗り、司令室に入った。
「プリム司令官、トブルク司令官。・・・遺跡を壊してすいません」
ソヴァルはあやまった。
「報告は聞いた。あの遺跡の地底にはレプテリアンのアジトがあった。地上にはミュータントやグール、レイダー、海賊のアジトや野営地。モンスターの巣が五〇キロ圏内にいくつもあった。それをまとめて片付けてくれた。お礼をしたいのは私たちよ」
トブルクは笑みを浮かべた。
「私たちもレプテリアンのアジトを探していた。その一つを潰してくれた。わざわざ開けたガイアスに礼を言わないとね」
ヒラリオンが口を開いた。
「ガイアスが「キューブ」を持って逃げた」
あっと思い出すソヴァル。
「それは我々が探す。シド博士の所に行きなさい」
クマラは肩をたたいた。
ソヴァルはうなづいた。
「ソヴァル。行くよ」
シエナが手招きする。
しぶしぶソヴァルはシエナと一緒に司令室を出た。
「・・レプテリアンのアジトは地底にあるのですか?」
ミラーは口を開いた。
「今から一五〇年前、前任者たちとブライトン大統領はインテリジェンサーと一緒にレプテリアンのアジトがだいたいどこにあるのか情報をつかんだ。それと一緒に人身売買組織に拉致された子供たちを地下から救出していた。その数は全部で二万人。子供だけでなく食用にされる子供を産まされていた女性たちも救出した。子供の多くは拷問され成分を抽出された後だった」
トブルクはいくつかの写真を出した。
多くの子供の顔は腫れあがり、傷だらけである。別の写真には頭がい骨が山積みになっていた。
「敵はそれだけではなかった?」
ヨセフが口をはさむ。
「ディープビジョンや金持ち連中、権力者たちの間にその薬品が出回っており、臓器売買まで行われていた。大元は中国政府である事は突き止めていてブライトン大統領は中国経済に確実にダメージを与える政策を打ち出して供給を絶ち、臓器売買や子供の拉致、拷問して薬品にしてしまう連中や関係者を刑務所送りにした」
スクリーンを切り替えて説明するトブルク。
「南米でも同じような作戦をやっていた」
プリムが口をはさむ。
「前任者から聞いた事があるけどけっこう大きな作戦ね」
感心するルミナス。
「米軍を使って世界中の地下施設から救出していったの。地上にあるアジトや地下にあった人身売買組織や人喰いたちのアジトを潰していった。その上でレプテリアンやインテリジェンサーのアジトをどこにあるのか見つけて襲撃しようとしていた矢先に世界崩壊したの」
重い口を開くトブルク。
「やっと前任者のやっていた事が身を結んだ事になる」
ルミナスは破顔する。
「銀河連邦としても他の組織を代表して礼を言いたい」
クマラとヴァイワムス、ヒラリオンは頭を下げた。
「それはあの子に言ってくれないか」
ミラーは腕を組んだ。
「あの子がいなければ拉致された子供たちや誘拐された人々を救出できなかったし、おまけにレプの巣も見つけられなかった」
はっきり指摘するグレース。
無言になるクマラたち。
「センチュリー号の整備をしないと」
思い出したように言うマグー。
「私たちも報告をしないと」
グレースやミラーたちは退室した。
医務室に入るミラーたち。
部屋にシドやワジリー、マリアがいた。
作業台に胸当て型の制御装置や腕輪端末やネックレスや補聴器が置いてあり、ストレッチャーにソヴァルが寝かされている。彼の頭にヘッドギアーがかぶせられ、胴体にハーフアーマーのような装置が装着され、両胸や背骨にそって後頭部、わき腹にも太いケーブルが接続されている。
「これは補給ケーブルだ。また取ったんだ」
マグーは作業台にあるケーブルを指さす。
「彼のは切除しても何回でも生えてくる。わき腹に補給装置があるからエネルギーを供給している」
シドはハーフアーマーの胸の部分を押す。すると硬質ゴムのように深くへこみシワシワになる。
「この子は可塑性が強いわ。装着している装置も周囲の金属をゴムのように形質を変えてしまう。でも木材や紙、生物、自然の素材は同化できない。だけどエネルギーの流れは見える」
マリアはソヴァルの寝顔をのぞく。
「雪風専用に造った修理ドックはなんともなかった」
マグーが疑問をぶつける。
「同化を打ち消すプログラムを彼らの技術者や科学者たちは造った。船底や船体中央部にあの制御鋼板を装着するのはまずエンジンと循環機器を止めて、兵器システムや主要機器を停止させたからだ」
シドは雪風の図面を指さして説明する。
「だからあんなに苦しがっていたのか」
シエナが納得する。
「なかなか入りたがらないのも壊したがるのもわかるわ」
京極がため息をつく。
「動力炉であるエンジンやコアを制御したら動けないな」
マグーが納得する。
「エネルギー供給が完了したら彼を起こす予定だ。周囲五〇キロのレプの巣とレイダーやミュータントの野営地やアジトを彼は自分の意志で制御した。これでも五〇%のエネルギーを消耗している。それ以上に損傷して消耗も激しくなれば地球では対処できない」
シドの顔が曇る。
「それは私たちがなんとかするわ」
マリアが笑みを浮かべる。
「あれだけ吹っ飛ばして五〇キロ四方の半径なのか。じゃあ本気を出したら惑星ごと吹き飛ぶって事?」
カイルが聞いた。
うなづくマリア。
「制御訓練を本格的にやらないとダメね。彼は私とシエナ、ロドリコのエネルギーを溜めて制御して解き放ったのを見れば大きなエネルギーに耐えられるようになったのね」
グレースは真顔になる。
「でもまずガイアスを見つけないとね」
京極が口をはさむ。
「発見したら連絡するわ」
マリアが言った。
翌日。ナスカ基地
司令室に入ってくるソヴァルたち。
「・・・ガイアスを見つけた。エジプトに行ってくれないか」
ヒラリオンが口を開いた。
「エジプト?」
聞き返すミラー。
「ガイアスがモンスターを連れてクフ王のピラミッドに入っていったのが確認された」
トブルクが画面を切り替える。
「ドラゴンだ」
思わず声を上げる如月。
ガイアスは一〇匹を超えるドラゴンや門グレイルといったモンスターを連れて三大ピラミッドに近づく映像だ。ガイアスは一人でクフ王のピラミッドに入っていく。
「周辺に高エネルギー反応が見られる。時空ポータルが開くと思われる。一つだけでなく複数だ」
プリムが周辺の地図を出す。
「どうやら三大ピラミッドはガイアスの先祖が人類の先祖を使って建設させた遺跡のようだ」
画面が分割されてイブラヒムが映る。
「じゃあナスカピラミッドもギザピラミッドもガイアスの先祖が建設させた物だったという事?歴史がだいぶかわるぞ」
タリクがわりこむ。
「太陽系や天の川銀河が全体が植民地だと考えるならばそうなる」
デグラは腕を組む。
「複数の時空ポータルが開いたら我々だけでは対処できない」
プリムがわりこむ。
「それはグラム司令官に頼むしかないと思います」
黙っていたセシルが口を開く。
「カイロにいた人々はシェルターに入った。残っているのは戦闘員だけよ」
画面が分割されて草薙が映る。
「ガイアスを止めよう」
ソヴァルは真顔になる。
「よし行こう」
ミラーはうなづいた。
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