第5章 ピラミッドの正体

第10話 ピラミッド

 翌日。シドニー配送センター

 ソヴァルはシエナと一緒に受付に入った。受付の横に円柱型の配送端末がありそばに受け取り口があり、その奥は倉庫のような作りになっていて運搬ロボットや無人フォークリフトやベルトコンベヤーが見えた。故障がないか見回る技師以外は無人である。

 ソヴァルは腕輪型の端末をかざした。青白い光が灯って配送リストが受信される。

 二人は裏にあるヘリポートに出る。ヘリポートも三個ありその隣は駐車場である。

 無人フォークリフトがセンチュリー号の後部貨物室に貨物を運搬していく。載せ終わると出ていく。

 シエナとソヴァルは後部ハッチに乗り込むとセンチュリー号が離陸する。

 「次はどこに行くの?」

 ソヴァルが聞いた。

 「インドのゴア」

 ミラーは側面のスクリーンに地図を出す。

 「ポンペイから北にあるニューデリーは中国に近くにあり輝きの海に近い。高濃度の放射能で汚染されている。シェルターから出た人々や生き残った人々はムンバイとゴア、チェンナイといった都市から再建した」

 京極は説明した。

 「そうなんだ」

 うつむくソヴァル。

 「心配するな。人類はそんな弱くない。知恵でなんとか生き残っている」

 ミラーはソヴァルの肩をたたく。

 うなづくソヴァル。

 インドと中国は世界崩壊前から仲が悪く事ある事に国境付近で紛争が起きていた。小競り合いが発生していた。二〇二〇代に日米豪インドによる国際機関クアッドが創設され中国包囲網が出来上がった。その時はそれほど、核爆弾の脅威はなかった。なかったわけではないが決定的になったのは三年後でアラビア海沖二〇〇キロ海上での核爆弾の爆発。人為的ミスだったがそこから世界中が大騒ぎになりこぞって地下シェルターを建設した。あのグレートウオーと呼ばれる世界崩壊後はニューデリーは輝きの海に飲まれ永遠に住めない土地になり人々はポンペイから南方の都市に移動して再建した。自分が知っているのはこれだけ。詳細なんて誰も知らない。

 窓の外をのぞくソヴァル。

 シドニーから砂漠上空に出るとセンチュリー号がワープする。次の瞬間、海上にワープアウトした。

 ダンバーズエクスプレスのインドゴア支部のヘリポートに着陸した。

 機外に出るソヴァルたち。

 隣りの駐車場にはトラックやバンの他にバラモン牛が何頭もいた。

 バラモン牛とは体高約三メートル。の赤毛で二つ首があり頭には水牛のような立派な角を生やす。寒さ暑さに強く放射能耐性があり長距離でもついてくる大型の牛である。これも放射能の影響で生まれたモンスターだが性質はおとなしい部類に入る。放射能の影響を受けなかった普通の牛もいるが二つ首のバラモン牛も存在する。

 無人フォークリフトが後部ハッチから貨物の荷下ろし作業をする。

 配送センター内に入るソヴァル。受付の横にある円柱型の配送端末に腕輪端末をかざす。青色に輝き配送完了のサインが出る。

 「ヴァイワムス評議員とクマラ評議員」

 グレースが気づいた。

 「何か調査ですか?」

 ルミナスが聞いた。

 ミラーたちが振り向く。

 「ガイアスの目撃情報が入ったから来た」

 クマラは重い口を開く。

 「どこで?」

 デグラがたずねる。

 「侵入者は神鬼出没でね。我々も彼らに手を焼いている」

 ヴァイワムスが答える。

 「吉田有里博士だ」

 ソヴァルは数人の男女と一緒にいる日本人女性に近づいた。

 「え?」

 「歴史学者の吉田博士ですね」

 ソヴァルはたずねた。

 「そうよ。あなたは・・・ソヴァルね」

 中年の日本人女性は答えた。

 「知っているの?」

 驚くソヴァル。

 「だってミュータントやグールの大集団を蹴散らしたチームがいてその中で宇宙艦「雪風」に変身する少年がいるともっぱら有名よ」

 吉田は新聞を見せた。

 それはロイター通信の新聞の記事である。

しかも第一面に


 “宇宙艦「雪風」マシンミュータントになる”

 “時空ポータルから出現した宇宙生物を全部倒す”

 

 とあった。

 「・・・いつの間にか記事になっている」

 絶句するミラーたち。

 ロイター通信だけでなくインドの新聞や東南アジアの新聞まで記事になっている。

 「頭痛いわ・・」

 頭を抱えるグレースとルミナス。

 「人の口には戸は立てられないな」

 困った顔をするデグラ。

 難しい顔をするクマラとヴァイワムス。

 「父さんと母さんにどう説明したらいいかわからないな」

 困惑するソヴァル。

 「これなは何かの縁ね。エジプトの発掘現場まで乗せてくれない?現地スタッフに死者が見える能力者が足りなくてハンターも足りないから募集していた」

 依頼書を見せる吉田。

 「これはA級ハンターの依頼書だ」

 タリクとミラーの声がはもる。

 「私たちも入っていいかね?時空魔術師でもあり死者も退治できる」

 名乗り出るヴァイワムスとクマラ。

 「お願いします」

 頭を下げる吉田。

 「現地でも邪神ハンターがいるだろう」

 ミラーが怪しむ。

 「砂漠に出るのはロードランナーやレイダー、ミュータント、グールだけでなく死者も出るしモンスターも出没する。大きな結界を張れる魔術師もほしい」

 吉田が答える。

 「これでも僕は時空魔術師だ」

 「私も大型のモンスターや宇宙生物も倒せるわ」

 ロドリコとグレースが名乗り出る。

 「僕とシエナは宇宙船に変身できる」

 ソヴァルが名乗り出る。

 「博士。あなたは異星人がいても驚かないのですか?」

 京極がたずねた。

 「研究チームにオリオン人がいたりするから驚かないし、実家の隣りに住んでたのがアルファケンタウリのアヴァロンとバロンから来た異星人だったから驚かない」

 しゃらっと言う吉田。

 「実家って?」

 如月がたずねる。

 「長野にあるの。先祖は松本第六シェルターに住んでいた」

 吉田は答える。

 「私は京都第十二シェルターです」

 「僕は京浜第十シェルターです」

 京極と如月が声をそろえる。

 「みんな同じ感じね。先祖はたいがいシェルターに住んでいた。でも埋もれた歴史を掘り出すのは重要よ。時には異星人と人類の関わりや過去に起きた小規模なデスストランディングも知る事ができる」

 重い口を開く吉田。

 「一緒に行こう」

 ソヴァルは破顔する。

 「まだ決定していない」

 ミラーがわりこむ。

 「でも気になりますね。死者まで出るのは」

 タリクがうーんとうなる。

 「ではエジプトに出発。お客さんを乗せての出発になる」

 ミラーは言った。



 三〇分後。ヘリポートからセンチュリー号が離陸した。

 荷物をしっかり固定するカイル、マグー、如月、アンナ、京極たち。

 「・・・博士。荷物が少ないですね」

 貨物室から顔を出すソヴァル。

 「大部分の機材は現地のクリムゾンキャラバンとダンバースエクスプレスに頼んだの。その方が楽に動けるからね」

 振り向く吉田。

 「クリムゾンキャラバン?」

 ソヴァルが聞いた。

 「世界中に支部がある民間の運び屋。地元の元ハンターや魔術師からなるの。中には異星人のハンターもいる。ダンバースエクスプレスの下請けって感じね。異星人ハンターによれば大元はギャラティツクキャラバンといって違法すれすれの事もやるけどルールがあって人身売買や子供の誘拐や薬物取引といった事はやらない業者よ」

 資料を見せる吉田。

 「私もそこにいたからわかるわ」

 カイルが割り込む。

 「ギャラティツクキャラバンは銀河連邦や他の組織にも支部を持っている業者よ。ダンバースエクスプレスもどっちももっとも治安がよくない場所に行くのが仕事。海賊やモンスター、死者が出る場所が配送エリアになる。死者が出る領域は原則として死者が見える能力者か時空魔術師、またはそれを退治できるハンターを連れて行かないといけない。私はグレースのチームに入るまではギャラティツクキャラバンにいたからわかる」

 カイルは説明する。

 「もともと四人じゃないんだ」

 アンナがわりこむ。

 「私とマグーとヨセフはギャラティツクキャラバンにいて運び屋をしていた」

 カイルがうなづく。

 「一人だといろいろ不便だったから私から声をかけたの」

 フッと笑うグレース。

 「なるほどね」

 納得するタリク。

 「この二つの業者が中小の配送業者をまとめている」

 カイルがつけくわえる。

 「車が入れない奥地は馬かロバやバラモン牛なんだ」

 納得するソヴァル。

 「ワープするから手すりにつかまって」

 ルミナスは機内アナウンスで注意する。

 ソヴァルたちは貨物室の隣りにあるイスに座りシートベルトをした。

 青色の光に包まれてワープする。次の瞬間、センチュリー号は別の海域にワープアウトした。

 「すごいわ。タクシーを頼んでよかった」

 目を丸くする吉田。

 「当機はまもなくエジプトのカイロ支部に到着します」

 デグラが口をはさむ。

 センチュリー号はカイロ支部のヘリポートに着陸した。

 ソヴァルとシエナは配送センターの受付にある円柱型の配送端末に腕輪端末をかざして配送リストを送信した。彼は通信端末のネックレスを取ってくだんの端末にかざす。すると黄金色の光に包まれた。しばらくするとその光がやんだ。

 円柱型端末のそばにホログラムが飛び出す。

 「草薙司令官?」

 ソヴァルが首をかしげる。

 「順調にいっているようね。ヴァイワムス議員、クマラ議員、吉田博士と合流したのは報告に入っている。そのままセンチュリー号に機材を載せてサッカラに行って。ミラー大佐の方はトブルク司令官から指令が行くと思う。説明は以上である」

 草薙が説明する。

 「了解」

 ソヴァルとシエナは答えた。



 ギザ三大ピラミッドのあるカイロから南に一〇キロ進んだ先にサッカラはある。

 エジプトにある広大な古代の埋葬地であり、古代エジプトの首都だったメンフィスの「死者の都」だった。サッカラには多数のピラミッドがある。中でも有名なジェセル王のピラミッドは、その形状から階段ピラミッドとも呼ばれる。他にもマスタバがいくつかある。カイロから南に三〇キロほど行ったところにあり、七キロ×一・五キロほどの領域をサッカラと呼んでいる。サッカラという地名は、エジプトの葬祭神ソカル に由来すると言われている。サッカラでも最古の切石積みの建築物がジェセル王の階段ピラミッドで、第三王朝の時代に建てられた。他に十六人のファラオがここにピラミッドを建てたが、それらの保存状態は様々である。歴代の王朝はここに何らかの埋葬記念碑を追加していった。王家以外の重要な墓もあり、信仰儀礼はプトレマイオス朝時代や古代ローマ時代も含め三〇〇〇年以上も続いた。

サッカラの北にはアブシール、南にはダハシュールがある。三大ピラミッドのあるギザからダハシュールまでの地域は、古代エジプトの様々な時代のメンフィスの住民が死者の都として使用した場所である・

二〇二〇年十一月、約二五〇〇年前に埋葬された一〇〇基以上の木棺を見つけたと発表した。未盗掘で保存状態も非常に良く、当時の富裕層が埋葬されたものと推測されている


 

センチュリー号はサッカラピラミッド遺跡群から少し離れた場所にある目的地に着陸した。目的地の発掘現場には車やトラック、バスの他に数多くのエジプト人たちがスコップを持って掘っていた。

後部ハッチから機材をフォークリフトを使って降ろすカイル、ヨセフ、マグー。

機外に出て野外テントに近づくミラーたち。

「複合ピラミッドや階段ピラミッドとちがってなんかギザのピラミッドの小型版がある」

 ソヴァルは指をさした。

 「すごい現場だね」

 感心するデグラ。

 受付テントでタブレット端末に腕輪端末を接続して機材リストを送信するソヴァル。

 「周辺に数百人の現地のハンターと応援のハンターがいますね」

 シエナが周囲を見回す。

 「コブラアイの協力がなければ実現はできなかったからね」

 吉田がわりこむ。

 「話を持ってきたのは誰ですか?」

 ミラーがたずねる。

 「イブラヒム・コックス博士。エジプト考古学庁の長官よ」

 吉田はテントにいた初老のエジプト人を紹介した。

 「ミラー大佐。考古学庁のイブラヒムです。あなた方の事は聞いています」

 流暢な英語でイブラヒムと名乗ったエジプ人男性は握手した。

 「よくレイダーやロードランナー、ミュータントを追い出せましたね」

 ミラーは声を低める。

 「コブラアイやハンター協会の協力がなければ不可能だ。そこの異星人ハンターに感謝しないといけない」

 イブラヒム博士は笑みを浮かべる。

 「アンドロメダ人のハンターもだいぶいるわね」

 驚くグレース。

 「背が高い」

 感心するソヴァル。

 アンドロメダ人とはアンドロメダ星雲からやってくる異星人たちである。その中の惑星アンドロスとその周辺の惑星に住む異星人は身長三メートルを超える。容姿は人間にそっくりだが身長でバレる。

 「なんだか狩猟戦闘種族や戦闘種族のハンターもだいぶいるね」

 ヨセフとマグーが声をそろえる。

 「高次元生命体のハンターも混じってる」

 カイルが指摘する。

 「これならたいていのレイダーやロードランナーは来ないわ」

 吉田が満足げな顔で言う。

 「五年前からこの周辺のミュータントやグールも退治したんだ」

 イブラヒム博士は遠い目をする。

 「スカベンジャーやガンランナーが何人かいるな」

 如月は物売りをしている何人かの男女を指さした。

 スカベンジャーとは廃品回収や物売りをしたり運び屋もやる便利屋である。いつも作業服姿に軽装備のアーマーを着用している。

 ガンランナーは武器工場で生産された武器を売り歩く連中である。治安が悪くミュータントやグール、モンスターが出没する地域に武器工場や事務所を構えている。

 どっちもクリムゾンキャラバンやダンバースエクスプレスと提携している業者だ。

 ソヴァルは発掘現場に近づいた。

 「そこの少年!端っこに立たない。階段を使って」

 メガネをかけた黒人男性が声を荒げる。

 「すいません」

 ソヴァルはあわてて階段を降りた。

 「あなたは?」

 アンナと京極が駆け寄る。

 「つい声を出して申し訳ない。ガレット・マクナマラです。アメリカから来ました」

 ガレットと名乗った黒人男性はアンナや京極、ソヴァルと握手をする。

 「アメリカのどこですか?」

 アンナがたずねる。

 「僕はロズウェルのエリア51からです」

 ガレットは答える。

 「シドもそこから来たというのを聞いた事がある」

 ソヴァルは首をかしげる。

 ぜんぜん気にした事がなかった。一五〇年前から以前からUFOで有名な場所だった。しかし世界崩壊後は基地と周辺の街や村を要塞化した。西海岸都市同盟では一番中枢部で大きな組織である。アメリカには西海岸都市同盟と中西部都市同盟、五大湖都市同盟、東海岸都市同盟がある。

 「歴史学者でありエンジニアでもある」

 メガネをづり上げるガレット。

 「ピラミッドの中には入れるのですか?」

 ソヴァルがたずねる。

 「入るわよ」

 吉田がわりこむ。

 「案内する」

 促すイブラヒム。

 ついていくソヴァルたち。

 発掘作業をするスタッフが行き交う中を進み、ピラミッドの入口に入った。通路は崩れておらずしっかりした石組みで造られている。

 回廊を抜けると教室が二つ入りそうな部屋に入った。壁や天井に壁画がびっしり描かれている。

 「すごい・・」

 絶句するセシル。

 壁画はここだけでなく隣りの部屋も似たような構図になっている。

 「このピラミッドだけクフ王ピラミッドの小型版になっていて周辺の複合ピラミッドや階段ピラミッドとも違う。お墓ではないようなんだ」

 イブラヒムは柱に描かれている絵を指さす。

 「これなんか侵入者に似ている」

 ヨセフとグレースがあっと声を上げる。

 柱にあったのは不定形な人型生命体である。

 「こっちの柱はクロノスだ」

 シエナは声を低める。

 別の柱には異様に肌が白くスキンヘッドで黒色のサイバネテックスーツを着ている異星人が描かれている。

 「クロノス?」

 聞き返すソヴァル。

 「はるか大昔。僕たちを仲たがいさせて戦争を起こさせたうえで惑星を盗った奴ら」

 シエナは柱の絵をにらむ。

 「はるかな昔やってきた時空侵略者たちはレプテリアンやドラゴたちを連れてきた。レプテリアンは地下深くにアジトや拠点を造って権力者をたぶらかし支配。子供たちを拉致してそれを喰らっていた。ドラゴも支配した植民地惑星から奴隷を連れ去り、食用にもしていた。圧政に苦しんでいた人々は立ち上がり、反乱を起こして戦った。その輪は広がり大きな戦争になった」

 指さしながら翻訳するイブラヒム。

 「三大ピラミッドやハトシェプストとはだいぶちがう内容よ。時空侵略者に付き従う異星人もいるみたいね」

 吉田は首をかしげる。

 「これを見ると地球と太陽系は奴らの植民地で奴隷市場が天の川銀河にいたる所にあった。それをクリスタルに選ばれた人間とその仲間が解放していく話になっている」

 ガレットはクリスタルを掲げる人物を指さして説明する。

 「大昔も今も連中はロクな事はやってなくてクズね」

 吐き捨てるように言うグレース。

 「異世界から異世界へ行っては時空侵略者たちは自らの野望をかなえるために資源を奪うがレジスタンスや対抗するチームや組織ができてその度に追い出されている」

 イブラヒムは説明する。

 「同じことをやっているのか」

 納得するヴァイワムスとクマラ。

 「年代としては今から二万五千年前~三万年前ってとこね」

 吉田がわりこむ。

 「今まで埋まっていたのにそれが掘り出される事例があってナスカピラミッドもそれに入る」

 ガレットが写真を見せる。

 「ナスカってペルーの?」

 京極がたずねる。

 「ペルーの都市同盟から頼まれて調査した。このサッカラの壁画と似たような事が描かれていた」

 うなづくガレット。

 「この壁画は?」

 タリクがたずねる。

 壁画にはイルカやクジラを思わせる海洋生物が海岸に打ち上げられて座礁している構図になっている。

 「デスストランディングね」

 黙っていたルミナスが口を開く。

 「レジスタンスを結成するきっかけが度重なる海洋生物の座礁。そしてこれは拉致された子供たちを生命のエキスにして権力者たちに売っているね」

 難しい顔をするイブラヒム。

 「大規模な戦争が終了して時空侵略者たちを追い出した後、クリスタルはどこかに隠され選ばれた者はどこかへ去りチームも解散したとある」

 ガレットが口をはさむ。

 「僕はエアーズロックでガイアからクリスタルと時空コンパスをもらった」

 ソヴァルはペンダントと羅針儀を見せる。

 「私は高位の高次元生命体から琥珀クリスタルをもらった」

 「僕は異世界の地球から来た。来る前に師匠から譲り受けた」

 グレースとロドリコがペンダントを見せる。

 「あなた方の資料を見たと。ロドリコさんがいた世界は核戦争で崩壊していないのだね」

 イブラヒムは感心する。

 「何度も危機はありましたけどなんとかそれでもやってこれたと思う」

 どこか遠い目をするロドリコ。

 「でも今になってなんで遺跡が出てきた?」

 ミラーとタリクは首をひねる。

 「たぶん封印が解けたんだと思う。世界崩壊して一五〇年経って動き出したのはチャンスだと思ったからだよ。それにこの絵なんかなんとなく宇宙船っぽい」

 ソヴァルは核心にせまる。

 なんとなく直感で言っただけだ。確信はあるわけではない。

 「こっちの部屋には謎の絵がある」

 ガレットが手招きする。

 「ドームに覆われた都市がある」

 ヨセフが指さす。

 「もしかしたらタンガロアとバルボアかもしれない」

 デグラが推測する。

 「この都市を造った者たちは時空侵略者の口車に乗せられてピラミッドを建造した。これを作動すると渦巻きが生まれる?」

 吉田が首をひねる。

 「作動させるには専用のキューブが必要である。造ったのは時空侵略者の口車に乗せられて造った者たち」

 イブラヒムは絵をたどりながら説明する」

 「時空侵略者たちに共通するのは自分の住んでいた惑星に資源が少ないか寿命を迎えていてやむなく他の異星人をそそのかして資源を奪う連中になった」

 クマラが核心にせまる。

 「または際限のない野望を抱いて闇に落ちた者たちだ」

 ヴァイワムスが指摘する。

 「キューブなんてどうやって探す?」

 如月が聞いた。

 「さっき話にあったナスカピラミッドに行ってみませんか?南米の都市同盟の支部に行ったついでにその遺跡に寄ってみませんか?」

 ソヴァルがわりこむ。

 「ナスカピラミッドは埋まっているのも含めて三〇基以上ある。レイダーやミュータントの襲撃に警戒しながらやっているからなかなか進まなくてね」

 ため息をつくガレット。

 「どういう状態なのか調査しないといけないわね」

 グレースがうなづく。

 「それにクリスタル関係の物はクリスタルに選ばれた者でしか見つけられない」

 ロドリコが口をはさむ。

 「私はここを離れられないから吉田博士。この人たちと行ってくれないか?」

 イブラヒムは肩をたたく。

 「わかりました」

 うなづく吉田。

 「ナスカピラミッドに行くしかないな」

 ミラーは言った。



 一時間後。サッカラの発掘現場の駐車場からセンチュリー号が離陸した。

 カイルとマグーは操縦席で操縦桿を握り、モニターに目配せする。

 「ペルーまでタクシーを頼めるとは思わなかった」

 ガレットはシートベルトをする。

 「ナスカにそのまま行くの?」

 ソヴァルが聞いた。

 「ナスカのコブラアイに行く」

 ミラーがタブレット端末から顔を上げる。

 「ワープするからシートベルトね」

 カイルがわりこむ。

 センチュリー号が青色の光に包まれワープする。次の瞬間、リマ沖の海上に姿を現した。

 海上を抜け砂漠地帯に入る。しばらく行くと都市を守る高い壁が見えた。

 

 

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