第8話 ガイア

 四時間後。医務室

特殊能力者用モジュールで覆われた医務室に入ってくるクマラ、マリア、ヴァイワムス、アルダーの四人。

部屋にはグレース、ロドリコとミラー、シエナと一緒にシド、ワジリーがいる。

専用カプセルにソヴァルが寝ている。

「睡眠モードになっている」

シドはモニターを指さした。

画像に「雪風」と戦闘艇とソヴァルの本体である胴体の状態が表示されている。後頭部、背中、両胸と腹部、わき腹、太もも、二の腕にケーブルが接続されている。

メリメリ・・・

肉が割れ骨が軋むような耳障りな音が聞こえて胸から臀部までのプロテクターの厚さが歪みながら増していく。背中のプロテクターも同様でわき腹の厚さも増す。腰椎と腹部から鉄の前掛けが足先まで伸びた。同様の鋼板は肩から後頭部まで亀の甲羅のように覆う。

呼吸の度に厚さ一〇センチのプロテクターが上下する。

「全部「雪風」の船殻だ。本体の胴体は戦闘艇の船殻で覆われ重要な機器は守られている。「雪風」と融合する以前から彼はこんな感じだね」

シドは見下ろす。

「・・まだ子供だな」

ヴァイワムスは腕を組む。

「彼はまだ十五歳だ」

ミラーはため息をつく。

シドはソヴァルの胸のプロテクターを押す。

手跡がつくほど深くへこみシワシワになる。

ミシミシ・・

プロテクターや体内から金属がこすれ合うような音が聞こえた。

「草薙司令官たちや他のメンバーにも言ったのだが最近になってインテリジェンサーやレプテリアンの活動が活発になっている。それは他の宇宙海賊やレギオンにも言える」

ヴァイワムスは重い口を開く。

「今までは海賊やロードランナーが単独で出没する事はあっても数千のグループとか三〇のグループになる事はなかったな」

ミラーが思い出しながらうなづく。

「奴らの狙いは地球にある「アースクリスタル」だろう」

アルダーが核心にせまる。

 「アースクリスタル?」

 ミラーが聞いた。

 「私とロドリコが持っているのと同じパワークリスタルよ」

 グレースが答える。

 「それが地球にあるの?」

 シエナが聞いた。

 「彼はクリスタルのエネルギーに反応する。従来の心臓のままだと耐えられなかったが「雪風」と融合してそのエネルギーにも耐えられるようになった事を意味する。クリスタルはエアーズロックにあるとされる」

 クマラは世界地図を指さす。

 「オーストラリアにあるのは知っている。先住民アボリジニーの聖地だ」

 ミラーがうなづく。

 「現地のスタッフの話では精霊をよく見るのだそうよ。白い動物がよく目撃されている」

 マリアは白いネズミや白色のカンガルーの写真を見せた。いくつかの写真の中には紅色の直径一〇センチの綿毛が映っている。

 「ガイアスの狙いもクリスタルだと見ているがクリスタルは選ばれし者でしか触れられないし、その力は選ばれし者でないと発揮されない。私たちやガイアス、インテリジェンサーも扱えない宝だ」

 アルダーは説明する。

 「でもクリスタルに選ばれると敵からも狙われやすくなるの。この子は「雪風」と融合した。敵勢力のマシンミュータントやレギオンからも狙われる確率が高くなるの」

 グレースが重い口を開く。

 「マシンミュータントも魔術が使える?」

 ロドリコが聞いた。

 「彼らのほとんどが使えるけどレギオンは使えない。僕も使えないけどソヴァルも使えないから弱点を突いてくると思う」

 シエナが懸念する。

 「ただ銀河連邦や他の組織の保護下にある太陽系をわざわざちょっかい出すマシンミュータントや海賊はいない。よっぽど腕に自信のある連中しか来ない」

 クマラが腕を組む。

 「雪風と戦闘艇とこの子は切り離すと元に戻れるが今までの能力は失われるのか?」

 ミラーが核心にせまる。

 「雪風と戦闘艇の動力をこの子と共有している。完全に切り離す時は寿命をまっとうするか、隠居生活に入った時だよ。それまではヤドカリ生活だ」

 シエナは視線をそらす。

 「クリスタルの所有者で操れてその上、宇宙戦艦なら奴らにとっても魅力的だろうね」

 ロドリコは難しい顔をする。

 「それも大型艦ならより強いエネルギーにも耐えられるけどオーバーヒートに気をつけないといけない。あまり使いすぎてもこの子のコアと雪風と戦闘艇の動力、エンジンに大きな負担がかかる。最悪の場合死にかけるという事もあるだろうね」

 ヴァイワムスが表示板に表示される雪風の動力部とエンジンを指さす。

 「マシンミュータント、ジプシー専用の訓練施設を地球とアノマリー基地に造らないといけないね」

 アルダーが口をはさむ。

 「それはそちらで考えて」

 グレースがしれっと言う。

 「明日、オーストラリアのコブラアイ基地に出発だ」

 ミラーは言った。



 翌日。舞鶴基地のヘリポートからアントノフ224が離陸した。ヨセフたちがハノイのラジオステーションに行くときに使った改造機である。機内にはスパルタンナイトのメンバーであるミラーたちが乗っている。

 「この貨物機には名前がないの?」

 ソヴァルがヨセフに聞いた。

 「そうだな・・・センチュリー号はどうだ」

 マグーがひらめく。

 「それもいいかもしれない」

 グレースがうなづく。

 「いいよ」

 アンナや京極はモニターをチェックしながらうなづいた。

 「先代の雪風のデータにアクセスしたんだ。先代の雪風は第二次世界大戦で日本海軍が所有する駆逐艦で最後まで生き残ったんだね」

 ソヴァルは腕の端末から映像を出した。

 「日本は敗戦だったけど「雪風」は幸運艦と呼ばれ被弾らしい被弾はなく生き抜いて戦後は台湾に売却されて「丹陽」という艦名になりそこで廃艦になった。スクラップになったけど舵輪は横須賀基地にあるんだ」

 モニターを切り替える如月。

 地図には関東一円は海面上昇でほぼ水没しているがそれ以前は一五〇年前の崩壊により首都一帯は消滅して輝きの海になったが水没した事によって船舶や艦船が東京湾に入れるようになり、横須賀基地が再建されて日本とアメリカで併用している。再建といってもメガフロートをいくつもつないでその上に成り立っている。

 関東一円は水没したが横須賀基地が再建された事によりメガフロートや石油プラットフォームがいくつも集まっているのが衛星写真でも見えた。

 「東京周辺は立入禁止で水没しても放射能濃度が濃いから入れない。いつかきっと再建してみせるさ」

 如月はフッと笑う。

 「できるよ。僕の母さんの故郷だ」

 ソヴァルは深くうなづく。

 座標を入力するカイル。

 センチュリー号は日本海上空でワープした。

次の瞬間、シドニー沖に姿を現す。高度を下げて接近する。

 一五〇年前の世界崩壊でパース、ケアンズ、キャンベラといった大都市が壊滅して輝きの海になったがシドニーは奇跡的に壊滅しなかった都市の一つである。しかし海面上昇で沿岸部が水没。観光名所のオペラハウスや歴史的な他の建造物も七〇メートルの高台に移転。人々はメガフロートや石油プラットフォームをいくつもくっつけてその上で生活している。

 水上都市から離れた内陸部にあるヘリポートに着陸するセンチュリー号。

 格納庫と三階建ての官舎が見えた。

 機内から出てくるミラーたち。

 「ようこそシドニー基地へ。オーストラリア都市同盟軍長官のカリストです。隣りはコブラアイオセアニア方面司令官のデビット」

 女性将校は名乗ると敬礼する。

 ミラーたちも敬礼する。

 「あなた方の事は聞いています。基地へ案内します」

 デビット司令官は促した。

 官舎に入るといくつかの部屋を抜け長い廊下を抜けてエレベーターに乗った。

 「舞鶴基地と同じように地下ですね」

 京極がたずねた。

 「地下二五メートルの場所にある。いろいろ機密が多いからね」

 カリストが答える。

 エレベーターを降りるとロビーを抜けNASAにあるような管制室に入った。部屋には人間のスタッフと一緒に異星人スタッフも忙しく行き交っていた。

 スクリーンに地図を出すデビット司令官。

 オーストラリアの衛星画像が出る。沿岸部は海面上昇で水没。南部に位置するアデレートやポートオーガスタとその周辺三〇〇キロ四方は水没していた。


 エアーズロックがあるのは、オーストラリアのほぼ中央に位置し、ノーザンテリトリー、ウルル-カタ・ジュダ国立公園内に存在する。

西オーストラリア州にあるマウント・オーガスタスに次いで、世界で二番目に大きな単一の岩石である。「世界の中心」という意味合いで「大地のヘソ」もしくは「地球のヘソ」と呼ばれることもある。

外観は鉄分が酸化した赤色を呈している。太陽の当たり方で色が変わって見え、朝陽と夕陽により赤色がより鮮やかになる。ウルルは岩盤が長期的に削剥され形づくられたもので、標高八六八メートル、周囲は九・四キロである。表面には地層が表れ、地表からほぼ垂直に無数の縦じまを形成している。


「エアーズロックを管理しているアボリジニーによると最近になってこのような綿毛が落ちているそうだ」

カリストは透明なカプセルに入った虹色の綿毛を見せた。

思わずソヴァルは耳をふさいだ。

ひどい耳鳴りとノイズがたくさん入ってきてたくさんの声が電子脳に入ってきた。映像に虹色に輝くクリスタルの結晶が入ってくる。

「どうしたの?」

アンナが聞いた。

「虹色のクリスタルがエアーズロックにある。それが僕を呼んでいる」

ソヴァルは顔をしかめ頭を押さえる。

でもその声は泣いている。映像が切り替わり時空ポータルとキラキラする輝きが内部にあるという映像になった。

カリストはあわてて遮蔽装置の中に入れる。

とたんにその映像や声も消えた。

「大丈夫か?」

シエナが聞いた。

「共鳴している」

グレースとロドリコは声をそろえ、アビスアイと琥珀クリスタルを出した。

二つの結晶は青白く輝いている。

ソヴァルの電子脳にフッと別の映像が入ってきた。エアーズロックへ向けてロードランナーとミュータント、グールの集団がモンスターを連れて向かっているという映像だ。

「隊長。ミュータントの集団がモンスターと一緒にエアーズロックへやってくる」

ソヴァルはスクリーンのエアーズロックを指さした。

「何ィ!」

カリストとデビットが驚く。

どよめくスタッフたち。

「カリスト長官。偵察兵の報告では砂漠の大砂丘にミュータント、グール、ロードランナー、モンスターが集結中との事です」

オペレーター席の兵士が報告する。

「アリススプリングス基地で合流後、攻撃に移る」

デビット司令官が声を荒げる。

「よし出発だ」

ミラーがうなづく。

「了解」

ソヴァルたちも駆け出した。



アリススプリングスはオーストラリア北部にある都市でエアーズロックとは目と鼻の先の距離にある。一五〇年前までは観光業で栄えていたが世界崩壊後は北部のダーウィンやシドニーといった生き残った街、村や都市で同盟を組んでいた。日本やバイカル湖都市同盟と同じように五メートルの壁に囲まれその壁には砲台や機関砲が装備されていた。

上空にワープアウトするセンチュリー号。

「西の方角から敵の集団が接近。上空からドラゴンと怪鳥ラドン接近」

カイルが報告する。

「ドラゴン?」

 聞き返すミラーたち。

 「敵の集団に召喚士がいるみたいだな。ドラゴンは魔物で全長は三〇〇~四〇〇メートルだ」

 ヨセフは難しい顔をする。

 スクリーンに立派な角を生やし恐竜トリケラトプスのような頭部。紫がかった体色のドラゴンが映る。

 「フォレストドレイクだ。高度な召喚士がミュータントの集団にいるとは思えない。できるのは時空侵略者だ」

 ロドリコが腕を組む。

 「我々が地上の集団を基地の兵士たちとなんとかする。ソヴァル、グレース、シエナ、ロドリコはドラゴンと怪鳥ラドンの退治だ」

 ミラーは指示すると貨物室にある装甲車に乗り込む。

 アンナ、京極、如月、タリク、セシルが乗り込むと後部ハッチが開いて装甲車が飛び出す。しばらくするとパラシュートが開き降下していく。

ソヴァル、シエナ、ロドリコ、グレースは後部ハッチから飛び出す。

緑色の蛍光に包まれソヴァルとシエナは戦闘艦に変身した。

砂漠に着地する装甲車。後部ハッチからフワッと浮かぶアンナ、京極。

如月は駆け出した。

装甲車の左右側面の機関砲座に座るセシルとタリク。

低空で侵入するセンチュリー号

濃密な砂煙を上げて接近してくる車両集団が見えた。まともな車両はなくツギハギだらけの装甲トラックや手作り装甲バギー、バス、バイク、車だらけである。

基地の方から複数のミサイルが発射され、正確に大型車両に命中して爆発。何台ものバスやバギーが横転した。

センチュリー号の機関砲が火を噴く。青色の何条もの光線がミュータントやグールの体を貫いた。

装甲車を運転するミラー。

セシルとタリクは機関砲を操作する。青色の光線が何条も発射される。

如月は二本の日本刀を抜いてパッと動いた。

ミュータントやグールたちの目にはその姿は見えなかった。砂煙が舞い上がった瞬間には袈裟懸けに斬られ倒れていた。

立ち止まる如月。その足元には数十人のミュータントやグール、モングレルの死骸が転がっていた。

如月は再び駆け出した。

空を舞いながらアンナは掌底から炎を放射し、京極の周囲では吹雪が舞った。

何台ものバスやバイク、車が燃え上がり、一方ではバギー、装甲車が凍結した。

掌底をモングレルや狼もどきといったモンスターに向けた。オレンジ色の光線が一直線になぎ払った。

ロドリコは掌底を向けると赤色の魔法陣が出現。オレンジ色の光線が周辺にいたモンスターたちを一瞬にして黒焦げにした。

ドラゴンは口から赤い光線を噴いた。

雪風とロゴスはエンジン全開でかわす。

ドラゴンの一匹が飛びかかる。

 雪風は船体側面のミサイルを発射。

 飛びかかってきたドラゴンだけでなく接近してきた数匹のドラゴンに命中。ウロコが飛び散り体を穿って撃墜した。

 ロゴスは船体側面からミサイルを発射。接近してきた一〇匹の怪鳥ノドンを撃墜した。

 雪風はとっさに錨で殴った。陽炎から飛び出した銀色のトンボは砂漠に激突した。

 「レギオンだ!」

 ロゴスことシエナが叫ぶ。

 赤色の輪っかが出現して銀色のタガメやテントウムシに似た物体が数十匹飛び出す。度の物体にも黒色の幾何学的模様が入っている。

 格納してあった二基の主砲を撃つ雪風。

 正確に飛びかかってきたテントウムシとタガメの体を青色の光線が何条も貫き、爆発して吹き飛ぶ。

 ロゴスのミサイルが砂漠に落ちたトンボに何発も命中して爆発した。

 グレースはオレンジ色のオーラで全身を包むとスーパーマンが飛ぶスタイルで突進。別のタガメの体を貫通。タガメは四散した。

 雪風の船体に飛び乗る銀色のクモ。全長は一〇〇メートルある機械クモだ。

 クモの複眼が雪風の艦橋をにらんで前足で艦橋をつかむ。

 電子脳にたくさんのノイズと雑音が入ってくる。雪風は二対の鎖を船体から出して先端を義手に変形させてクモの前足をつかむ。

 「仲間になれ!」

 クモは電子音声で叫ぶ。

 「やだ!」

 雪風が叫ぶ。

 二匹のトンボが雪風の船体に噛みつく。

 「ぐあっ!」

 船体を激しく揺らす雪風。

 電子脳に船体が受けたダメージが痛みとして変換され、損傷個所が表示される。

 ロゴスのミサイルが命中して二匹のトンボは爆発した。

 グレースの突進。クモの体をオレンジ色の光が貫いた。

 正気に戻ると雪風は船体側面のミサイルを発射。クモに命中して四散した。

 ロドリコは掌底を向ける。赤色の魔法陣からオレンジ色の太い光線が接近してきたタガメの体を貫通した。

 雪風は赤色の渦巻きに向けた。渦巻きは描き消えるように消滅する。

 はるか後方の基地で機関砲や機関銃、ライフル銃のかわいた銃声が聞こえていたがそれもやんでいく。

 しばらくするとミュータント、グール、モンスターの集団は散り散りになりクモの子を散らすように逃げて行った。

 「こちらミラーだ。我々はこのままエアーズロックへ向かう」

 ミラーの声が入ってくる。

 「基地へ帰らなくていいのですか?」

 雪風は疑問をぶつける。

 「後始末はアリススプリングス基地とコブラアイと都市同盟軍がやるそうだ」

 タリクがわりこむ。

 ミラーたちが乗る装甲車に接近するセンチュリー号。後部ハッチへ装甲車が入った。

 艦首をエアーズロックの方向に向ける雪風。

 二隻に接近するセンチュリー号

 しばらく行くと巨大な岩が見え、そのすぐ頭上で青色の渦巻きが見えた。

 「エアーズロックの頭上に高エネルギー反応を確認。時空ポータルです」

 カイルが報告する。

 「・・星が呼んでいる」

 吸い寄せられるように接近する雪風。

 「よし。突入するぞ」

 ミラーは声を張り上げる。

 「了解」

 雪風たちは答えると青色の渦巻きの中へ飛び込んだ。次の瞬間、洞窟の中に姿を現した。

 大型コンテナ船が二隻入るほどの大きさの岩肌むき出しのトンネルが続いているが先に進むにつれて大きさもコンテナ船一隻分の大きさになりせまくなっているようだ。

 緑色の蛍光に包まれて雪風とロゴスは縮小して姿が崩れ元の姿に戻って後部ハッチから機内に入った。

 トンネル内を進むセンチュリー号。

 しばらく進むとトンネルの大きさが大型旅客機分の大きさになり出口が見えた。その出口を抜けると体育館が四つ分入りそうなドーム状の広場に出た。

 着陸するセンチュリー号。

 機外に出るミラーたち

 広場中央に燭台がある。

 広場にはたくさんの人魂のような物が飛び交っている。

 「オーブがこんなにたくさん」

 グレースとロドリコは周囲を見回す。

 「このオーブ。鏡みたいに何か映ってる。天使や妖精やら映ってるけど何?」

 セシルが指をさした。

 「精霊や高次元の生命体だよ。私たちにわかるように出現している」

 ヨセフが答えた。

 「敵はいないわね」

 カイルやマグーは銃をしまう。

 ルミナスとデグラは周囲を見回す。

 「ユニコーンが映ったオーブもある」

 アンナが怪しむ。

 燭台から青色の渦巻きが出現して鏡が出てきた。鏡に女性が映る。

 「誰?」

 如月と京極が身構える。

 「地球意識だよ。地球が僕たちにわかりやすいように出てきているんだ」

 ソヴァルは口を開いた。

 「我はガイア、テラ、アースと呼ぶ者がいるがそれぞれに呼び名はある」

 その鏡の女性は名乗った。

 「地球そのものなのか?」

 ミラーとタリクが驚く。

 「そうみたいね。私が琥珀クリスタルを受け取った時もこんな感じで出現した」

 グレースは腰の手をあてる。

 「君が出会ったのは別の上位の高次元生命体だがここにいるのは地球そのものだね」

 うーんとうなるロドリコ。

 「ここに集まった者たちに告ぐ。時空侵略者が侵入している。時空遺物や古代遺跡から遺物を取られないようにしなさい」

 鏡の女性は話を切り出した。

 「ガイアよ。インテリジェンサーやディープビジョンの事ですか?」

 ミラーはたずねた。

 「今言った者たちの他にも時空遺物、古代遺跡の秘められた力を自分の物にしたい者は星の数ほどいる。雪風。あなたはその力で彼らと戦う事になる」

 ガイアは語気を強める。

 「雪風は融合した船の名前だよ。僕はソヴァルです」

 戸惑うソヴァル。

 「あなたは船の名前でこれから呼ばれる事になる」

 ガイアの顔から笑みが消える。

 「もうマシンミュータントとジプシーと同じ扱いですか」

 シエナは疑問をぶつけた。

 「戦闘艦と融合したならその艦名で銀河連邦や他の勢力にも知られる事になる」

 ガイアははっきり言うと頭上に世界地図を出した。

 「モンゴルで敵の集団を追い返し、南シナ海で海賊集団を追い返し、海南島で敵の施設を見つけて破壊。ハノイで「雪風」と融合。その力で月や地球の周回軌道にあった宇宙機雷や中継基地を見つけ、この地で敵の集団と一緒に来たレギオンも倒した。もう充分に知れ渡っている」

 ガイアは映像を切り替えながら指摘する。

 「実績を作ったと言いたいのですか?」

 京極がたずねた。

 「エネルギーを感知できて敵を見破れて「解き放つ」能力があればそれを活用したいと考える者は多い。その船は精霊と話ができるようになる。そして敵の本拠地をいつか見つける」

 ガイアはビシッと指をさす。

 「インテリジェンサーを見つけて本拠地を見つけるのが最優先の任務だからね」

 グレースがわりこむ。

 「たとえ目的の敵を見つけても終わりではない」

 ガイアはピシャリと言う。

 「あの遺跡で出会った高次元生命体も似たような事を言ってましたね」

 グレースが腕を組む。

 「僕の師匠は先代の師匠から同じような事を言われて引き継いだ。つまり「光と闇」の戦いは終わりがない。でも僕たちは寿命があるから次に引き継ぐ者が現れるまでその宝を守るのが仕事だと言っていた」

 ロドリコが核心にせまる。

 「戦闘艦「雪風」受け取って」

 ガイアは厳しい口調で言うと燭台のフタを開けた。中に小さな羅針儀と虹色のクリスタルがあった。

 「船の名前でずっと呼ばれるのは嫌だな」

 ソヴァルはため息をつくと燭台に近づいて虹色のクリスタルと羅針儀をつかんだ。せつな、電子脳に水滴が水面に落ちて円状の波紋が広がるという映像が入ってきて彼の体を虹色の光が包んだ。

 「水の波紋が広がるようなそんな映像が入ってきた」

 ロドリコとグレースが声をそろえる。

 「僕もその映像が入ってきた」

 戸惑うセシル。

 「雪風。行きなさい」

 ガイアは言った。

 すると広場も燭台も洞窟も消えて自分たちはエアーズロックの麓に立っていた。

 

 

 

 


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