第4話 15歳の決断 つづき
「これが配送端末なんだ」
驚くソヴァル。
薬代支部長は腕時計型の端末を渡す。
「基地の隣りに配送倉庫があるんですね」
冷静なシエナ。
「すごい配送倉庫ね。全部自動のオートメションでスタッフは受付だけなんだ」
感心するアンナと京極、如月。
「うちのとはえらい違いだ」
タリクとミラーはうーんとうなづく。
「フォークリストも荷物運搬するのもロボットでドローンが飛び回っている」
ロドリコは倉庫内をのぞく。
「プレアデスもそうだけど銀河連邦や銀河連合といった組織の配送倉庫はだいたいこんな感じね。ほぼ無人でアンドロイドが受付して警備ドローンが徘徊する。公営の配送業者はほぼ無人で配送だけど地球みたいに海賊やモンスターが出没する場所はもっぱらハンターに頼むの。そういった危険地域は地球だけでなく宇宙のあっちこっちにあるからそれを請け負う専門業者がいる。それがダンバースエクスプレスなんだけどね」
グレースが説明する。
「じゃあ地球はその支部にすぎない?」
如月が聞いた。
デグラがうなづく。
「荷物は食料と生活物資でハノイに運ぶんだけど車とか船はあるの?」
ソヴァルはホログラムリストをのぞく。
「プレアデスの貨物船ならあるけど。といっても中古で見た目が地球の貨物機そっくりなタイプ」
グレースが窓の外を指さした。
「え?」
へリポートにアントノフ224貨物機が駐機している。一五〇年前は数機しかなく大型すぎて長い滑走路がないと飛べないという代物だった。
グレースは手招きする。
ついていくミラーたち。
「どっから見てもアントノフ224にしか見えない」
首をかしげるミラー。
「中味は別物よ。反重力システムで離着陸やホバーリングが可能。戦闘機並みの速度で飛行が可能。宇宙に飛び出ても大丈夫な仕様になっている。改造したのはうちのチーム」
グレースは自慢げに言う。
「異星人が出てきた」
セシルが指摘する。
機内から出てくる三人の男女。
一人目は女性で触覚が頭にあり皮膚は青色で銀髪。二人目は人間に容姿がそっくりだけど腕が四本ある男性の異星人である。三人目は浅黒い肌に銀髪のがっちり体系の男性の異星人である。
「触覚があるしこっちは腕が四本でもう一人は東南アジアかインド系だ」
困惑する如月たち。
「うちのチームってここに来る前はこの人たちとチームを組んでいた?」
ソヴァルが聞いた。
グレースはうなづく。
「リゲル人で物資・食料調達担当のカイル・デュラス。ミンタカ人で修理担当のマグー・ロレンス。シリウス人のヨセフ・グルース。彼は情報・ハッキング担当」
グレースが紹介する。
ミラーとナンツは握手をする。
「この貨物機二階があるよ」
如月、アンナ、京極が驚きの声を上げる。
「ロシア語でも英語でもないよ」
タリクは首をかしげる。
「フォレスタルもそうだけどこの機体もやっぱり異星人の技術だね。違和感が半端ない」
ロドリコが難しい顔をする。
無人のフォークリストがコンテナを運んできて貨物室に収めていく。
「運搬スタッフと配送スタッフは僕たちがやる」
マグーが積み荷リストを見ながら言う。
「乗ろう」
手招きするグレース。
一階の貨物、武器庫スペースから二階の座席スペースとミーティングルームと操縦席がある。操縦席にマグーとヨセフが座り、機器を操作する。
「オスプレイやそこらの船とは違うな」
困惑するミラーとタリク。
複雑な機体コントロールはすべてAIがやるのか計器類がコンパクトにまとめられて見やすくなっている。
「新幹線の運転室を見ているみたい」
京極が首をかしげる。
一五〇年前は日本の新幹線の技術は世界トップレベルだったが世界崩壊と同時にそれも機能停止した。現在でもその技術は生きていて精密機械や発電所や造船に生かされている。「雪風」だけでなく「赤城」「加賀」「雪風」と試運転中のもう三隻の精密機器やエンジン部分は日本製である。
荷物の運搬が終了したのかフォークリストが貨物室から出ていくと、後部ハッチが閉まり貨物機が上昇。機首をハノイに向けた。
「この貨物機も「赤城」と同じようなエネルギーを使っている。エネルギーの波に乗っている」
ソヴァルは破顔する。
「エネルギーの波?」
首をかしげるミラーとタリク。
「エネルギーも海流のように波があるの。うまく波にのれば時空の扉も超えられる」
グレースがしゃらっと言う。
「本当?」
目を輝かせるソヴァル。
「それは可能だが悪用する連中から守るのが我々時空管理局の仕事なんだ」
ラミナスがわりこむ。
「君は謎の発電施設のコアリアクターを見つけて破壊した。君はエネルギーの漏れや波を感知できる。そして奴らの偵察兵を見つける能力がある。金属生命体でそのような能力を持つのは君が初めてでね」
デグラは説明する。
「シエナの種族にもない能力だからもっと活用したいんでしょ」
しれっと言うアンナ。
「君もはっきり言うね」
ため息をつくデグラ。
「あのマリアという異星人もそうだけどあの子のパワーは魅力的で来ている。いざ来てみたら地球は問題だらけだった」
京極が核心にせまる。
「ここで揉めるのはよそう」
タリクが割って入る。
「ご搭乗の皆様、当機はまもなくハノイのラジオステーションに到着します」
カイルは機内アナウンスで報告した。
窓からのぞくミラーたち。
貨物機は石油プラットフォームのヘリポートに着陸した。
機外に出てくるミラーたち。
後部ハッチが開いてカイル、マグー、ヨセフはフォークリフトを使ってコンテナを降ろす作業を始める。
階段を降りて管理センターに入るソヴァルたち。
「ハノイラジオステーションへようこそ。所長のトラントです」
中年のベトナム人が事務所から出てくる。
ソヴァルは事務所にある円柱型の配送端末に腕時計をかざす。ものの一〇秒で送信完了した。
「薬代支部長からあなた方の事は聞いています。ここに出没する海賊やミュータントを退治してくれてありがとうございます」
トラント所長は頭を下げる。
「あれは成り行きでそうなった」
ミラーは声を低める。
「海南島はもともと中国軍の潜水艦隊基地でしたが今では海賊の巣屈です。ミュータントとグール、モンスターは水没した香港の方角からやってくるそうです」
地図を出して説明するトラント所長
「彼らは謎の発電所があるのは知らないのですか?」
タリクがたずねる。
「知らないみたいね」
それを言ったのは京極である。
「え?」
「生き残った海賊に発電施設の事を聞いたら不審船を見るけどあるのは知らなかったみたいなの。住みついた海賊によると、先祖が言うには、基地内は高濃度の放射能で汚染されていて誰も住めなかったから汚染の少ない地上でアジトを造ったようね」
タブレット端末を出す京極。
「じゃあ僕たちが行った時はたまたま出払っていて無人だったんだ」
納得するソヴァル。
「そんな無人にするだろうか?」
うーんとうなるミラー。
「留守番の部隊は少なくとも残すのに予定があっていなかっただけかもよ」
如月が怪しむ。
「さっきの襲撃と二回の爆発でアジトからたくさんの海賊が逃げていくのを漁師が見ているから今は無人だね」
トラントが地図を指さす。
「誰が高濃度の放射能の基地にコアリアクターなんか置いたんだ?」
デグラが首をかしげる。
「インテリジェンサーかもよ。何かの拠点を造っていてそこを足がかりに襲撃を考えていたけど失敗した」
グレースが推測する。
ソヴァルの電子脳にクジラやサメのモンスターの群れと一緒にプテラノドンのような大型翼竜のモンスターが海賊と一緒に大挙してやってくるという映像が入ってくる。
ソヴァルは窓の外をのぞいた。耳に不協和音のノイズがたくさん入ってくる。
「どうした?」
ミラーが聞いた。
「海賊集団とモンスターの群れがここにやってくる。怪鳥ノドンの群れも一緒だ」
ソヴァルは声を上げた。
「何ィ!!」
驚きの声を上げるミラーたち。
「所長。ここのスタッフは何人?」
ロドリコが聞いた。
「五〇人」
所長が答える。
「こちら貨物機のカイル。レーダーに多数の船影が二時の方向から押し寄せてくる」
通信装置に割り込むカイルの声。
「雪風を呼ばないと我々では対処できない」
ミラーが難しい顔をする。
「こちらカイル。北の方向から多数の船影とモンスターを確認」
カイルが報告する。
「ここからスタッフを避難させないと無理だ。それに雪風や赤城がいなければ掃討作戦ができない」
タリクがレーダーをのぞく。
「私たちが乗ってきた貨物機に乗って。完了まで私たちが迎撃する」
腹を決めるグレース。
「総員退去。ヘリポートの貨物機で脱出だ」
トラント所長は警報のスイッチを押して英語で通信マイクごしに声を荒げる。
「シエナ。僕たちで食い止めるぞ」
ソヴァルとシエナは駆け出し海に飛び込む。
「所長。警備艇を借りていいか?」
ミラーは聞いた。
「構わない」
うなづくトラント。
ミラーたちは管理室を飛び出し桟橋にある警備艇に乗り込む。
グレース、デグラ、ルミナスも二隻目の警備艇に乗り込んだ。
緑色の蛍光に包まれて潜水艇に変身するシエナとソヴァル。
四隻はラジオステーションを離れた。
しばらく北上すると怪鳥ノドンの群れが見え、海上を大小の船舶が航行する。
怪鳥ノドンは鳥類が放射能の影響で巨大化して大昔の翼竜のようなモンスターに進化した。翼長は三〇メートルでクチバシには鋭い牙が生え、性格は狂暴で肉食だった。
グレースはフワッと浮かぶと掌底を前に突き出す。
急降下してきた六匹のノドンの体を黄金色の光線が貫いた。
警備艇を操縦するデグラ。
ルミナスは掌底を前に突き出すと虚空から機関砲を出した。彼女はその機関砲の引き金を引いた。
青色の光線が何条も連射され、大型漁船に乗っていたグールやミュータントたちは打たれ、海に落ち、船尾にあるエンジンを貫通して動かなくなった。
アンナは空を飛びながら炎を発射した。
焼かれて海に落ちていくミュータントたち。
如月は飛び降り駆け出した。水上を駆け抜け、ライフル銃を連射。
撃たれて海に落ちていくグールたち。
ロドリコは緑色の魔法陣を出した。
海賊たちが連射した機関砲やライフル銃の銃弾は警備艇の手前ですべて弾かれた。
魚雷を発射するノヴァルとシエナ。
接近してきたクジラのモンスターの群れに正確に命中。撃沈した。
警備艇の機関砲を連射するセシル、京極、タリクとミラー。
「こちら貨物機のカイル。ステーションのスタッフを全員収容した。今から離陸する」
カイルからの通信が入った。
チラッと見るタリク。
ヘリポートから離陸して離れる貨物機が見えた。
「こちら「雪風」である。今からモンスターと海賊の掃討を開始する」
山口艦長の声が通信装置から聞こえた。
飛翔音が響いて上空から「雪風」の船影が現れた。赤色の船底にカモノハシのような艦首。龍のヒゲのような艦首両舷にある二基の強化ショックキャノン砲が見えた。
「やっときた」
タリクが指さした。
「これなら掃討作戦ができる」
うなづくミラー。
ミラーたちの真上を通過して海に着水すると右舷側の機関砲が火を噴いた。何条もの青色の光線に大小の船舶の船体を穿った。ミサイルで何匹もの怪鳥を撃墜していく。
ほっとするミラーたち。
浮上する二隻の潜水艇。
海賊たちはあわてて逃げ出した。
怪鳥の群れもクジラの群れもクモの子を散らすように逃げていく。
ソヴァルは頭をハンマーでたたかれるような痛みにくぐくもった声を上げる。フッと映像が入ってきて黒色の輪っかが虚空に出現して銀色のトンボのような物体とタガメに似た形態の大型の物体が三体出現した。
「レギオンだ!」
シエナとグレースが叫んだ。
ロドリコは緑色の魔法陣を出した。
銀色の物体は口から赤い光線を発射した。
しかし手前で爆発した。
「偵察兵がやってくる」
出し抜けに叫ぶソヴァル。
「え?」
ソヴァルは「雪風」に接近して元の姿に戻ると後部甲板の格納庫に飛び込んだ。
シエナはとっさに格納庫に入る。
「敵が侵入した」
ルミナスとデグラは銃を抜くと格納庫にテレポートした。
格納庫に六人のオレンジ色の戦闘スーツを着た偵察兵が倒れていた。
「ソヴァル。どうやって気づいた」
デグラが聞いた。
「あの「輪っか」が出現したと同時にひどいノイズが入って映像が入ってきた」
ノヴァルは核心にせまる。
「それは「ビジョン」だ。クリスタルに触れる以前から持っている能力が進化したみたいね」
ルミナスが推測する。
「偵察兵がCICに侵入した。山口艦長と草薙司令官を狙っている」
ソヴァルは艦内図を見ながら言う。
「CICにテレポート」
ルミナスはうなづくと青色の光にソヴァルたちが包まれた。次の瞬間、戦闘指揮室に姿を現した。
忙しく行き交う乗員たち。
ソヴァルは片腕を銃身に変形させ早撃ちガンマンのような銃さばきで連射。
天井に張りついていた陽炎が揺らいでオレンジ色の戦闘スーツを着た兵士が落ちてきた。
どよめく乗員たち。
「偵察兵」
絶句する山口と草薙。
どこかで爆発するような轟音が響き、艦内が大きく揺れた。
「こちらロドリコとグレース。敵の攻撃が激しい。相手は狂暴な機械生命体で好物は人間や異星人だ。マシンミュータントもジプシーも喰う連中だ」
グレースが艦内通信に割り込む。
「こちらミラー。警備艇大破」
ミラーの声がわりこむ。
「本当の敵がやってきたわね。でも黒幕は高見の見物をしていてやってきたのは下っ端だけど」
草薙が舌打ちする。
「レギオンは普通の船も平気で襲って融合する。奴らは惑星から惑星へ渡り歩いてイナゴのように資源を喰い尽くす。または惑星を巣に改造する」
ルミナスがホログラムを出して説明する。
「そんな生命体がいるのか」
驚く草薙と山口。
「・・・僕がこの船と融合して奴らを追い出す。本当の敵はレギオンを煽っている奴らだ。そうしないと迫る危機を脱出できない」
腹を決めるソヴァル。
自分の心臓はこの船の動力に反応している。
「冗談だろ」
山口が耳を疑う。
「地球にはマシンミュータントがいない。なら僕がなるしかない。モンゴルや海南島で襲撃してきた集団はただの寄せ集めにすぎない。でも今度やってきたレギオンも先兵にすぎない。黒幕もいるだろうし本当の敵もいるかもしれない。本当の敵は、インテリジェンサーもレギオンやマシンミュータントを使って襲ってくるなら僕がこの船と融合するしかない」
真顔で声を荒げるソヴァル。
「わかった。それに賭けてみよう」
深くうなづく山口。
「年々、敵の襲撃がひどくなりモンスターも大型化。マシンミュータントの艦船のウワサ。なるほどね。本当の敵は先兵や下っ端を送り込んで様子を見ているのだろう。でもそうはさせないし計画を潰してやるわ。普通の艦船では対処できないわね。ましてや地球は問題を抱えすぎている。だから認める。行きなさい」
草薙は真剣な顔で肩をたたく。
「総員退去!」
山口は声を荒げ、副長たちに指示を出した。
「ソヴァル。今さらだけど僕たちの戦争に巻き込んでごめん」
シエナが視線をそらす。
「敵がどんどん強力になってきている。本当の敵や黒幕もいつかやってくる。僕の能力が役に立つなら受け入れるしかない」
真剣な顔になるソヴァル。
どこかで爆発音が聞こえた。
「機関室に案内する」
シエナは艦内図を見てあごでしゃくる。
ソヴァルとシエナは忙しく行き交う乗員たちの間隙を縫うように駆け抜ける。
「脱出ポットが出てきた」
警備艇にいたミラーたちは振り向く。
グレースが警備艇に舞い降りる。
格納庫から輸送機や戦闘機が次々離陸して飛び去って行く。
接近してくる内火艇。
「みんな乗って」
側面ハッチが開いて草薙が顔を出す。
「何が起こったのですか?」
ミラーがたずねた。
「あの子はあの船と融合して奴らと戦う道を選んだの。我々はあの子を支援する事になるわね」
何か決心したように言う草薙。
「わかった」
ミラーはうなづくと乗り込む。
顔を見合わせると乗り込む京極たち。
ソヴァルとシエナは機関室に入り、エンジンルームに入る。乗員は退去して無人だがコブラアイの制服を着た女性兵士がいる。
「船魂(ふなかい)だ」
シエナがあっと声を上げる。
「え?」
「船が建造された瞬間から宿るもの。それが船魂だ。漁船や客船にも宿るといわれている存在だ」
シエナが説明する。
獲物を狙うような目つきでにらむ女性兵士。
「雪風の船魂だね。僕はおまえの力を借りに来た」
身構えるソヴァル。
シエナと船魂が同時に動いた。
ソヴァルは駆け出し動力炉の内部に飛び込んだ。せつな、閃光とともに衝撃波が広がり、シエナは船外に弾き飛ばされた。
急激に強風が吹いて、それが竜巻のように吹き荒れると同時に、稲妻を伴う青色の光が大きくなり「雪風」全体を包んだ。
「なんだ!あの光は?」
ミラーたちが叫ぶ。
「融合の光だ。シエナの種族・・・宇宙ジプシーもマシンミュータントも融合する時に出す光だ」
冷静なデグラ。
青色の光柱ははるか天空に伸びた。
雪風の船体が陽炎のように揺らぎ、耳障りな軋み音が響いた。
しばらく輝いていた青色の光がやみ「雪風」が吠えた。それはオーボエのような獣のような吠え声だった。
艦橋の窓に二つの輝く光が灯り船体から太い連接式の金属の触手が六対飛び出した。太さは大木のように太く小型船ほど普通の鎖にように細い。見た目も鎖のように見えるから鎖である。
ソヴァルは精神を武器システムに振り向けた。両舷の船体から対艦ミサイルがいくつも飛び出し、タガメに似た物体に全部命中した。
格納されていた二基の主砲が顔を出して火を噴く。青色の太いビームがくだんの物体を貫通。閃光とともに爆発して四散した。
艦首の錨を発射する「雪風」
向きを変えたトンボの羽に命中。思いっきり艦首を振る「雪風」
遠心力で引き寄せられ、ソヴァルは二対の鎖でトンボの体を突き刺し、先端部を鉤爪に変形させてコアをもぎ取った。
トンボは吠えると閃光とともに爆発した。
艦首を黒色の輪っかに向けるソヴァル。
輪っかは陽炎のように揺らいで消えた。
ほっとするソヴァル。
でもすごい疲れた。大きな岩が自分に乗っているかのような倦怠感がきた。
雪風の船体が緑色の蛍光に包まれて縮小して元の姿に戻るソヴァル。
接近する内火艇。
シエナはソヴァルの腕をつかみ引っ張り上げた。
「ただでさえ手こずるレギオンを倒したわ」
絶句するグレース。
「同じレギオンでもあの三匹は下っ端だ。次がやってくる」
冷静なルミナス。
「基地へ戻ろう。融合の苦痛がもうすぐ襲ってくる」
シエナは言った。
マニラ基地。
格納庫にある特殊能力者用モジュールに担架を運び入れるシエナとグレース。
担架にはソヴァルが寝かされている。
簡易ベットを運び入れる如月、シド、ワジリー。
ソヴァルを担架から簡易ベットに移した。
「融合の苦痛はそんなに激しいのか?」
ミラーが聞いた。
「宇宙船と融合した時は特にね。マシンミュータントはそんなに回数は少ないけど僕たちの場合はヤドカリのように船から船へ移るから激しいんだ」
シエナは視線をそらす。
「なんで連中がこの子や宇宙ジプシーを狙うのかわかる気がする」
京極が納得する。
「う・・・うう・・」
ソヴァルはくぐくもった声を上げた。
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