プロローグ(後編)

GM:光に包まれた君たちが次に気づいた時に立っていたのは、深い、深い、森の中。キョロキョロと周りを見渡し、警戒するも、周囲に今のところなんの気配もなく、静寂を森が包んでいます。

レイン:オルソラも一緒にいる?

GM:もちろん。周りを見回していますよ。

ユズハ:まだ引っ掴んでいますか?

GM:さっきの体勢のままですから掴んでいます。

ユズハ:じゃ、木にダンッと押し付けます。「貴方は、いったいなんのつもりでこんなことを……!」

オルソラ:「あら? 神官にそれを……貴男が問いますか?」

GM:「お前にだけはいわれたくねーよ」という顔をしています。

ユズハ:「信ずる神に仕えるは神官の本望。だがそれはすべて生きて命あってこそ。このような自殺まがいの行為の果てに、信仰など見いだせるか!」

オルソラ:「お告げがあればこそです。神の下した試練には、立ち向かうべきではないでしょうか?」

イキシア:「わ、わわ、わー!? わー!!??」自分も一発殴ろうと思っていたが、目の前でガチで怒ってる人を見てひゅっと縮み上がる。「せ、先生、暴力は……きもちはわかりますけどっ、暴力はだめなのです!」

レイン:「二人とも落ち着けって」

ミミ:「そっスよ。来ちゃったもんはしゃーないっス」

ユズハ:仲間たちに取りなされるなら手を離します。

レイン:「オルソラ、別に死にに来たわけでも、俺ら殺しに来たわけでもねえんだよな?」

オルソラ:「すべては神の思し召しのままです」

GM:ニヤニヤしたまま告げますね。

レイン:「それじゃあわからねえ。神が殺せって言ってるのか、死ねって言ってるのか?」

オルソラ:「そこまでは人の身にはわかりかねます。しかし、奈落の魔域にハルーラが導いたのです。この奈落の魔域を攻略せよということでは?」

レイン:「OK、なら力を貸してくれ。知ってること、洗いざらい話せ」

オルソラ:「……いいでしょう。ここまで来た以上、隠す必要もありません」

GM:オルソラは説明してくれます。


スカボローのハルーラ神殿の神官は、定期的にあるお告げを受けます。

それは「オルソラが見た夢と同じものである」と神官長から言われたそうです。

しかしその事は神官長以外の神官は知りません。

なぜなら、その夢のお告げに従って旅立った者は誰一人として帰ってこなかったからです。

過去にはオルソラと同じように冒険者を雇ってむかった者や、また本人が冒険者だった者もいたそうですが、その後は誰一人として戻らず。

神託について疑われる事を心配した神官長によって、口外は禁止とされました。

300年近く昔からスカボローの神官にくだされる神託であることと、また何度も同じ神託がくだされることから、「過去の誰もが失敗したのだ」と、そうスカボローのハルーラ神殿は判断しています。

今回もオルソラが夢をみたことを神官長に告げた時、行く事を反対されました。

しかし。


オルソラ:「我が身はハルーラに仕える神官です。神官長より神の意思に従うのが筋ではないでしょうか」


GM:そう思って神殿を抜け出してきたのだと、そうオルソラは告げます。そして、誰も帰ってきたことがないとはつまり、この先どうすればいいのか、オルソラも知らないということです。説明は以上でした。

イキシア:「戻って、こなかった……?」震える。

ミミ:「……300年前って、大破局の頃じゃないっスか。途方もないっスね……」

レイン:「それでお告げにいた冒険者を見つけて、追っ手に追いつかれる前に遺跡にたどり着いて、目的を果たしたと。とんだラッキーガールだな、あんた……」

オルソラ:「これもすべて神のお導きでしょう」

GM:相変わらずニヤニヤしています。

オルソラ:「しかし、どうしましょうか。まさか森のど真ん中だとは想像していませんでした」

レイン:「とりあえず、拠点になりそうな場所探そうぜ。休む場所確保できないとつらい」

イキシア:「……そうですね。そうしなきゃ……どうしようもないです」

ミミ:「先人が、何か残してくれてると良いんスけど……」

GM:見渡すばかりの森です。

レイン:「……大丈夫か、イキシア?」

イキシア:「い、いや、えっと……だ、だいじょぶ……だいじょぶです……」と言いつつ、ぎゅっと服を握り締め……て、耐えきれなくなったのか、ぽろっと片目から涙がこぼれました。

ミミ:「ま、きっと何とかなるっスよ。おねーさんもおにーさんもいるっすから」

イキシア:「…………はい、みなさんつよいから…大丈夫……大丈夫、ですよね? ミミさん」

レイン:ぽんと頭叩く。「そ、ミミの言う通りみんないる。まだおわっちゃいねーさ。」

イキシア:「ミミさん、レインさん、せんせぇ……」

レイン:「で、その強い俺たちはお前のことを頼りにしてる。みんなで協力して生きて帰ろうぜ」

ミミ:「そそ。イキシアとダニィがいなきゃ、困るっスから」

イキシア:「……はいっ」 ぐしぐしと目をぬぐって、頷く。


GM:ふぅー! 驚いてくれると嬉しいぜ。しかし強引にPCを納得させる手段として「神のお告げです」の威力はんぱねーな。

ユズハ:ははははは。狂信者め。

GM:いいぞー褒め言葉だ

レイン:神様こえーーわ 。

ミミ:これだから神は。

イキシア:こわ……ちかよらんとこ……(なお強制的に近寄らせられている様子)

GM:神様が怖くないわけないんだよなぁ(日本神話)これだからファンタジーはやめられねぇ!


レイン:「よし! まずは森を出てみるか、慎重に」

オルソラ:「とは言っても、見渡す限り森ですが」

ユズハ:「……ここが山であるなら、高いところに登るのが鉄則なのだが……」

GM:平地です。

ユズハ:どっちにいけばいいみたいな感覚って全くなさそうですか?

ミミ:探索とか足跡追跡とかでなんかわかんないですかね?

レイン:川の音とかそういうのも聞こえないかな。

GM:川と探索、足跡判定か。ではそれぞれ振ってみよう。冒険者+敏捷判定と探索判定と足跡追跡判定でそれぞれ目標値15 / 15 / 8 で。

一同:(ころころころころ)

GM:OK、冒険者と足跡追跡に成功したな。ではまず、周囲一帯を確認した君たちは「近辺に足跡が全く見当たらない」事がわかる。

ミミ:なるほどー! そりゃ簡単ー!

GM:そして、ミミとイキシアはルーンフォークの性能ゆえか、川の流れのような音を聴く。かすかだが、これは川の段差を流れ落ちる滝のような……。

ミミ:「……ん。向こうの方、聞こえたっスね」

イキシア:「水不足はまぬがれるかもです! こっちです!」

レイン:「すっげえな! 俺なんもわかんなかったのに、さすがだわ」

GM:君たちはミミとイキシアの先導に従って歩く、歩く、歩く。原生林の様相を呈した森の中は、三日月湖周辺に輪をかけて歩きにくい。オルソラも息が上がってくる。君たちもしんどい。

イキシア:歩きながら一瞬だけRPいいですか。

GM:どうぞ。

イキシア:では、てくてく歩きながら「あの。先生」と、ユズハの袖をくいくい引っ張る。

ユズハ:「どうした?」きょとんとして振り返ります。

イキシア:「あの……あの……。……あいつに怒ってくれて、ありがとうでした。先生が怒ってなかったら、イキシア、ダニィになにさせてたかわかんなかったです。あのときは、先生らしくないって思って、止めましたけど。でも、ありがとうだったのです。こわくて、それで……こわかったから……だからあの、ありがとうでした」

ユズハ:ちょっとむう、って恥ずかしそうな顔をします。

イキシア:「それだけなんですけどっ! ……それだけ、です」

ユズハ:「いや、その……別に、あれは褒められたようなものではない。神官としては失格と言ってもいい行為だ」ちょっと視線そらしてます。「だが、仲間にそう言われたら、少しばかり自分を肯定できるかもしれないな。礼を言う」

イキシア:「…………じゃ、じゃあ、いっぱいほめるので、いっぱい肯定してください!」

ユズハ:「………………そういうのは、慣れてないんだ。やめてほしい」

イキシア:「やめないので。じゃあ、休憩挟んで褒めに来ますね」だんだん自分もちょっと恥ずかしくなって、そのまますすすすーっと離れていきます。

ユズハ:敏捷値6の差を使って置き去りにします。恥ずかしすぎて逃げた。

イキシア:「あー!!!」

レイン:「お前ら、ペース乱すと疲れるぞ?」何もわかってない男。

ミミ:「二人ともまだまだ元気っスねぇ。ほら、オルソラさんも行くっスよ?」

オルソラ:「……っはぁ、ええ、しかし、流石にきついですね。まだ遠いですか?」

ミミ:「どっスかねー。もうすぐだと思うっスけど」

GM:滝の落ちるような「ゴゴゴゴ」という音は次第に大きくなってきていて、もう全員に聞こえるくらいになっています。1時間もしないうちにたどり着くのではないだろうか。

イキシア:思ったより滝!

レイン:「ま、お前さんの場合自業自得だしな。頑張ってついてきてくれ」

GM:更にしばらく歩けば、ようやく森が途切れている場所が見えてきました。目的地の川のようです。水音もすごいことになってます。大声で話さないと聞こえないレベル。

レイン:「すっげえ……」

ミミ:でかーい!

イキシア:思った以上の滝だー!!

GM:川の全景はある程度見えています。大河と言っていいでかさ。まず日本では見れないサイズ。瀬戸内海とか言われちゃうやつじゃない? って感じ

レイン:水綺麗?

GM:綺麗。

レイン:じゃあ思わず見とれます。

イキシア:とりあえずダニィにお水のませて、水袋にお水入れときます

GM:左手に滝が見えますね。右手が下流のようです。大きな高さの滝ではないです。ガクンと段差になっていて、水が落ちてる感じ。それでも数メートルは落ちてると思ってもらえれば。

オルソラ:「はぁ、生き返る」

GM:オルソラも水飲んでます。

イキシア:「(ぷす)……だれかさんのせーで、大変なんですから。サバイバルです」

オルソラ:「神に見初められた試練ですよ。精々立ち向かってください」

GM:ニヤニヤしながら言い返します。

イキシア:「きー!!」

ミミ:「はいはい、落ち着いたらにするっスよー」

レイン:「オルソラも、煽んな」

オルソラ:「さて、この後はどちらへ?」

GM:下流か、上流か。

レイン:「あー。川沿いに街があると賭けて、降りてみるか?」

ミミ:「ま、そうっスね。上流になにかがあるとも思えないっスし」

ユズハ:「どの道滝の上に向かうのは骨だ。下っていくことに反対はしない」

レイン:「んじゃ、少し休んだらまた動くか」

オルソラ:「わかりました。私達にハルーラの導きがあることを期待しましょう」

GM:君たちはしばらく休憩した後、下流に向かって川沿いを歩いていく。決して流れが穏やかとは言えない川なので、あまり川に近寄り過ぎないように注意しつつ、しばらく歩をすすめる。森の夜は早い。そろそろ明かりが必要かと、君たちが思い始めたころ。

???:「止まれ! お前らなにもんや!」

GM:冒険者風の男が飛び出してきます。

イキシア:「ひ、人がいる……」(ビビってる)

レイン:「冒険者だ」

???:「冒険者……? 新入りか? お前ら、ここがどこかわかっとるんか?」

レイン:「奈落の魔域って聞いてる」

???:「……ほお、その割には落ち着いとんな。ベテランには見えんが……」

イキシア:「怒ったり混乱したり喧嘩したりは、もうさっきみんなですませたのです」(ちょっと赤くなる)

???:「ここに来たんはいつや? そんなに前とちゃうやろ」

ミミ:「2~3時間前ってくらいっスかね……?」

イキシア:「えーっと、たぶんそれくらい…? お水の音聞いて、てくてく歩いてきたのです」

???:「……ほんまに、ほやほやの新入りかいな。それでわいに会えるとは、運がええのか悪いのか……」

GM:といって、男は警戒を解きます。

ガオウ:「わいはガオウ。冒険者や」

レイン:「ここにきて生き残ってる冒険者の先輩、でいいか?」

ガオウ:「生き残っとる、か。せやな、わいの事はそれでええ……。お前ら、この奈落の魔域がどのくらい前からあるか知っとるか?」

レイン:「300年、とか」

ガオウ:「……わかっとって来たんか? それとも外でここの事がついに突き止められて、なんぞ動きでもあったんか?」

イキシア:「いや、その……」と、ちらっとオルソラさんを見て「……だまされたんです、こいつに!」(きっとにらみつける)

オルソラ:「神の導きで、この地へ」

GM:すましてます。

ユズハ:「合っているけど、おちつけ」イキシアをどうどうします。

イキシア:「うー……」(どうどうされる)

レイン:「かくかくしかじか」ということで話してしまおう。

ガオウ:「その聖印は……ハルーラの神官か……。そうか、それで冒険者連れてきたんか」

レイン:「で、先輩。よかったら先に休める場所があるなら案内してもらえないかな。話ならそっちでしたい」

ガオウ:「ああ、せやな。ここの事も教えたらんとな……。おっしゃ、着いて来い新入りども。このガオウがしばらく面倒見たる」

ミミ:「恩に着るっスよ~、先輩。全く分かんないっスけど」

ガオウ:「お前らにも働いてもらわなあかんしな」

ユズハ:「働く……?」

ガオウ:「ああそうや。冒険者やったら駆け出しや言うても戦えるやろ……。……ここじゃ、『戦わな生き残れへん』のや」

GM:ガオウはそういって、君たちを案内しました。



GM:川沿いにどんどん下り、夜になり、松明に明かりを点け、まだ歩く。森は一向に途切れる事がない。一体どれだけ巨大な森なのか。

ガオウ:「もうじき着くで。近場に出てよかったなお前ら」

GM:ガオウが指し示す先には巨大な木が生えています。どうやらそこを目指しているようです。

ミミ:「近場……?」

ユズハ:「どれだけ広大な森なんだここは……」

レイン:「森しかないのかもな」

GM:木に近づくとわかります。あちこち明かりがもれないように目張りしてありますが、木を利用したキャンプ地になっているようで人の気配があります。

イキシア:「……わぁ!! 街? です!!」

ガオウ:「ガオウや! 戻ったで! あと、新入りを見つけた!」

GM:ガオウが声をかけると、木の一部の帳が開けられたのか、光が漏れてきます

GM/住人:「遅かったなガオウさん。新入りを見つけたって? それはまた運のない連中だ」

GM:中にいるのはガオウと同じく冒険者のようです

ガオウ:「言うたるな。それでもこっちに合流できただけましやわ。それに今日来たばっかりらしい」

GM/住人:「……そりゃ運がいいのか悪いのか。村まで連れて行くのか?」

ガオウ:「ああ、今日はもう遅いからこっち泊まるわ。明日準備して村のほうへ連れて行こうと思う」

GM/住人:「ああ、あっちのほうが安全だからな」

GM:ガオウは君たちを中に案内してくれます。広い拠点というわけではありませんが、君たちが全員横になって眠るくらいはできそうです。

ガオウ:「飯、用意したるわ。いうてもここで食えるんは、保存食か自分で狩った獲物くらいやけどな」

ミミ:「いや、有難いっス。漸く、落ち着けそうっスね」

ガオウ:「……ほんまそこだけは運ええでお前ら。わいは大変やったからな。2ヶ月くらい森の中彷徨うたわ」

イキシア:「2か月っ……!?」

ミミ:「うおっ、エグ」

ガオウ:「ま、待っとれや。あと、できたら外の話、聞かしてくれや」

GM:そういってガオウは保存食を持ってきてくれます。そして一緒に食事をしながら彼自身の話をし始めます。


10年前にスカボローで冒険者をしていたこと。

ある日、三日月湖まで仲間と探索に向かうことになった事。

真新しい遺跡も見つからず、「今回は外れだ、街に戻ろう」となったところで、急に周囲が霧に包まれた事。

霧がオーロラのように輝いたと思ったら、この魔域に取り込まれていた事。

仲間とさまよい歩き、なんとか人のいる場所を見つけられたこと。

大変な目にあったが、それでも人と出会えた自分達が幸運であったこと。

そして、過酷な環境に敗れ、もう仲間は誰も残っていない事。


レイン:最後のところで呻こう。

イキシア:「じ、10年…………ずっとここで……もう誰も残ってない……」咀嚼するのを拒むように、口に出しながらふるふると首を振る。

ガオウ:「……ここな。この奈落の魔域はな、蛮族が支配しとるんや。森側に出てきたお前らはまだマシや。蛮族の街の近くや、奴隷農場、砂漠や雪原あたりに出たら、蛮族の奴隷になるか野垂れ死ぬしかない」

ユズハ:「ま、待て。どれだけ広いんだ、ここは……?」

ガオウ:「ん? ああ、それを説明してなかったな」

GM:ガオウは一拍おいて、君たちに告げます。

ガオウ:「ようこそ新入り、三日月島へ。こんなんで恐縮やけど、歓迎するで」

GM:そういって彼は、一枚の地図を君たちに指し示すのでした。(MAPをドン)

ガオウ:「この島の大きさはな。三日月湖そのものや」

GM:非常にでかい湖です。具体的には、現実で世界地図見て「湖あるな」って解るレベル。

ミミ:カスピ海とか……そういうサイズ……。

ユズハ:「……は?」

ミミ:「そりゃ、凄い……。ちょっとした大陸レベルっスね」

イキシア:「……あの、三日月湖と同じって、具体的には?」

ユズハ:「そう……だな。馬で行ったとしても、一周するには何日……いや、一月……?」

イキシア:「……! ……?????」最早規模が大きすぎて脳で処理できない!!

レイン:「……奈落の魔域って拡大するって話だっけ。300年もあればでっかくもなるか」

ガオウ:「せや、この魔域な。どんどんでかなっとるらしい。そんで、今おるんが、ここ」

GM:森の中にぽつんとある、赤いテントのマークを指し示します。

ガオウ:「お前らを連れて行こうっちゅー、人族の隠れ里が、ここ」

GM:地図右端。山に囲まれた場所にある村のマークを指します。

ガオウ:「この真ん中のでかい街が、蛮族共の街」

GM:中央の、壁に囲まれた街です。

ガオウ:「南東の、橋でつながっとるちっさい島にあるんが、『魔王城』ってうちらは呼んどるとこや」

イキシア:「魔王城!?」

ガオウ:「なんでも、この魔域の蛮族を従えとるんはディアボロらしい。聞いた話で、わいもほんまかどうかわからんのやけどな……。それと、南西には平原。ここにあんのは奴隷農場。人族が奴隷にされて農業とかで働かされとる。うちらの仲間には、街や農場から逃げ出してきた連中もおるんや。わいらみたいに外から来た連中と、ここで産まれたやつが入り混じって、な」

ミミ:「……」

ガオウ:「西の砂漠。こっちは魔神が住み着いとるらしい。『魔域の守護者』ってやつやろな。蛮族どもとも敵対しとるが、いかんせん砂漠や。簡単に乗り込めへん」

レイン:「……」

ガオウ:「北の雪原。ここは年中雪が積もっとってな。大昔は、人族の領域やったみたいや。この廃墟のマークな。ほんまに廃墟なんや……」

ミミ:「……成る程っスね」

ガオウ:「地図は以上や。多分やけど、この魔域は世界最大級の大きさやと思う。うちらは、そこでまぁ、レジスタンスみたいなことをやっとる。蛮族どもから人族を助けたり、戦えんもんは農業したりしてな。奈落の魔域の攻略自体はもちろん諦めとらん。けども、広すぎるんや。どこに魔核があるかわからへん」

ユズハ:「……レジスタンスの拠点近くの森に落ちた私たちのことを、『運が良い』と呼んだ理由はよくわかった」

ガオウ:「せやろ? まぁ魔核自体は多分魔神共が守っとるんやろが……蛮族共もな、本気でこの魔域を潰す気あるんかわからん。だってせやろ? ここ、下手な国よりずっとでかいで? そんなところで王様できるんや」

ミミ:「運が悪いってのは、そこっスよね……」

レイン:「『このままのほうが都合がいい』って考えてもおかしくない。それに、この世界で生まれたなら、外の世界ってほうがファンタジーなのかも……」

イキシア:「まさにファンタジィですよ……いろんなものが」

ガオウ:「人族もな……勿論300年、逃げ隠れしとっただけとちゃうらしい。ここで生まれたやつらから聞いたんやけど、昔人族が攻めいった事とかも、あったらしいわ。『魔王城まで攻め込んだ』っちゅう話で。けども、結局状態は今のままってな……」

イキシア:「…………だめだったのですか」

ガオウ:「せや。けど、根本解決のために砂漠に攻め入ろうって思うたら、どないしたって蛮族の国の近くを通るか、少数でいくしかないし。魔王城の攻略も必須や。何より奴隷にされとる奴らをほっとけん。ほんま、胸糞悪いで」

レイン:「……でも、なんとかなる可能性はあるってことだな。蛮族から人たち助けて、魔域の核みつけて壊す。帰るためにはやるっきゃないってことか」

ガオウ:「せやな。わいらは諦めとらん。いや、諦めるわけにはいかん。隠れ里にな、レジスタンスのリーダーがおるんや。今の隠れ里の場所を見つけて、人族を助け出したり保護してきた人や。うちらは今その人の下で動いとる。『アンプレゼントさん』っちゅー人でな。ミリッツァの神官や」

ミミ:「ミリッツァ……」

イキシア:ほわんほわんほわーんとミリッツァ像のことを思い出してる。

ガオウ:「おうよ。復讐の女神や。蛮族共と魔神共に目にもの見せたらんとな」

ミミ:「……ソッスネー」

ユズハ:「まあそう……だな……」複雑な顔。

ガオウ:「うん? でな、隠れ里なんやけど……守りの剣がある。せやからあそこは他に比べて安全なんや」

イキシア:「守りの剣!!」

ガオウ:「おうよ。この森は、いや、この魔域はアンデッドも出るからな。人族の成れの果てを見ると、助けられへんかったんかって思うわ……」

ミミ:「……ほんと、運が良かったっス」

ガオウ:「お前ら駆け出しか、毛が生えた程度やろ。ちっと鍛えたほうがええ。村へ明日から、案内したるわ。結構かかるけどな。わいも久々に向こうへ顔だしたいしな。長いことおると、知り合いばっかりや。まぁ、こんな場所でもみんな元気にやっとるで。さっ、湿っぽい話になってもたけどな! 明日から移動するから、今日はしっかり寝とけよ!」

GM:ガオウは急に声を張り上げます。

ガオウ:「何時までもヘタレとったらあかんで! ここでは『働かざるもの食うべからず』や!」

レイン:「おう!」

ミミ:「そっスね! 横になって眠れるって素晴らしいっス!」

ダニィ:「キュイっ、キュイっ!!」(飼い主がへたれてるので代わりに声を上げる)

レイン:「あ、ガオウさん、見張りのシフトとかあるなら一つくらい俺はいるぞ」

ガオウ:「あほ、新入りなんぞに任せられるかい! ええから寝とけや!」

GM:といって、ガオウは立ち去ります。

イキシア:「そーです、レインさん疲れてるです! 寝ましょう! 疲れて、動けなくて、いなくなるとか……やです」ガオウさんの「もう仲間みんないなくなった」話が堪えてます。

レイン:「……了解、休むよ」

GM:では君たちは、腹が膨れると横になりました。オルソラも、ガオウとの会話に口を挟む元気もなかったのか、毛布をかぶって横になります。こうして、君たちの三日月島最初の夜は老けていったのでした。

レイン:横になるとすぐに寝ちゃいそう「……6人で、生きて帰る……ぐぅ」

ミミ:スヤァ

ユズハ:暫く考え込んでから頑張って眠ります。

イキシア:疲れ切ってるから、もう不安とかいろいろあっても即スヤですね。ダニィだけが不安そうに暫く起きてる。


ユズハ:ガオウはん何歳くらいなんでしょう

GM:30半ば行かないくらい。そこそこの経験者が10年魔域にいる感じです。

イキシア:兄貴だ。みんなから見るとちゃんと兄貴。2か月サバイバルで生き残る人ですからね、当時でも慣れてたんでしょうね。

レイン:アニキぃ。死にそうでヤダ。

ミミ:ガオウはん……頼むから一緒に生きて帰ろうな……。


GM:翌日、君たちは目を覚ます。しばらくするとガオウも起きてきて、君たちのところにやってくるだろう。

ガオウ:「おう、起きとったか。今日から河を船で下るで」

レイン:「船!! のったことねえ」

ミミ:「お船っスか。初めてっス!」

イキシア:「なんということでしょう。みなさんお舟はじめてとは! イキシアはのったことありますよ! ふふん!」(なぜかいばる)

レイン:「マジか、ならイキシアに頼るしかねーわ」

イキシア:「ぴ!? え、ええ、いっぱいたよるがいいです!!」(※乗ってただけなので何も役に立ちません)

ユズハ:くす、と笑みを浮かべてみています。

ガオウ:「そんなでかい船とちゃうけどな。船大工がおって助かったわ。一気に河を下って、村までたどり着くって寸法よ。帰りはこれができるから楽でええよなぁ。朝飯用意したから、食ったらすぐ出るで。日のあるうちに距離稼がんとな。しっかり食うとけ」

ユズハ:「いただきます」

ミミ:「うーん、宿の姐さんの味が早くも恋しいっス」

レイン:「確かに……あー保存食もっと買っとけばよかったかな」

GM:君たちは食事をし、準備ができたらガオウに連れられて、船着き場へと連れて行かれる。そこには物資が載せられた船が停まっていた。

GM/住人:「ガオウさん。聞いてますよ。そっちが新入りですか?」

ガオウ:「せや、駆け出しの冒険者やったらしいから。ちと村まで案内したろと表な」

GM/住人:「はは、確かにそれならあっちのほうがいいでしょうね。まぁ乗ってください。もうじき出しますよ」

ガオウ:「おお、すまんな。お前ら! はよ乗れや!」

ミミ:「ドモ、これからお世話になるっス」

イキシア:「よ、よろしくです!」

GM:君たちが乗り込むと、船はゆっくりと出港する。安全な場所まで岸から離れると、帆を張り、加速しだす。揺れの強い海上でなく、河の上だからか、はじめて船に乗った者もいるにしては、船酔いするほどではないだろう。しばし退屈な時間を過ごすことになるが、そのまま船は河を下っていく。

ミミ:「おー、気持ち良いっス~」

レイン:「ひゃっほー」

イキシア:「よよよかった、今回は酔わないみたいです……」前にリバースした思い出。

ミミ:こいつ、そんな体たらくなくせにあんなドヤ顔を……。

レイン:「……おい、自信満々だった朝のイキシアはどこにいった」

イキシア:「べつに!! なんでもないのですよ!!!?」

ユズハ:「気分が悪くなったら言ってくれ。吐く前に治すから」

イキシア:「くぅ……最悪の場合は……お願いするです……」(悔し涙)



GM:2日目の夕方、何事もなく山のそびえる地点にたどり着くだろう。船の行き足は落ち、ゆっくりと山に近づいていく。ガオウがいうには、山の中にその先の湖とつながるポイントがあるらしい。この船はそこを通ることができるように設計されているのだと。確かに山の麓には天然の洞窟があり、船はその中を明かりを灯しながら進んでいく。洞窟を抜けた先には、山々に囲まれた湖と、そして、わずかばかりの盆地に築かれた人族の隠れ里があった。船はその村にゆっくりと近づいていく。

ガオウ:「おっしゃ! ついたで! お前ら降りぃ!」

GM:船が船着き場に停まると、待てないとばかりにガオウが飛び出していく

レイン:「うぉぉ、陸だーー」

イキシア:「た、たえ!! 耐えです!! 陸だー!!」

レイン:「最初は楽しかったけどやっぱ陸のほうが落ち着くわ」

ガオウ:「おう、とろとろすんなや! まずはアンプレゼントさんとこに挨拶や!」

GM:ガオウは君たちを船からひっぱりだすと、村のリーダーのところに案内するといいます。

イキシア:「ひええ、また新しい人に会うんですかぁ……」

ガオウ:「当たり前やろ! 世話になるんやからしっかり挨拶せんかい!」

ミミ:「怖くない、怖くない。多分っスけど」

イキシア:「人見知りには厳しい世界ですー!!!」泣きながら挨拶の文章を考え始める。

レイン:「まぁ、メインで話すのは俺らでやっから」

GM:泣く泣くダニィに運ばれるイキシアを連れ、君たちは村の中へと進んでいく。村の中では君たちを珍しげに見る人もいるが、ガオウが新入りだと説明すると納得顔で離れていく。どうやらガオウはそこそこ名前が知られているらしい。

ガオウ:「ついたで、ここや」

GM:村の奥。みすぼらしい建物が多いなか、それでも可能な限り整えられた大きい建物がある。

ガオウ:「アンプレゼントさん! ガオウです! 新入りが見つかったんで挨拶させにきました!」

GM:といって、ガオウは君たちを連れて入っていく。玄関にいると、奥から一人の女性が出てきた。

アンプレゼント:「そんなに大きな声を出さなくても聞こえますよ。ガオウさん。お元気そうでなによりです」

GM:若い女性のようだ。

アンプレゼント:「はじめまして皆さん。私はアンプレゼント。この村の村長のようなことをしています。ミリッツァに仕える神官でもあります」

GM:といって、古ぼけたミリッツァの聖印を見せてくる。

ミミ:「ちーっすっス。おなしゃーすっス」

イキシア:「は、はじ、はじはじ、はじめまして、です………」

アンプレゼント:「ああ、緊張なさらずに。外から来られたのですね。こんな場所でなんですが、歓迎しますよ」

レイン:「あ、女の人だったのか……レジスタンスのリーダーっていうからなんかこうムキムキのおっさんを想像してて」

アンプレゼント:「あら、いったいガオウさんはどんな説明を……?」

ガオウ:「ちょ、おまえ変なこというなや! なんかわいが悪いみたいやんけ!」

ミミ:「いやこれはガオウはんの責任問題っスね~」

ガオウ:「ミミ! お前なぁ!」

アンプレゼント:「まぁまぁ、ガオウさんに悪気がないのはわかってますから」

ガオウ:「ほんまでっか!?」

ユズハ:「ミリッツアを信仰できるのは、女性だけだ」とレインにぼそっと説明しておきます。

オルソラ:「……」

アンプレゼント:「そちらの男性と女の子も、神官なのかしら?」

ユズハ:「はじめまして。キルヒアを信仰しておりますユズハと申します」

オルソラ:「オルソラ。ハルーラに仕える神官をしています」

GM:君たちがオルソラの顔をみるなら、いつものニヤニヤ顔は鳴りを潜めているだろう。むしろジロジロと、アンプレゼントを値踏みするような……。

レイン:「オルソラ、どうした。普段のニヤけ面は」

オルソラ:「……失礼ですね。レディに向かって」

GM:と、レインにはニヤっといつもの顔で笑いかけます。

イキシア:「いやまあ、気持ちはわかりますけど。すごい名前ですもんね、どんな人かと思いましたもの、です」 アンプレゼント。良い意味で捉えるなら「予想できない」となりますが、他は「非実在」「与えられない」「現在のものではない」。悪い意味が、多いので。

ガオウ:「ほんで、アンプレゼントさん。来たばっかりで悪いんやけど、イリトとユウナのやつは……」

アンプレゼント:「ああ、あの二人なら今は村にいるはずですよ。イリト君は魔剣も使いこなしているようです。まこと、勇士にふさわしい」

ガオウ:「ほんまでっか。ほんなら後で顔だしたらんとなぁ。しっかし、イリトのやつは後から来てさっさとうちらを追い抜かしていきよる。かないまへんわ」

アンプレゼント:「まぁ、そんな事を言って。あの二人を連れてきてから随分気にかけていたじゃないですか。あの二人も会いたがっていましたよ」

ガオウ:「まぁ、アイツラ拾ってきたんもわいですさかい。ほんなら、わいちょっとおうてきますわ。こいつらの事、まかしてもてかまいまへんか?」

アンプレゼント:「わかりました。こちらの皆さんには私のほうから説明しておきます」

ガオウ:「すんまへん! 簡単な事はもう説明してありますんで! ほな! ……お前ら、しっかりやれよ!」

GM:というと、ガオウは足早に立ち去っていきました。

ミミ:「顔が広い人は忙しいっスねぇ」

アンプレゼント:「そうですね。ガオウさんはいつも忙しそうにしています。でも、そんな姿に勇気づけられる人も多いんですよ?」

GM:そう言うと、ふわりと頭を下げます。

アンプレゼント:「改めて、アンプレゼントです。みなさんを歓迎します」

イキシア:「はわぁあ……」

レイン:「よろしくアンプレゼント 俺はレインで、」

ミミ:「ドモ、ミミっス。ミミで良いっスよ」

ユズハ:「よろしくお願いします。そのままユズハとお呼びください」

イキシア:「よ、よろしくです。イキシアなのです」

アンプレゼント:「早速で申し訳ないんですが、皆さん、冒険者の他に何か手に職をお持ちですか? 何分ここでは職人が中々集まらず……」

GM:一般技能です。

レイン:「俺は狩人と農家、くらいかな」

ユズハ:「役に立ちそうな技能と言えば、書類仕事が少々出来るくらいでしょうか」(役人、墓守、聖職者)

ミミ:「炊事、洗濯、掃除、縫い物。種まき、水やり、家畜の世話……全部齧ったくらいっスけど」と指折り数えながら。

イキシア:「え、ええっと……ライダーギルドで働いてたんで、動物のお世話は得意です……家が商人だったので、お金の勘定とかもできます」

オルソラ:「神官ですので……神殿の祭祀関連か、癒やし手として働くくらいなら」

アンプレゼント:「なるほど、なるほど。色々できる事があって助かります。これからここで過ごしていただくにあたって、皆さんには、冒険者として以外にも働いていただく必要があります。後ほどお仕事に関しては相談させてください。専門の人間がいない分野に優先的に割り振らせていただきますが」

GM:一度言葉を切り、すっと語気を強めます。

アンプレゼント:「私達は、なんとしてもここで生き延びて、蛮族や魔神達を打倒し、彼らが支配する街を攻略しなければなりません。そう、あの『蛮都スカボロー』を」


GM:というところで、プロローグ編は終了です。

一同:お疲れ様でしたー。

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