新型コロナの置き土産(もしくは最後っ屁)・その一

 新型コロナウィルスによる、この二年以上に渡る世界的なパンデミックには、報道の筆頭に上がる飲食店・観光業・医療関係の皆さまのみならず、ほとんどの業界・職種の労働者の方々にとんでもない痛手を与えていると思う。まずは、それらすべての皆さまにお見舞いとエールをお贈りしたい。何故ならば、これから気が遠くなるような『立ち直る為の努力』が必要となるからだ。


 かく云う私も、旅客運送業故に並々ならぬ収入の激減に見舞われた。なにしろ、人が動かないとなると、両手を挙げて阿波踊りをするしかないという職種だ。緊急事態宣言下においては自宅待機が言い渡され、それなりの休業補償が為されたが、蔓延防止措置期間はほぼフル出勤だったのだ。お客さまになっていただける人々は、ほとんど出歩いていないという状況。売り上げに左右される給料形態故に、二〇二一年からこの春先までの間、『学生時代のバイトの方が、まだ遥かにマシだったのでは?』というところまで手取り給料は下がった。

 敢えて明記しておくが、最低賃金分の給料は出ていた───が、情け容赦なかったのは、いわゆる引かれものの方である。前年の所得を基準に算定される住民税・健康保険・厚生年金が主なるものだが、これが給料の三分の二を消し去るのだ。加えて所得税・共済会・雇用保険等々が引かれる。十八万の給料であれば、手取りは六万以下。十五万であれば、五万以下になるわけだ。

 更に、私にとって不運だったのは、行政によるあらゆる支援・救済・免除に該当しなかった点だろう。

 日々の生活において家計を同一にはしていないが、年金収入がある両親と給与所得がある実弟と同居している為、世帯収入で可否が決まる税金等の免除は受けられない。また、一人親世帯でもなく、扶養家族がいるわけでもないので行政の支援金は最初の十万円以外は対象外。新型コロナウィルスに感染したわけでもなかったので、これもまた以下同文。

 一方で、二〇二二年に入って、非課税世帯を対象に十万円が支給されたが、税金を払っているが故に対象外。挙句の果て、出勤してもお客さまがいないからという理由でサボっていた同僚は、非課税世帯にカウントされて十万円を手に入れ、その月には真面目に出勤していた人々以上の所得を得たという不条理さ。

 諸々のお客さまリサーチをかけた上での個人的な意見だが、日本政府の考えの浅さが露呈したこの二年余りだったように思える。

 激甚災害の時にも思っているのだが、打ち出される政策が余りにザル過ぎて、『本当は、国民の数を少し減らしたいのではないか?』という疑問すら浮かぶ。


 ともあれ、一民間人は、何とかして自助努力で立ち直って行くしかないのが現状だ。幸い、二〇二二年の春先から、多少お客さまも戻って来られたので、「頑張らなきゃ仕方ないな」と気合いを入れて腕まくりをしていた矢先、予想外の災難に見舞われた。

 切っ掛けは、新型コロナウィルスの三回目のワクチン接種であった。


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