第7話

 私は部屋で絵を描いていた。

 優しかったお母様の絵。もうこの世にはいないけど。


 お母様、私は間も無く血皇帝によって死ぬのです。多分。だって特に強いわけでもない私がわざわざかの血皇帝様がご所望なんて何か裏があるはずだもの。

 というかご所望って言い方気持ち悪いんだけど。それモノに対して言いますよね?


「ロザリー様。先程から申し上げていますがロザリー様はハリー皇帝殿下様とはお会いしたことがありますよ。」


 もう一人のメイドのシンディーが私の心の妄想に勝手に口を出してくる。


「無くってよ」

「ございます」

「そう言うならいつ!どこで会ったと言うの!」


 ドンドンドンッ


「失礼します~。ロザリー様、私が来るのが遅かったばっかりにあんな…血皇帝様と婚約になってしまうなんて…申し訳ありませんっ。ぐすんっ」


 ド天然メイド コレットの登場だ。


「別にコレットのせいじゃないでしょう。謝る事ないじゃない」

「うぅぅロザリー様ぁ~!!」

「ちょっ!!」


 抱きついてくるコレットだが、もう一人来客があった。


「ソフィーナ…」

「ロザリー様…ほんとに申し訳ありません。ダンスホールの扉が締め切られていて、コレット様からロザリー様に無実の罪を着せられていると知りなんとか入ろうとずっと扉を叩いていたのですが…。衛兵に国王陛下から私達の出入りを止めるように命じられていると言われて…」


 あの扉のものすごいドンドンドンという音の犯人はこの2人だったのか。


「ソフィーナ様、お気になさらないで。こうなるのは仕方なかったのです。」

「でも!!」


 要は余計な事を言わないようにソフィーナとコレットは立ち入りを禁じられていたのか。結局最後の最後で乱入してきたけど。


「よりにもよって血皇帝様なんかと…ほんとになんとお詫びしたら良いか…。」

「"皇帝様なんかと"とはどういう意味だ。」


 私は恐る恐る部屋の扉の方へ振り向いた。


 血皇帝がそこに立っていた。

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