第3話

ぽかんとする国王陛下、クスクスと笑う聴衆。

みんな私がパーティーなんかよりも引きこもって絵を描いていることを知っているのだ。


「嘘を言うな!!」

「嘘!?何を根拠に嘘だと仰るのですか?私が自室にいることが多く社交界に滅多に姿を現さないのは皆さんもご存知でしょう?そのお茶会で私が無視したと仰いましたけど、そもそもそのお茶会には参加しておりません。私のメイドだって部屋にいた私を見ています!」

「し、しかし…」


 その時ドアがドンドンドンッと急に音を立てた。

 ギクッとした国王陛下は側にいた家臣に耳打ちすると、


「この件について、別室で話し合う事とする。」

 と宣言すると私は勝手にその別室とやらに連れていかれた。



 私別室で処刑されるのかな…。人前で処刑するのはさすがに見せられないから?

 なんて思っていると、国王陛下、お父様、皇太子殿下が入ってきた。


「トタルス、ロザリー嬢にこの事を話していなかったのかね!」

「申し訳ございません、陛下。」

「ロザリー嬢、君が潔白なのは我々も分かっているのだ。」

「分かっている!?ならどうして…」

「ハリー皇帝閣下が君をご所望なのだよ。」

「はぁ!?」


 室内にいた全員が驚いてこっちを向いた。

 いやでも普通驚くでしょ?なんでこんな時にハリー皇帝殿下の名前が出てくるんだか。


「ゴホンッ失礼。ご所望、とはどういう事でしょうか。」

「そのままの意味だ。ハリー皇帝閣下はロザリー嬢と結婚したいそうでね。しかし君は皇太子の婚約者、まあ色々と面倒な事が起こる。」

「つまり、私とハリー皇帝殿下を結婚させるために、私を悪者にしたと!?」

「まあ悪く言えばそうなってしまうな。」


 どうやったら良く言えるんだが私にはさっっぱりわからないのですが!?と叫びたい気持ちをなんとか押し留める。


「それではハリー皇帝殿下との結婚は私の行ないの罰ということになるのではありませんか?」

「皇帝殿下はそれでも構わないそうだ。」


 は?それでも構わない?どういう事?


「それでも!私の評判は下がってしまうではありませんか!そうなったら!…」

「……そうなったらなんだ?」


 そうなったら私の描いた絵の評判が下がる!!絵に罪はないのに!!

 と叫びかけるが、なんとか無理やり抑え込む。


「ゴホンッ!い、いえ。なんでもございません。しかしそれでは私にとって良いことは何もありません。ハリー皇帝殿下との結婚は私は望んでいるわけではありません。それに評判も下がる。あまりにも不遇ではありません?」


「それなら何か見返りをやろう」


 唐突に聞こえてきた声の主の方に振り向くと…そこにはなんと「氷冷の血皇帝」が吹雪を舞わせながら立っていた。

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