第56話


 お昼ご飯を食べ終えた静人達は二手に分かれる。かなでともみじ、そして桔梗はお菓子作りを始める。もう片方の静人と青藍は物作りについてパソコンで調べることにした。




「おにいさん最初に何を調べたほうがいい?」


「うーん、青藍ちゃんは何か作りたいものってあるかい?」


「私が作りたいもの……、特に思いつかない」


「青藍ちゃんは黙々と物を作るのが好きなんだよね?」


「? うん」


「それならちょっとした小物とか作ってみないかい?」


「小物?」


「そう、小物。机とか椅子とか、本だなとかアクセサリーを入れる箱とかだったり、それに料理を作るときにあったら便利な物とかね。さすがに青藍ちゃんも金属は扱えないよね?」


「金属? 分かんないけど慣れたらいけると思うけど触ったことないからわかんない」


「それもそっか。さすがにそれは教えることは出来ないからそこはみどりさん任せかな。あ、茜さん用の運搬道具も作らないとね」


「おにいさんが図案をかくんだよね?」


「そうだね。うーん、一緒に書き方も見てもらおうかな。自分で書けるようになったらもっと複雑な物も作れるようになると思うし」


「む、めんどくさそう」


「あはは、慣れれば簡単だよ。書き方って言っても本格的な仕様書とかじゃなくてここをこうした方がいいかもってメモを挟みつつ、最終的な形を描くだけだし」


「むむ、難しそう。でも、頑張る」


「うん、頑張ろう」




 初めてのパソコンに四苦八苦する青藍に使い方を教えてたどり着いたいろいろな物を見ながらノートにちょっとした図案を描いていく。




「うんうんそんな感じ。なんとなく作るものの形は見えてきた?」


「うん。でも、もうちょっと絵を綺麗に書けるようにならないと分からなくなるかも」


「他の人にはわからなくてもいいけど自分だけは分かってないとね。さすがに自分以外の人に頼む場合はそれじゃだめだけどね? それじゃあ茜さんに作る運搬道具は今回の図案で行こうか」


「自分で書いたからいつもよりも細かいところまで確認しなくても作れると思う」


「確かに今までは小さい部分は確認しないといけなかったからね。自分で書いた方が楽じゃなかった?」


「うーん、でもおにいさんが描く図案も分かりやすいよ?」




 青藍は一緒に書いていた静人の見本用の図案を見て首を横に振る。そんな青藍に静人は頬をかきながら苦笑いを浮かべる。




「今はまだそこまで複雑なものは作ってないから大丈夫だけど、複雑な物を作るときは少しのずれとか細かいところが違うだけで大変なことになるからね。今のうちに覚えて欲しかったんだよ」


「なるほど、確かにあれ以上細かいのは分かりにくくなるかも? でも、あれよりも細かいものってあるの?」


「僕は知らないけどこれから先どんどん作ることになるし今のじゃ満足できなくなったらあれ以上に細かいものになるんじゃないかな?」


「たしかに? まぁ今はいいや。お兄さん他に何か調べることないかな?」




 考えることを一旦やめることにした青藍はパソコンをまた操作しながら静人に尋ねる。静人は考える素振りを見せた後先ほどまでの会話から金属のことを思い出す。




「うーん、あ、さっきも言ったけど金属製品を見てみようか。さすがに調理道具の包丁とか鍋とかは無理かもしれないけど」


「む、流石に設備的に無理かな? 設備があっても簡単には無理だと思う」


「そうだよね。まぁ、時間はあるから興味があるならみどりさんに頼めばいいんじゃないかな。それに青藍ちゃんが包丁とか作れるようになったら村づくりの方でも助かるからね」


「助かるの?」


「助かるというか、そうだね。例えばだけど料理するときに使う包丁が使えなくなったら困るでしょ? かといってそういうのができる人を新しく用意するのも色々大変だから」


「なるほど、さすがにこれ以上人が増えるのは今のところやめておいた方がいいよね。それならちょっとやってみようかな?」


「まぁ、そこらへんはみどりさんとも相談しようか。今日来るだろうし」




 静人もそんな設備については用意できないからかみどりに任せることにした。そうしてしばらく他の図案を描いたりしていたが青藍がふと口を開く。




「今日のご飯は何作るの?」


「あはは、まだ時間あるよ? そうだなー、正月らしくは無いけど久しぶりにオムライスでも作ろうかな。前にも作ったことあったよね?」


「卵焼いたのでご飯くるんだやつ?」


「そうそう。あー、お魚は刺身でも買ってこようかな?」


「おさかな!」


「あはは、ホントにお魚好きだね。明日はちょっと時間かかるけどサーモンとブールブランソースでも作ろうかな。一回作ったことあるけどお魚にあって美味しかったよ」


「おー、食べてみたい!」


「それじゃあ明日はそうしようか。あ、ちょっと待っててね」




 静人は青藍に一言断ってからかなでのもとに向かう。オーブンで何かを焼いているのかもみじと桔梗はオーブンの前から離れようとはせず、そんなオーブンから少し離れたところでかなでがもみじ達を見ていた。




「かなで、買い物に行きたいんだけどいいかな? 刺身を買って来ようと思って。あ、夕ご飯はオムライスにしようかと思ってるんだけどいいかい?」


「もちろん! 買い物はそうね。しず君に任せちゃおうかな。よろしくね!」


「うん。それじゃあ行ってくれるね。グラさんたちは明日来るんだよね?」


「ええ、来るのは明日になりそうって言ってたわよ?」


「そうかい? それならよかった。他に勝ってくるものはあるかい? そういえば何だけどグラさん達って食べれないものとかあったりするのかな?」


「うーん、今のところは無いかしら。食べれないものかー。聞いたことないかな。基本的に何でも食べる人たちだし」


「一応聞いてもらっていいかな? 食べれないものを使うわけにもいかないからね」


「そうね。連絡入れておくわ」


「よろしくね。それじゃあ買い物に行ってくるね。青藍ちゃん、ちょっと出かけてくるから自由に調べてていいからね。使い方が分からなかったらかなでに聞いてね」


「分かった。行ってらっしゃい」


「うん、いってきます」




 もみじと桔梗は熱心にオーブンの中身を見ていて気が付く様子はなく、真剣に見ているもみじ達を邪魔するのもどうかと思った静人は声をかけずに買い物に出かけていった。








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