006 レオンの魔法

 あたり一面に広がる更地さらち。 

 さっき程まであったはずの、標高3,776 mぐらいの高さの山々はもうない。

 草も、木も、何もない。

 そこにあるのは、俺とウィンと動物と魔物だけ。

 なんと俺は、『混沌黒球ブラックホール』という魔法により、全てを吸いんでしまったのだった。

 

 ……これは、10分ほど前の話。

 ウィンの魔法を見た後に、その出来事は起きた。


 俺は、ウィンの教えに従って自分が出来そうな魔法をイメージした。

 その時イメージしたのは、『混沌黒球ブラックホール』。

 ウィンが、俺の魔法は全てを吸いみそうだと言っていたからだ。

 だが、それが悲劇の始まりとなってしまったのだった。


 俺が放った『混沌黒球ブラックホール』の威力いりょくは、それはそれはすごかった。

 まず俺の手から出た小さな黒い球は、ゆっくりと俺からはなれていった。

 最初は、小さな球だからと俺は油断していた。

 しかしその球は、落ち葉や草、石や砂を吸いみ始めた。

 そして、小さかった球はみるみると大きくなっていった。


 この時点ではまだ、性能の良い掃除機そうじきくらいで、それほどの脅威きょういはなかった。

 むしろ『混沌黒球ブラックホール』という技名にしては、微妙びみょうだな……とまで思ったほどだ。


 だが、ここからが問題だった。

 その球は、突然速度を上げた。

 そして、大きな岩はもちろん、そこら中の木々を吸いみだした。

 

「レ、レオッチ!? 一体、どんな魔法使ったのぉ!? 

 こ、これ、ど、どうするぅ!! ねえぇ!!!」


 この光景に戸惑とまどうウィンは、急いで光魔法、『聖天撃リュミエル』を放った。

 自分の魔法を『混沌黒球ブラックホール』にぶつけて、打ち消そうと思ったのだろう。

 だが、俺の魔法はそんなウィンの魔法すらも吸いんだ。

 止めようのない『混沌黒球ブラックホール』の成長に、ウィンは放心状態になってしまった。


 結果、近くにそびえ立つ標高3,776 mぐらいの高さの山々までもが俺の魔法に吸いまれていった。

 そして、辺り一面がとても綺麗きれいな平地となり、生物だけが残ったのだった。


 しかし、状況じょうきょうは最悪である。

 辺り一面、何も無いため、吸いめる物はもう無いはず。

 なのに『混沌黒球ブラックホール』は一向に消える気配がない。

 どんどん大きくなっていくのだ。

 俺は、いつかこの世界ごと吸いんでしまうのではと、あせった。


(これ以上大きくなったら危険だよね……!?

 どうしよう。この『混沌黒球ブラックホール』を吸いめればいいんだけど……)


 俺は、早くしないとまずいと思い、頭をフル回転させて考えた。


(なんでも吸いむ『混沌黒球ブラックホール』をさらに吸いめるもの……か。

 いや待てよ。

 そんなものは、存在するのか!?

 この大きさを吸いむには、これよりも大きいものがパクって……あ!! そうだ!)


 俺は、ふとひらめいた。

 吸いむのではなく、食べてしまえばいい。

 つまり、んでしまえばいいのだ。


 俺はそう思った後、魔法をもう一つ創り出した。

 そして、迷うことなく即座そくざに放った。

 その名も、『暴喰オブルーク』。

 名の通り、なんでもらいつくす魔法だ。


 もちろん、この魔法は俺の期待以上だった。

 野球のドームくらいの大きさまでふくれ上がった混沌黒球ブラックホールを、一瞬にしてんだのである。


 こうして何とか、混沌黒球ブラックホールによる危機は、ひとまず去って行ったのであった。


 そして現在。

 混沌黒球ブラックホールが消えたことに、安心して力が抜ける俺。

 光魔法が吸いまれたショックと、絶望とでたましいけかけているウィン。


 そんなウィンが心配になり、声をかけた。


「ウィン、ごめん。おどろいたよね。

 とりあえず収まったから‥‥‥もう大丈夫だよ?」


 俺は、結構優しめに言ったのだが。

 ハッと意識をもどしたウィンは、半泣き状態でうずくまった。

 耳を両手でおさえて、小刻みにふるえている。


「こ、こわいよぉ……僕の、僕の魔法を吸いんだぁ!!

 僕もきっと、吸いまれちゃうよぉ!!」


「ウィ、ウィン。もう無くなったから、大丈夫だよ」


こわいよぉ! ドラゴンよりこわいよぉ!!」


 そう言って、ウィンはまたおびえ始める。


(や、やばい。ウィンがこわれちゃった……)


 そんなウィンを見て俺は、なんとか安心させなければと思った。


「ウィン。さっきの魔法はもう使わないから。もう怖わいことにはならないよ」


 俺は、必死に謝った。

 するとウィンの体は、ようやくふるえが止まる。

 そして、半泣きのウィンは顔をゆっくり上げた。


「ほんとぉ……? レオッチィ。

 じゃあ、あの魔法使わないぃ?」


「使わないよ」


「絶対にぃー?」


「絶対に!!」


 俺が、そう約束するとウィンは、スッと立ち上がった。

 もう怖い気持ちが、なくなってくれたのかもしれない。

 お化け屋敷から出た後の様な、安心した表情をしている。


(ふぅ。ウィンが直ってくれて良かった!)


 そう思った、その時だった。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!


 急に、はげしい地響じひびきが鳴ったのだった――



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《ステータス1》

【名前】レオン・ノワール

【属性】闇

【魔法】

混沌黒球ブラックホール

・全てを吸い込み、ドンドン大きくなる。

 

暴喰オブルーク

・全てを呑み込む。



《ステータス2》

【名前】ウィン・シュトラール

【属性】聖

【魔法】

聖天撃リュミエル


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