第31話 選手決定

波乱の生徒会選挙が終わり、帝国学園との決闘祭も後一週間と迫った中、全校集会が行われた。


「これより、フロン帝国学園との決闘戦のメンバーを発表する。呼ばれた3人は前に出るように。」


学園長が壇上で魔術で声を高めながら言う。


「一期生Sクラス、エレン=ルイ=ファマイル。」


「はい。」


スッとエレンが椅子から立ち上がり、前へと歩いて行く。


「二期生Sクラス、シオン=サーバル。」


「はい。」


シオンも生徒たちの前へと歩いて行きエレンと少し離れた横の位置で止まって立つ。


「最後に。ファマイル王国学園代表、キング、一期生Eクラス、ライト=ファーベル。」


「はい。」


ライトが立ち上がりエレンとシオンの間に行く。

左からエレン、ライト、シオンの順で立っている。


「以上3名を今大会の学園代表選手とする。」


拍手が講堂に鳴り響く。


「以上で全校集会を終了とする。三期生から順に教室に戻るように。」


学園長の言葉によってズラズラと講堂から生徒たちが出て行った。






「ま、俺たちだろうな。」


放課後3人、ライト、エレン、シオンが会議室に集まっていた。

無論これから行うのは…作戦会議である。


「まー、そうだけど。先生から去年の録画借りてきたよ〜観る?」


シオンがポケットから青い映像魔石を取り出す。


「…いや、いい。聞いた話によると、去年、今いる相手が出たのはアランだけだ。そのアランは実力を隠していた。動画を見るだけ無駄なだけだろう。」


下手に対策して空回りで済むならまだしも、変なスキを見せたら終わりだからな。

と付け足す。


「そうね。そういえば、向こうの選手も決まったらしいわよ。」


そう言いながらエレンはバッグから紙を取り出し、2人に見せる。


フロン帝国学園

キング アラン=レオンハート

その他 カズ=カーヴィン

    エリス=フレーデス


「…やっぱりあの3人か…。」


ライトは帝国学園に行った際に出会った3人を思い出す。


「アランはわかるけど、他の2人はどのくらい強いとか分かるの?」


シオンがライトに尋ねる。


「おそらくお前ら2人と同レベルだろうな。楽に勝てる相手じゃないぞ。」


「…ふーん。結構燃えてくるね。」


シオンがニヤリと笑う。


「アランはライトが。…エリスとの闘いは私が担当していい?」


「全然いいよ〜。そういえば、エレンちゃんもアランたちに会ったのよね。」


「えぇ。それもあるけど、それ以外にも少し思うところがあってね。」


エレンは暗い顔をしている。

普段の彼女からは想像もつかない表情だ。


それ以上詮索するのは野暮だと思ったのだろう。シオンからエレンへの質問はそこで途切れた。


「まぁ、作戦会議はそんな感じでいっか!」


シオンがパチンと手を叩く。


「今日も練習始めよっ!」


そう言って立ち上がり、会議室から出ようとするが…


「待て、シオン。」


ライトに止められる。


「ん?まだ何かあるの?」


「あぁ。一つ作戦がある。」


「へ〜。どんなどんな?」


踵を返し、戻ってくるシオン。


「…それを言う前に、お前たちに聞きたい。」


「ん〜何?」


「ん?どうかしたのライト。」


2人が首を傾げる。


「お前たち、嫌われる覚悟はあるか?」


「「はっ?」」


シオンとエレンの声がハモった。









同刻


とある部屋に4人が集まっていた。


「…まさかあなた方がいつも仰ってたライトくんがカイト=エスティーだったなんて。まさに灯台下暗し…ですね。」


赤髪の女性が驚愕の表情をしながら呟く。


「あぁ。当初はワシも驚いたが…今考えれば、なぜ気が付かなかったと思うくらいじゃわい。」


ニックが苦笑いをする。


「ですが、これで我々が一歩リードしたことに変わりはありません。やっと…クレザーノ家に対抗できる切り札カードが見つかった。」


ロイドが拳を握り締めながら言う。


「それにエレン嬢の婚約者だ。これほどまでに頼もしいボディガードは他に居ないだろう。……これで王国の次期国王候補として、ライトを騎士団に推薦するいい口実ができたわい。」


最後は小声で呟きながらフォルトが続く。


「更に朗報です。金色の向日葵のパーティリーダー、ヨルン=ハルザーノのご息女が見つかりました。」


「何ですって!どういうことですか!ロイド様!」


唯一事情を知らなかった赤髪の女性がロイドに詰め寄る。


「ライトくん、いえ、カイトから聞いたのです。ヨルンには子供が居ると。そして、ヨルンの細君様、義父様と共に現在、フェルマー家の実家の元で保護しています。私の父にもこのことは伝えております。」


「そ、そうなのですか。」


「じゃが、ヨルンに子供が居ることは既にクレザーノ家も知っとるみたいじゃ。クレザーノ家に連行される際、運良くその場に居合わせたライトくんたちが助けたと聞いておる。」


「では、連中はフェルマー家が保護していることを知っていると見て間違いないですか?」


「…いえ、おそらく国外逃亡したと見ているでしょう。ライトくんの話によれば、彼等を連行しようとした騎士たちの記憶は消したそうですから。」


「記憶を?一体どうやって…?」


「まぁまぁ、それよりも不気味なのは、それ以来クレザーノ家の行動がピッタリと息を潜めたことじゃ。まるで、嵐の前の静けさじゃな。」


ライトの話になりそうなのを強引に転換するニック。


「ライトからの話によれば、霊界山から少量の霊灰を入手したらしい。何か企んでることは確実だろうな。」


「…しかし、今のところエレン嬢は安全。となれば、次のステップに行けますね。」


「えぇ。『人身売買王アブラ』と『ケルヴィン=クレザーノ』。2人の関係を探りましょう。」


「そのためには、まず、闇市でのクエストから辿る方が良いじゃろう。元ギルド長であるワシの出番じゃな。」


腕まくりするニック。


「では、今回はそのようなことで。しかし、引き続きエレン嬢の警護は続けましょう。」


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