第18話 明かされる過去 ライトの真実1

馬車に乗り、王国へと移動するライト達。

馬車の中にはニーナ達も乗っている。

泣き疲れたのか赤ちゃんはニーナに抱っこされながら寝ていた。


「スマンのう。ライトくんたち。ワシらのせいで…」


トランは状況を理解しているらしい。

ライトたちに頭を下げる。


ライト達の馬車の四方にはクレザーノ家の騎士団の馬車がピッタリと付いている。


「…どうするの?ライト。これなら、思ってるより早く王国に着いちゃうけど。」


エレンが窓の外を見ながら不安そうに尋ねる。


数人の騎士が殺気立ちながらコチラを睨んでいた。ライト達に楽しみを奪われたのが気に食わないのだろう。

騎士たちは一刻も早く王国へ移動したいらしく、馬車の進むペースが異常に早い。


「安心しろ。今から解決する。このペースで走ってくれたのはむしろありがたいな。そろそろ街からも十分に離れた。」


そう呟くと、立ち上がるライト。


「これから、俺たちは冥界に行く。」


「「「「「「は?」」」」」」


他全員の声が重なる。


「ラ、ライト!?貴方まさか…」


唯一、ライトのすることを理解し、エレンが恐る恐る尋ねる。


「あぁ。あの騎士たちから逃げるにはコレしかないだろう。記憶を飛ばさせる。…エレン。王国に着いたら、ニーナさん達を保護してくれ。」


そう言うと馬車の屋根を開け、左腕を掲げる


「ちょ、ちょっと待ちなさ——」


エレンが制止の声を上げるが—


《厄災召喚:冥王ルシファー》


ライトの声にかき消される。

と、同時に遥か彼方の地平線まで続く、超巨大な漆黒の魔法陣が形成される。


「「「「な、なんだ!?!?」」」」


事情を知らない者たちや騎士達が上空を見上げ、驚愕の声を上げる。


そしてその中心から——


銀髪の長い髪の毛を風にたなびかせ、

『彼女』がこの地に降臨した。


人智を超えた、最凶の女王が——


「え、嘘。ほ、本でみ、見たことあるよ、あ、あ、アレ。」


シオンが震えながら目を見開く。


辺り一面にルシファーのオーラが放たれ、気絶する騎士たち。


「久しぶりの召喚じゃの〜主人殿よ。今回の敵はなんじゃ?」


「敵じゃない。とりあえず俺たちを冥界のお前の部屋に連れて行け。」


「…やれやれ、仕方ないのう。」


そう言うとルシファーが杖を振るう。


辺りが紫色の光に包まれ、

そして——


巨大な玉座のある部屋へと光景が変わる。

そこらじゅうに禍々しい雰囲気の装飾品が浮いている。


「え!こ、ここどこ!?」


エレンたちが叫ぶ。


「妾の部屋じゃ。冥界の最深部じゃよ。」


その問いに答えたのはルシファーだった。


「どどどどういうことだ!?ライト!?」

「な、なんでお前っっっ!!!」


ラインとレインがライトに詰め寄る。


「えっと、俺の職業本当は召喚士なんだ。んで、ルシファーと契約してんだ。」


サラリと、とんでもないことを喋るライトを前に、固まる一同。(エレン以外)


「で、で、でも、言い伝えじゃ、ルシファーは封印されてるはずじゃ…」


シオンが震えながら呟く。

そう、冥王ルシファーは初代勇者パーティによって、冥界の奥地に封印されたのだ。


「妾の封印をといたのじゃよ。殿がな。」


ルシファーがニヤリと笑った。


「え?ライト!?どういうこと!?」


エレンがライトに詰め寄るが、

ライトは俯いて何も答えない。


人類を何度も破滅の危機へと陥れた、存在そのものが厄災、冥王ルシファーを蘇らせる。

それが意味するものとは、すなわち、全人類を敵に回すのと同じことだ。


「主人殿はとある人物を復活させたかったのじゃ。だから、妾の眠りを解き放ち、契約を交わした。」


「そ、そうなの?」


一同の視線がライトに集まる。

そして、ライトが遂に言葉を紡ぎ始めた。


自身に起きた過去の物語を。


「…そうだ。冥王ルシファーを蘇らせたのはこの俺だ。」


唖然とする一同。


ライトはさらに言葉を紡いでいく。


「結論から言おう。俺が蘇らせたかったのはヨルン=ハルザーノだ。」


ライトの言葉に全員息を呑む。


「それは結果的に不可能だった。魔族に殺された者の魂は消滅する。冥界にヨルンの魂は無かった。…だが、俺はどうしても諦めきれなかった。」


「だからルシファーを蘇らせたってこと?」


エレンが尋ねる。


「そうだ。もしかしたら…と思ってな。けど、結果は言った通りだ。」


「妾の封印を主人殿が解かなくても既に封印は切れかかっておったからの。妾が復活するのは時間の問題じゃったよ。」


「…どうして、ライトがヨルンを?」


「………」


再び沈黙するライト。


重い雰囲気が場を支配する。


数秒後、ライトは語り始めた。


「…少し、昔話をしようか。トランさんやニーナさんはもう知っているけどな。」


そう言うとトランとニーナを見る。

頷き合う3人。


「…俺は少し前に冒険者をやっていたのは知っているよな?」


「あ、あぁ。」


「俺の入っていたパーティのメンバーは2でパーティの、王国だけでなくフロン帝国を始めとしたでクエストをこなしていた。」


ライトの言葉に目を見開く。

それは、まるで、とあるパーティの特徴で…


「ま、まさか…」


誰かが呟いた。


「そうだ。俺の名前は…いや、カイト=エスティー。『金色の向日葵』、『仮面の弟』だ。」






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

作者後書き


こんにちは。氷星華です。


ライトがカイトであることは大部分の方々が察していたのではないかと思います。


次回は少し短めのお話になります。

更新は明日の朝7時です。


一応伏線(?)的なものは他にもあり、

また、応援コメントのアドバイスを参考に、何話か修正を入れたので、戻って読んで頂けると有難いです。


これからも応援よろしくお願いします!

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