第32話 第四試合
自軍へと帰ってきたライト達3人。
未だ開いた口が塞がらないクラスメート達に
「俺たちの試合は終わったぞ?どかないと次の試合が始まらないから、早く行くぞ。」
ライトはそう言うとフィールドから出ようとする、も、足を止めて—
「あー、そうそう。本戦も俺たち『3人』が出るから。」
そう高らかに宣言すると会場から出る。
ライトに続くラインとレイン。
その背中をE組の生徒達は呆然と見つめていた
ライト達Eクラスが本戦出場を決めた頃、
一般向けの観客席にて—
「本当に面白い人を見つけたわねエレン。
あんな子が義理の息子になれば、退屈しないわね。イジメがい…可愛がりがいがあるわ♪」
大きい帽子にサングラス、そしてマスクをした女性が呟く。
「いやぁ、城を内緒で抜け出して見に来た甲斐があったわね。」
そう、この怪しげな女性は王妃マリー。娘の応援&ライトを見るため、駆けつけたのだ。
無論彼女の夫である国王も
「ワシは絶対行くんじゃぁぁぁぁ!!」
とゴネたが…
「「「「「会議だろうが!!!」」」」」
と、従者達に取り押さえられていた。
バーナードは国王としての政治手腕には見るものがある、が、個人の戦闘能力としては凡人並み。しかも愛娘のこととなると、人間的な感覚全てが消え失せるレベル。
一方マリーは、ファマイル王国王立学園を次席で卒業した。魔術の腕前はかなりのものだ。そう考えると、容姿だけでなく、本質的な部分も、エレンはマリー似なのかもしれない。
(久しぶりにあんなに魔術を使ったけど、案外なんとかなって良かったわ♪)
ウキウキのマリー。
無論セレスティア城では、マリーが居ないことに従者達が気が付き、騒然な事態となっていた。
周りを巻き込みまくるこの性格も、エレンと似たところがある。
「さて、次はエレンの番ね♪」
『まもなく一期生第四試合が始まります。S組及びB組の生徒は持ち場についてください。」
アナウンスが流れ、エレン達がフィールドに出てくる。起こる大歓声。
「きゃぁぁぁぁぁ!!エレン様!!」
「エレン様ぁぁぁぁ!!お美しい!!」
「是非嫁に!!」
「エレン様ぁぁぁぁ俺と付き合ってくださぁぁぁぁい!!!」
その殆どがエレンを称える声である。
その声にマリーはうんざりする。
(本当に鼻の下伸ばしてデレデレして群がる有象無象の蝿どもね。アンタ達なんかにエレンを渡すものですか。)
ふとエレンを見ると、彼女の表情も険しかった。
(ほらアンタ達。あの子の顔が見えないの?あんなに軽蔑した表情なのに。ホント、コイツら、目腐ってるんじゃないかしら。
…まぁどうせ今のエレンは「こんなに要らない男たちは媚び売って来るのに、想い人(ライト)は来てくれないのよね」とか思ってるんでしょうけど…)
見る目のない観客達を冷めた目で見る。
(今まで何度、私や夫にエレンを嫁にと言われたことか。一応立場上、社交辞令的なお見合いはしたけど(夫は怒り狂ってたのでとりあえずお見合い最中は気絶させた)、そのせいで調子乗った自称婚約者が色々出ちゃったのよね。そしてそれは今でもしつこく来るのよね。…あぁ!もう!ライトくん!さっさとエレンを持っていきなさいよ!!エレンはめっちゃ人気なんだからボサッとしてると獲られちゃうわよ!?)
少しイライラする王妃だった。
第四試合の(主にエレンへの)大歓声が鳴り響く。その渦中にいるであろう金髪の美少女の表情は暗かった。
(はぁ…。本当に毎回毎回嫌になるわね。そんなことされても迷惑なだけなのが気付かないのかしら。)
エレンはため息を溢す。
以前のエレンであれば、ここまでうんざりするものでもなかった。多少面倒くさいが、それが自分のステータスとすら思っていた。
エレンは自分の美貌には自覚もあったし、それを利用して良いように周囲を扱ってきた。
だが、今の現状はどうだ。
以前のように男共は群がって来る——が、
その中に想い人の姿はない。
ライトへの想いは日々強まるばかり。
しかもその想い人へ、以前酷いことをした。
それを取り戻そうと必死で努力するも、今ひとつ報われない。
距離は縮まっただろう。けれど、それだけだった。彼は自分を見てくれていない。
その事実がさらにエレンの表情を暗くする。
(あー!!もう本っっっっ当に鬱陶しい!!アンタ達なんかに応援されても、求婚されても嬉しくないわよ!!良いから黙って見ていなさいよ!?ライトからの応援が聞こえなくなるでしょうが!!)
マリーの予想は、ほぼほぼ的中していた。
憤りを感じるエレン。
ふと学園長や教授陣の観戦場所が目に映る。
フィールド全体を見渡すように設置されたその場所は、フィールドからも良く見えた。
そこにいたのは
5、6歳くらいの金髪の女の子と、
それを抱っこする自身の想い人。
幼女も彼に懐いているのだろう、楽しそうに彼に甘えながらコチラを見ている。
「は?」
エレンは固まった。
ここからだと何を言っているのか分からない。しかし、2人の表情はとても明るい。
それはまるで恋人の様——
にエレンには見えた。
「へぇ〜…ふ〜ん…」
エレンが俯く。
『第四試合、始め!!』
アナウンスと共に第四試合の火蓋が切って落とされる。
「「「うぉぉおおおおおお!!」」」
両クラスの生徒達が激しく魔術を撃ち合う。
スタスタ…
無数の弾幕の中1人の美少女が歩いていく。
「「「は?」」」
固まる一同。先程の試合同様、Sクラス、クイーンのエレンが、最前線にきた。
「「「エ、エレン様!?!?」」」
Sクラスの生徒だけでなく、Bクラスの生徒も声を上げる。
「エ、エレン様!危険です、持ち場に戻ってください!!!」
「…私があんなにアプローチ(?)してるのに全然なびかないから変だと思ったら…アイツってそういう趣味だったんだ」
Sクラスの生徒がエレンに進言するも
全く聞く耳を持たない。
「な、なんか良く分からないけど、これチャンスだよな?」
「エレン様を倒せば私たちの勝ちなんだし」
「ぐへへ…、闘いに紛れてエレン様に…」
徐々に状況を理解するBクラスの生徒達。
「エ、エレン様!!も、もしエレン様をた、倒したら!!俺と!!つ、付き合ってくださ……ひぃっ!!」
Bクラス最前線の男子が勇気の告白をするも、エレンの姿を見て最後の最後で悲鳴に変わる。
殺意に満ち溢れたエレンの表情。
真っ黒の瞳。
背後には心なしか般若が見える。
「…何よ…。」
「へ?」
不意に聞こえたエレンの声に変な声をだす男子生徒。
《何よ何よ何よ何よ何よ何よぉぉぉ!!》
「「「ぐぎゃぁぁあ!!」」」
エレンの爆炎魔術で吹き飛ぶ生徒たち。
ちなみにその中には、エレンの味方であるSクラスの生徒も混ざっている。
《アイツ!!この私がいながら!!》
「「「ぐはぁぁぁぁ!!」」」
エレンの雷によって感電し、倒れる生徒たち
《そこは私の席なのよ!!!》
「「「ゴフォぁぁぁぁ!!」」」
氷漬けにされる生徒たち。
「あ、あのエ、エレン様!?ど、どうしたのですかっ!?」
《こんのロリコンがぁぁぁぁぁ!!》
「「「うわあぁぁぁぁ!!!」」」
爆風によって吹き飛ばされる生徒たち。
《ムカつくムカつくムカつくムカつくぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!》
「「「あちゃぁぁぁぁぁぁ!!」」」
巨大な炎の玉がBクラスを包み込む。
普通なら、彼女といえど一クラス全員を相手にするのは無理——だったのだが…
《もう!ライトの!バカぁぁぁぁぁ!!》
「「「ドゥワァァァァァァァ!!」」」
意味不明なことを叫び、涙目で怒る異常な彼女を止められる生徒などおらず——
「ふぅー…、ふぅー…、ふぅー…。」
仁王立ちするエレン。
倒れ伏すBクラスの生徒たち。
震え上がるSクラスの生徒たち。
「え、え〜…、び、Bクラス『全滅』により、第四試合はSクラスの勝利です。はい。」
審判の教授が冷や汗を流しながら告げる。
第三試合、敵の大将のみを倒したライト。
第四試合、敵を全滅させたエレン。
史上稀に見る試合が連続し、(というよりエレンの様子に)会場は呆然としている。
教授用観客席—
「…エ、エレン。アイツ何か変なものでも食べたのか…?」
「ねぇ、おにぃちゃん。ろりこんってなぁに?」
顔を引き攣らせるライトと、
事情が良く分からず、キョトンとするエリがいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます