第31話 決闘戦 vs.Aクラス

「はぁ、負けていいからさっさと終わりにならないかな。」

「あーあ。せっかくエレン様に良いとこ見せるところだったのに。」

「パパに頼んで、もう一度学園に抗議してもらおっと。アイツがボコボコにやられたら学園も動くでしょ」


Eクラスはやる気は皆無だ。

そしてAクラスは


「おいおいおい?コネ入学者の平民が大将だってよ?」

「ハッ楽勝楽勝!!ここでサラッと勝ってエレン様にカッコいいって思わせてやるぜ」

「はぁ!?エレン様にいいとこ見せるのは俺だつっうの!!」

「私もこの機会にエレン様とお近づきになりたいわ。」


完全に舐め腐っている。エレンはというと…


「ライト…」


手を胸に当てて不安げに想い人の無事を祈っていた。



決闘場、教授部屋にて—


「ふうむ。ロイドくん、君から見てどちらが勝つと思うかね?」


膝の上に金髪幼女を乗せたニックが尋ねる


「ほぼ間違いなくAクラスでしょう。先日、Aクラスの練習を見ましたが、キングのゲイルくんを中心としてかなりの高度に仕上がっていました。確かにEクラスにはライトくんがいる。が、彼は今回キングです。行動は大幅に制限されることでしょう。そして、Eクラスはこの1ヶ月間、まともに練習をしているところを見ていない。そんな状態でAクラスを相手に出来るとは到底思えません。

ところで…そのお嬢さんは?」


「ワシの孫娘のエリじゃ。ライトくんが出ると言ったらどうしても来たいとゴネての〜」


「じぃじ。おにぃちゃんの出番まだ?」


「もうすぐじゃよエリ。ほれ、ライトくんが出てきおったぞ!」


「どこどこ〜!見えないよ!」


「…ほれ、アソコじゃアソコ!!」


「あ、おにぃちゃんだ!おにぃちゃぁぁん」


エリが声を上げた。ライトも気が付いたのだろう。手を振っている。


「大丈夫ですかねライトくん。」


ロイドがポツリと呟いた。



「おにぃちゃぁぁぁぁん」


かすかに聞こえた懐かしい声のした方向を見ると…


「エ、エリちゃん!?何でここにって、あぁ、ニック学園長のお孫さんだもんな。聞いていてもおかしくないか。」


ライトは手を振る。


「緊張してきたぁ…。」

「だ、大丈夫だ、兄貴!俺たちならできる」


「あぁ、マジで頼んだぞお前ら?

そして、この会場の空気を俺たちで変えてやろうぜ?」


ライトはニヤリと笑う。そしてゲイルの方へと視線を写す。ゲイルは敵布陣の最奥部にいた。ゲイルと目があう。


中指を立てるゲイル。


『生徒は全員持ち場についてください。』


アナウンスに従い、持ち場につく。


Eクラスの布陣に、会場からはどよめきの声が上がる。審判の教授も唖然としている。


AクラスだけでなくEクラスも全員目を見開いている。


ライトが、決闘戦におけるキングが、何故か最前線にいた。


そんな中、


『第三試合、開始!』


アナウンスと共に試合の火蓋が切って落とされた。


その瞬間——


「ライン、レイン行くぞ!!」


ライトが声を張り上げる。


「あー、もうやるしかねぇ!!」

「やってやるぜぇえ!!」


そう言うと3人でAクラスの布陣へと突撃して行った。


「「「「「「な!?!?」」」」」」


会場全体は驚愕の雰囲気に包まれる。が、


「いけぇ!おにぃちゃぁぁぁぁん!」


1人笑顔で応援するエリ。

その応援に応えるかのごとく突進していくライト達3人。


「何がなんだか分からないけど、自殺行為だな!!死ねぇ!!」


Aクラスの男子生徒がライト達に魔術を放つ。

それをきっかけに、Aクラスの他の生徒も打ち出す—が、


《移動結界 金剛石壁(ダイヤモンドウォール)》


ラインとレインが叫ぶ。


すると3人を取り囲むように、小さなダイヤモンドの形をした透明な結界が形成され、3人を魔術から防ぐ。


結界魔術は広範囲になればなるほど形成及び、効果の維持が難しくなる。

逆に言えば、小さければ小さいほど、形成が楽で、効果も大きいということだ。


結界を発動させたまま、3人はAクラス布陣へと進む。


「なっ!?」

「ま、まだだ!撃て!撃て!!」

「結界を壊すんだ!」


さらに魔術が襲いかかるが、結界にはひび一つ入らない。


そしてそのまま


「く、来るなぁ!グハッ」

「逃げろ!逃げろぉぉ!!」


Aクラスの布陣の最前線へと突入した。

結界で生徒達を蹴散らす。


「チッ!喰らえ!《ファイアボー…」

「やめなさい!味方に当たるわよ!?」

「じゃあどうすれば!!!」


Aクラス布陣に突入したことによって、Aクラスの生徒はライト達に魔術を放てなくなる。

混乱するAクラス。

その隙にライト達は『目的地』へと到達する


ライト達の目の前にいるのは、

Aクラスキングのゲイル、他、数名。


「ライン、レイン、今だ!」


ライトがそう叫ぶと、結界が解除される。


そして—


「はぁぁぁぁぁあ!!」


真っ直ぐゲイルに接近するライト。その手には魔術で強化された木刀が握られている。


しかし、ゲイルもAクラス最優秀選手。


「舐めるなぁぁぁぁぁぁぁ!!」


とっさに手を魔術で強化し、

ライトを殴ろうとする。

ライトの木刀とゲイルの拳がぶつかる


が—


ライトは華麗な剣捌きでゲイルの一撃を受け流し、背後に回り込み、一閃。


「ガハッ!!」


ライトの剣撃をモロに受けたゲイルは倒れ、気絶した。


呆然と立ち尽くす周囲。静まり返る会場。

電光石火の如く、即行で着いた勝敗。


「やったぁぁぁぁ!おにぃちゃぁぁぁん!」


エリの喜びの声が響く。


その声にハッとなった審判の教授が叫ぶ。


「 え、Aクラスゲイルくん、気絶!よって勝者、Eクラス!!!!!」


次の瞬間、凄まじい歓声が会場を包み込む。


「おいおいおいマジかよ!?」

「最初は何やってんだ?自殺行為かよって思ってたけどまさかこれが狙いだったのか!」

「やるなぁ!あの少年!!」

「結界張ってた2人もだろ!?あんなに沢山の魔術受けても傷一つついてなかったぞ!!」

「久々に面白い試合が見れたな!!」


ライト達を称える声が上がる。





「本当に、我々の想像を遥かに超えてきますね、彼は…。」


ロイドが驚愕の笑みを浮かべる。


「全くじゃ…。小隊を率いて、大将自ら敵の大将の首を取りに行くとは。大胆不敵すぎるじゃろ。」


ニックも冷や汗をかいている。


「きゃーー!!!カッコいい!!!おにぃちゃぁぁん!」


エリが叫ぶ。


ライトは、ラインとレインと笑い合い、自軍へと戻る


そんなライト達の様子を見て


「ホント、無茶ばっかするんだから…」


エレンは呆れたように、ホッと息を吐いた。

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