第30話 競技大会本番

1ヶ月後—、競技大会本番当日。


この日、学園内の巨大な決闘場が開く。

膨大な量の観戦席は既に満席だ。

競技大会は一般的に無料で観戦が可能である。保護者や将来この学園に通いたいと思う人々や王都の人々がおしかけ、かなり騒がしい。


競技大会は一期生から順に行われる。

ライト達一期生の予選のトーナメントは


第一試合 S VS C

第二試合 B VS D

第三試合 A VS E


である。

また、今回、くじ引きによってA組およびE組がシード枠となった。故に、ライト達は一回戦を突破するだけで、本戦出場ということとなった。


そしてEクラスの大将、キングにライトが選ばれた。無論、クラスの周囲の猛烈な反対はあったが、通常、決闘戦の予選における大将はクラスの最優秀生徒が務めることになっており、教授直々に指名をかけられて選ばれることとなっている。この制度は、家柄やクラスでの立ち位置に囚われず純粋な実力のみを公平に審査にかけるという学園の意向である。そのため、周囲はライトがキングであることに不満は抱きつつも、それ以上反抗が出来なかった。


「…ったくなんで俺らの大将があんな平民なんだよ。負けだよ負け。ふざけんなマジで」

「僕、パパに言いつけて学園に文句言ってもらったのに、全然動かなかったよ。どれだけコネ入れてるの」

「本当にあり得ないわ。恥ずかしくないのかしら。」


Eクラスの生徒たちは期待できなさそうだ。

だが、正直コレはライトの想定内。というより、元々そのつもりで計画を立てていた。

計画に支障はない。



「言われる側になると本当に感じ悪いな。」

「ごめんな、ライト。だが、お前がコネじゃないってことは俺らがよくわかってる。」


「気にするな。慣れてることだ。それに、このくらいの方が面白いだろ。」


ライト、ライン、レインは3人で本番前、教室で最後の作戦の復習をしていた。

もうすぐ第一試合が始まろうとしている。

第一試合、王国随一の美貌を誇る王女エレンがSクラスのクイーンとして出る。そのため、その勇姿を一目見ようと多くの観客達が殺到していた。Eクラスの生徒たちも同様だ。そのため、教室にいるのはライト達3人だけだ。


ガラガラ—。


教室のドアが開く。


「邪魔するぜ〜。」


そう言って入ってきたのはAクラスキングの金髪の男子生徒、ゲイル=リバルス。雰囲気はどことなくガニスに似ている。


「え〜っと、お!いたいた!」


真っ直ぐライトの元へと近寄り—


「あんまり調子乗ってんじゃねえぞ?最近エレン様と一緒に登校してるようだな。お前みたいな平民風情がエレンと釣り合うわけがねぇんだよ。わきまえろ。決闘戦で無様に俺の足元に跪かせてやるから覚悟しとけ。」


「おい!お前そん「やめとけライン。」


文句を言おうとしたラインを静止する。


「エレン様だったりエレンだったり、呼び方は一つに統一しろよ。」


ライトが挑発する。


「ハッ!死にてぇようだな?お望み通り、殺してやるよ。楽しみにしとけ。」


そう言うとゲイルはEクラスから出て行った。


(この場で攻撃してこない辺り、ガニスより数段上か。)


「俺もついこの間までアイツみたいだったと思うと恥ずかしいな。」

「そうだな兄貴。ライト、大丈夫か?」


「あぁ。ま、試合で目に物見せてやろうぜ」


3人は顔を見合わせて笑った。





試合は進む。

第一試合 勝 Sクラス

第二試合 勝 Bクラス


そして遂に一期生第三試合、Aクラス対Eクラスが始まろうとしていた。


『まもなく、一期生第三試合が始まります。Aクラス及びEクラスの生徒たちは持ち場についてください。』


会場にアナウンスが鳴り響く。


ライト達3人が決闘場のフィールドへ向かう。その途中の廊下に


「ライト」


エレンが居た。


「何だ?どうしたこんなところで」


「ライト、今からでも遅くない。棄権しなさい。いくら貴方でもたった1人では無理よ。」


青い顔をしてエレンがライトに詰め寄る。


((え?待って、俺たちもいるんだけど…

っていうかこの様子、エレン様って絶対にライトのこと…))


完全に蚊帳の外に出された2人の思惑が重なる


「大丈夫だ。お前に心配されるほど落ちぶれちゃいない。まぁ俺を信じて見とけって」


ライトはそう言うとエレンの頭を撫でる。


「…っ!!なら、これだけは約束しなさい。危なくなったら降参すること。貴方は私のモノなの。大怪我したら承知しないわよ。良い?わかった?」


「はいはい。お前のモノじゃないけどな。

…さて、いくぞ、ライン、レイン。」


「「お、おう」」


ライト、ライン、レインは並んでフィールドに入っていった。

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