第28話 番外編 おバカな娘でごめんなさい

マリー視点


ライトが悪魔の弁当を食べ終わった頃

セレスティア城にて


「いやぁ、エレンがワシのためにお弁当を作ってくれるとは。我生涯に一遍の悔いなし!」


私は血涙を流しながらお弁当を食べようとしている夫を見る。


(はぁ…、毎度毎度本当に親バカなんだから。しかもそのお弁当、失敗したものを詰め込んだのよね。)


昨晩、最近エレンの様子がおかしかったから私は声をかけた。

あんなに練習してたお料理もお化粧もやらなくなっちゃったから。


そしたら泣きながら私に飛び付いて事情を教えてくれたわ。自分がライトくんにしてきたこともね。


「エレン、このままでいいの?」


「ぐすっ、ぐすっ、このままって?」


「ライトくんと喧嘩したままで、」


「…だってライト私のこと、き、嫌いだし」


そう言うとまた目に涙を溜める。

自分で言って自分で傷つくなんて…、はぁ、本当におバカなんだから。


「今は嫌いかもしれない。けど、これからどうなるか分からないでしょ?エレンがこうやって泣いてる間にライトくん他の女の子に奪われちゃうよ?」


「…!!い、嫌だ!ライトは私のもの!!」


ガバッと顔をあげるエレン。


「なら、諦めずにアタックしなさい!!エレンは誰よりも可愛いわよ!!自信持って彼をメロメロにさせなさい?」


「…でも、でも」


まだゴネるのね。仕方ない


「ライトくんがもしエレンにメロメロになったらどうなるか想像してみなさい?」


「ら、ライトが…?」


目をパチクリさせるエレンに捲し立てる


「そうよ!!どんな時でもベッタリくっついて、あんなことやこんなことも…」


「あ、あんなことやこんなことやそんなことも…ニヘヘ」


一つ多いわね。まぁ良いわ。


「さあ!そうと決まったら明日お弁当でも作ってみましょう!!大丈夫!!私も手伝ってあげるから!!」


エレンの料理は最初こそ本当に酷かったけど、今は大分マシになってるはず。美少女の手作りってことで味は多少悪くても大丈夫なはず。むしろエレンレベルの手作りお弁当なんて貰っただけで鼻血ブーよ!!


「う、うん!お母様、私!頑張る!」


そう言って気合いを入れて作ったお弁当なのだ。勿論味見もしたし、何回も何回も作った。数えきれないくらい失敗した(そのお弁当は使用人が白目を剥きながら食べた)けど、ライトくんにあげるやつは普通に美味しかったわ!!ライトくんはもしかしたら我慢できずにエレンを襲っちゃうかもね!!


「美味い!!さすがエレン!料理の天才じゃ!!!」


はぁ、本当にエレンのことになると人間的感覚全部無くなるんだから…ってあれ?


私は夫の表情を見る。


え?何?普通に美味しそうじゃない?


ん?もしかして…だとしたら!!ちょっと待って、まさか…!!


私は夫のお弁当からハンバーグを取り、そして食べる。


「ぬぉ!!ワシのハンバーグがぁぁぁ!!」


項垂れる夫。しかし私はもうそんなの気にしてられないほど震えていた。


「お、美味しい…、まさかあの子、ライトくんにあげるお弁当と失敗したお弁当を間違えたんじゃ…」


血の気が引いてくる。そこへ


「お母様ぁぁぁ!!」


エレンが帰宅してきた。


「エ、エレン貴女まさか「お母様聞いて!!ライトがね!美味しいって言って全部食べてくれたの!!!!もう『美味しすぎて』固まっちゃったって!!!!『涙目で』食べてくれたんだから!!!!お母様本当にありがとう!!!!」


「そ、そう。それは良かった…。」


『美味しすぎて』固まって、

『涙目で』食べたのね。ライトくん。


「これでもう胃袋は掴んだわ!!ライトが私にメロメロになるのも時間の問題ね!!」


満面の笑顔でスキップしながら自室へと戻るエレン。


(ライトくん、おバカな娘で本当にゴメンなさい。エレン、ライトくんを幸せに出来るかしら…あぁ将来が不安だわ…。)


将来の義息子になるであろう少年に、私はひっそりと謝罪した。

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