第20話 学園再開 前編
あの日以降、エレンと会う機会はなかった。
長期休暇が終わり、学園が再開する。
ライトにとって地獄の日々がまた始まろうとしていた。
「おいおい。辛気臭い顔したゴミがいると思ったら、ライト君じゃないか〜、平民風情がまだこの学園辞めてなかったとは驚きだ!」
学園内に入った途端聞こえた背後からの声に、ライトはうんざりする。
振り返ると、ニヤニヤしているガニス=レーベル(第二話参照)がいた。
開始早々面倒な奴に絡まれたな。
とりあえず会釈はしておく。
「ハハハ!聞いたぜ?噂によると何でかは分からないがSクラスと遺跡調査に行ったんだってな?そして、あろうことかエレン様たちの足を引っ張ったんだってなぁ!かー、お前のメンタル超凄いねぇ!!俺だったらそんなことしたら生きていけないぜ?」
「うわ。エレン様たち可哀想。」
「コネ入学のくせしてよくそんなことできるよな。」
「ガニス様!やっちゃってくださいよ!!」
「仕方ねぇな!俺様がエレン様の為に一肌脱いでやるか!!」
そう言うとガニスは左手をライトに向け、
《ファイアボール》を発動する。
巨大な火の玉が正面からライトを襲う。
「…っ!?」
間一髪、ライトは自分の正面のみに水魔術を発動させ服が燃えるのを防いだが、その衝撃で吹き飛ばされる。
(何考えてんだコイツ!?至近距離でファイアボールを全力で放ちやがった!本当に俺が底辺の実力ならさっきので死んでたぞ!?)
ライトはとりあえず地面にうつ伏せ倒れ、気絶したフリをする。
「おやおや?死んじまったかなぁ?
やはりAクラスの俺の一撃はゴミには重たすぎたか!」
ガニスの笑い声が聞こえる。
「うわ。ダッサ。」
「良いぞ!ガニス様もっとやれ!!」
「ガニス君カッコいい!!」
そしてガニスは左手でライトの髪の毛を掴みあげる
「おいおい?勘違いしてんじゃねえぞ?お前みたいな奴が遺跡調査から帰ってこれたのはエレン様のおかげだからな?だが、残念だったな。いくらお前が想いを寄せようと、エレン様はお前のこと何とも思ってねぇよ?」
…ったく、誰があんな性格ゴミクズの顔だけ女に惚れるか。それに、気絶してる(フリ)相手に対して何言ってんだか。馬鹿じゃねえの。
「もっと痛めつけねぇと気が済まねぇよ。将来の俺の嫁さんに近づいた小蝿はよぉ?」
…あぁ。なるほど。コイツ、エレンのこと好きなのか。性格ゴミクズ同士お似合いだな。さっさと結婚して俺の前から消えてくれ。
「うお!!!やっぱりガニス様、エレン様のこと!!!」
「キャー!!あんなこと、私も言われたい!!エレン様羨ましい!!!」
「さすがガニス様!!男としても格が違う!!」
周囲がさらに騒がしくなる。
「ハッ!平民風情にはこんな綺麗な顔は勿体ねぇ。俺様が見合ったモノにしてやるよ!」
そう言うとガニスは左手でライトを掴んだまま右手に魔力を集めていった。
おいおい!?コイツ正気か!?
俺とはいえ、無抵抗でモロに顔面に魔術を喰らえば、ただじゃすまない。10中8、9死ぬんじゃね俺。
頭おかしいだろ、周りの奴らも。
人が殺されようとしてんのに何で笑ってんの。
こんな奴らの為に俺たちは『あの時』命をかけたのかよ。
こんな奴らの為に…アイツは死んだのかよ。
ライトの脳裏に1人の少年の笑顔が浮かぶ。
と同時に、口から血を流し、ライトの腕の中で生き絶える姿も——
ふざけるな。
ライトの堪忍袋の緒が切れた。
ガニス魔術を発動させた瞬間、ライトはガニスの右腕を蹴り上げ、軌道を逸らした。
「グハッ!!!」
炎の爆発魔術はガニス本人に直撃し、その衝撃で吹き飛ばされる。
おそらくジワジワとライトを痛めつけるつもりだったのだろう、威力は弱かった。
「テメェ…。」
ガニスは怒気を含んだ声と共にライトを睨みつける。
制服や髪の毛は爆発に巻き込まれ、見るも無惨な形になっている。
唖然とする周囲。
「来いよ。本物のゴミがどっちだか教えてやる。」
ライトは冷めた目でガニスを見下し挑発した
「テメェェェェェェ!!」
怒りで顔を真っ赤にしたガニスが魔術を発動させようとしてー。
「これは何の騒ぎ?」
その声で動きが止まる。エレンだ。
と、同時に騒ぎ出す周囲。
「エレン様!平民がガニス様にケンカを吹きかけたのです!!」
「ガニス様はエレン様を守ろうと!!」
「ガニス様とても凛々しく、かっこよかったですわ!!」
ガニスをここぞとばかりに持ち上げる。
ガニスも想い人の登場に緊張した雰囲気だ。
…チッ。余計なことを。
そう心の中でエレンに舌打ちするとライトは戦闘態勢をやめ、自身についた砂を払った。
「どういうことか説明しなさい。」
エレンはガニスに尋ねる。
「いえ、その、将来の俺の嫁に…」
「嫁?どういうこと?」
「え…とその…。」
さっきの勢いはどうしたのか。ガニスは顔を赤くして縮こまっている。
「コイツ、お前のこと好きなんだってよ。」
俺はエレンに話しかける。
「っ!おい!!」
ガニスが声を上げるも
「貴方は黙ってなさい」
エレンにより一蹴される。
「えっと…。どういうことなの?ライト?」
今度は俺に話しかけて来る。
何でエレンまで顔を赤くしてモジモジしてんの?
なるほど。ガニスの気持ちを聞いて喜んでんのか。両想いってことだな。
見る目ないな。2人とも。
「どうもこうもねえよ。そのまんまだ。ガニスはお前のことが好きで、俺みたいな平民がお前と一緒に遺跡調査に参加したのが気に食わなかったらしい。まるで独占欲の塊だな。
おかげさまで、俺はとんだとばっちりを受けたわ。
正直お前らにはもう関わりたくない。
とっととくっついて、2度と俺の前に現れるな。」
そう言うとバッグを拾い、
校舎内へと歩き出す。
「ちょ、ちょっとライト!!
待ちなさいよ!!お願い!!待って!!」
エレンが俺の腕を掴もうとするが
「触んな!!」
俺の一言でビクッとして手を引っ込めた。
初めて聞くであろう俺の怒声に、周囲の生徒たちも体をこわばらせている。
「もう一度言う。2度と関わんな。」
俺はエレンを睨みつけ、そのまま校舎内に入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます