第18話 王女の命を狙う者 最終話
「はぁ…何とか上手く誤魔化せた。」
ライトは城からの帰り道一人ため息を吐く。
今回の事件、目撃者がいない事が幸いした。教授たちも敵との戦闘の影響か、ルシファーのオーラで記憶が朧げになってくれたのも幸いした。
「アイツは誤魔化せなかったけどな。」
思い浮かぶのは大嫌いな金髪の少女の顔。
自分の力を見られてしまった。彼女には真実を話さないといけないだろう。
「まぁ、それで俺に近づかなくなるなら最高なんだがな。」
一平民が一国家どころか全人類を滅亡させる能力(魔神)を持つと知れば、彼女とはいえ手は出しにくくなるだろう。
だが、そんなことは絶対にない、むしろ今まで以上に関わることになる、という嫌な予感がしていた。
「まぁ、俺も腹括るしかないか。」
そう呟くと空を見上げた。
雲一つない空が夕焼けで赤く染まって行く。
変わって行く関係と嵐の前の静かさとも言える光景にライトは一人身震いした。
その頃、学園長室にて
「まさかこんな事になるとは思いもしませんでしたねニック学園長。」
「そうじゃなロイド君。ライト君が調査隊に急遽参加する事になったから良かったものの、そうじゃなかったら今頃…。」
「想像すらしたくありませんね。
彼とエレン嬢以外の生徒は襲撃されたことすら覚えていませんでした。「気が付いたら寝ていた」そうです。事実の隠蔽においても彼には本当に助けられました。」
「そうじゃな。じゃが、来年からは護衛を強化するしかあるまい。ということは、やはり彼は召喚したのじゃろうか?」
「はい。唯一記憶が少し残っていたレナード先生によると、黒い巨大な魔法陣が現れた、らしいです。ライトくんのモノと見て間違いないでしょう。」
「…やはりか。我々と同様、エレン嬢には見られたとみて間違いないじゃろうな。これが彼にとって、吉と出るか凶と出るか。ワシには想像もつかんわい。」
「彼にとって良い方向へ進むことを祈りましょう」
「そうじゃな。」
セレスティア城にて
「…ライト…。」
エレンはベッド上で毛布に包まれながら1人呟く。
自覚してしまった彼への想い。
それと同時に彼へしてきた仕打ちを振り返る
「…どうしよう。」
おそらく、ライトは自分を好きじゃない。
むしろ嫌われている。
そう考えただけで胸が張り裂けそうになる。
今まで、男は皆小蝿のように群がってきた。今日だってそう。
数人の男共が私の事件をどこからか聞きつけて近付いてきた。
「大丈夫?」だの「俺が守ってやる」だの「君のことは1番よく分かってるだの」
ペラペラと喋られた。
今まではそれを利用して、良いように使ってきた。
しかし、自分の想いを自覚した今となっては邪魔でしかない。
婚約者アピールも鬱陶しい。
アンタ達なんかに言って欲しい言葉じゃない
アンタ達なんかに心配されても嬉しくない
アンタ達なんかと結婚したくない。
私が欲しいのは彼ただ1人。
(今までのことが許されるなら、何でもするから。償うから。たった一つでいい。彼の心をください…。)
エレンは1人静かに涙を流した。
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