第17話 王女の命を狙う者 事件の真相と黒幕

「エレン様!!」


森を出た途端、騎士たちが集まってきた。


「状況は教授方に聞きました。他の生徒の半分はもう既に保護致しました。残りはどこにいるか分かりますか?」


騎士たちのリーダー格の男性が尋ねる。


「…残りの生徒はおそらく森の中です。そう遠くへは行ってないでしょう。」


「そうか。君は?見た感じ生徒のようだが」


「ライト=ファーベル、王立学園の生徒でございます。僭越ながらエレン=ルイ=ファマイル王女をここまで連れて来ました。彼女に怪我はありません。」


「うむ。ご苦労であった。エレン様は我々に任せなさい。そして、君にも事情を聞く必要がある。我々と共に来なさい。エレン様、貴女はこちらの馬車で城へと向かって頂きます。陛下も王妃様も大変ご心配なさっていました。さあ、早く。」


「かしこまりました。」


そういうとライトは騎士にエレンを渡そうとする、が


「嫌。ライトも私と共に来なさい。」


「…!?エレン様!?何を仰っておるのですか!?」


騎士は驚きの声を上げる。


「黙りなさい。ライトは私と来るの。これは命令よ。早く馬車を準備しなさい。」


「…しかし!」


「私の言葉が聞こえなかったの?ならもう一度言うわ。さっさと馬車を準備しなさい。」


「…かしこまりました。」


騎士は渋々折れた。


「さあ、行くわよライト。」


「行くわよって言うなら自分で歩けよ…。」


エレンはライトに抱えられながら馬車へと向かう。


馬車に乗り込む際、ライトはエレンの首にあった自身の右手に魔力を込める。


バチィ!!


青い雷が発生し、エレンを包む。


「貴様!!何をした!?!?」


周りの騎士達が声を荒げる。

全員剣を抜いて、ライトに威嚇している。


「ご心配なく。気絶させただけです。その方が都合が良いのはあなた方も同じでしょう。

あー…、疲れた。帰って風呂入って寝よ。

これ以上面倒臭いことはゴメンだ。」


ライトはそう言うとぐったりしたエレンを馬車に乗せる。


「事情なら後で説明致します。

今はとりあえず家に帰らせてください。


あぁ、後、これから森へ生徒を保護しに行くなら注意してください。かなりの手練れが潜んでいる可能性が高いです。では、お気をつけて。」


そう言うと、唖然とする騎士達の間を抜けていく。



「さっきの話ぶりからして教授たちは生きているようだな。良かった…。」


ホッとしたのは束の間

重要な事に気が付き、引き返した。


「あの〜、すみません。」


「何だ!!まだ何かあるのか!!」


警戒心たっぷりの声で騎士が答える。


申し訳なさそうにライトは言った。


「王都に帰りたいので、馬車出してくれません?」


「「「「は?」」」」







翌日、

王都セレスティア城エレンの自室にて—


「ライト!!ライトはどこなの!?」


目が覚めると同時に叫び、暴れるエレン。


「エ、エレン様!!もうじき国王陛下とお妃様がいらっしゃいます!!どうか落ち着いてください!!」


メイドの1人が悲鳴をあげて抗議するも


「お父様なんか要求してないわ!!

とっととライトを連れて来なさい!!

あの男!!ずっと傍に居るとか言ったくせに!!(言ってない)」


エレンは全く聞く耳を持たなかった。

そこへバァンと勢いよく扉が開き、


「我が愛しのエレンよ!!目が覚めたか!!

心配したんだぞ!!!!!!」


と、白髪で髭の生えた男性が顔を涙でぐちゃぐちゃにしなら部屋へと入って来た。


第15代国王 バーナード=ルイ=ファマイル

普段厳格で有名な彼からは想像もつかないその姿と表情。

お察しの通りこの国の誰よりも娘を溺愛している。


《だから!!アンタなんか!!呼んで!!ないのよ!!!》


エレンがそう叫ぶと彼女の右手の平から突風が発生し、


「ぐわぁぁぁぁぁあああ!!」


吹き飛ばされる国王。

そのまま壁に勢いよくぶつかった。


「へ、陛下!!!!」

従者たちが慌てて国王へ駆けつける。


「あらあら」


そんな光景をただ1人笑顔で見つめる者がいた


王妃マリー=ルイ=ファマイル。

バーナードの愛しの妻であり、エレンの母親である。


「お母様ぁぁぁぁ!!」


エレンは泣きながらマリーに抱きつく。

エレンは嫌なことがあるとマリーに甘える癖がある。


「よしよし。」


そんな愛しの娘を、マリーは優しく撫でた。


「ライトがぁ…ライトがぁ…。」


「よしよし、よく頑張ったね。やっぱりエレン偉い、エレンは偉い。」


「うわぁぁぁぁん!!」


エレンは大泣き。

従者たちはアタフタしている。

まさに阿鼻叫喚。


「ワシも…エレンに抱きつかれたい…。」


バーナードはそう呟くと白目を剥いて気絶した。




セレスティア城とある部屋にて。


「全くバーナードは…。どんだけ娘を溺愛しとるんだ。この姿が民達がみたら唖然とするぞ…。」


そう言ってため息をつく銀髪の老人。


「フォルト様、今回の調査結果を持ってきました。」


部下から紙を受け取り、報告内容を確認する


「どれどれ…。やはりこの2人だったか。」


そう言って険しい表情をする。

今回の王女襲撃事件の主犯は2人。

1人は教授たちが倒した者。

もう1人は森で発見された者。

共に騎士達が発見したときには既に死亡していた。

騎士達によって生徒は誰一人欠けることなく無事保護されたが、全員襲撃にあった夜の記憶が朧げで、今回の事件によって得られた情報は少なかった。

教授達も同様であり、(レナードのみ何か考えている様子だったが)唯一、エレンと行動を共にしたライトの

「ワイバーンデビルの攻撃で吹き飛ばされましたが運良く見つからず隠れることができました。」

という発言が真実という事になった。

正直、生徒たちがワイバーンデビルに敵うはずが無いとされ、不可解な点は多いが誰も疑問には思わなかった。


「元Aランク冒険者か。そんな者共に襲撃されよく生き残った者よ。特に内1人はこの国随一の召喚士。さすが王立学園の教授と生徒といったところか。」


「彼等は先月、問題行動で冒険者ライセンスを剥奪された者達です。腹いせでしょうか?」


「違うに決まっとるだろ。そんなことをして何の得がある?」


「では…やはり…」


「そうだ。これを見ろ。」


フォルトはそう言うと一枚の紙を部下へと渡す。

そこにはブラックマーケットでの依頼が書かれていた。


「王女の首 金貨1万枚!?」


人身売買。闇の大富豪大商人の一部で密かに取引されている。人物が高貴であればあるほど値段は高くなる。


「…うむ。今回の依頼主は人身売買王アブラ。今回は何とかなったが、これだけの依頼料だ。金目当てで冒険者をしている者がいつ王女の命を狙うか分からん。即行で捕らえないとだな。」


「そうですね。」


「まぁ私はそろそろ引退だからな。後は頼んだぞ。」


「そんな!無責任な!」


「ハッハッハ。心配するでない。私にも考えはある。ただでは隠居はせぬよ。」


「は、はぁ。」


部下は首を傾げた。


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