第14話 王女の気持ち
私の名前はエレン=ルイ=ファマイル。
ファマイル王国第一王女として生を受けた。
物心ついた時から何でもできた。周りからは天才と呼ばれ、持て囃された。
どんな人間も私に媚びへつらい、機嫌を伺う。みんな私を必要としてくれる。誰もが私を認めてくれる。そんな人生を送ってきた。そしてそれはこれからも続くと思っていた。
—私の前に悪魔が現れるまでは—
ワイバーンデビルが目の前には現れた時、私はどう足掻いても死ぬんだということが伝わった。
嫌だ 死にたくない 怖い
脚が震え、気がついたら失禁していた。
否応なしに、気付かされる。私は弱い。
悪魔を目の前にして私は何も出来なかった。
逃げることも、立ち向かうことも。
助けて…。
やっとの思いで掴んだ男子生徒の袖はいとも簡単に振り解かれ、全部私のせいだって罵倒された。
あれだけ私のご機嫌を伺って、ついてきていたのに…。誰も私を助けようとしなかった。
アハハ…なんだ…、
みんな私のこと、必要としてないんだ。
ただ利用してただけなんだ。
まぁ私も同じようなことしていたけど。
死にたくない…。
色んな感情が、頭の中を渦巻く中、「彼」の背中を握りしめた。無駄だと分かってる。きっと拒絶される。「彼」にも酷いことをしてきたのだから。
でも違った。
彼は決して私を離したりなんかしなかった。
彼は、私を腕で抱きながら悪魔の攻撃を躱す。
1発でも当たったら死んじゃうというのに。
私なんか放っておけばいいのに。
彼の腕は私をしっかりと守る。
どうして?なんでそこまでするの?
私はあなたのことを見下して、暴力まで振るった女だよ?ほら、貴方の腕だって服だって汚くなってるよ?なんで?どうして?
悪魔への恐怖といつ彼に捨てられるかもしれないという不安でいっぱいになる
「カフッ…コフッ…カハッ!!!」
息が出来ない。苦しい。あぁ、私、結局死ぬのかな。
「カフッ…コフッ……んん!?」
唇に柔らかい感触ー。
私は彼にキスされていた。
それと同時に私の胸の中が暖かくなる。
彼が助けてくれているんだろうか?
悪魔の攻撃の衝撃波で私は彼と共に吹き飛ばされる。でも私に痛みはなかった。
彼が守ってくれたから。
そっと唇が離れていく。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
もう苦しくなかった。
彼が助けてくれたから。
彼が私の傍に居てくれるから。
それでも…弱い私は言ってしまう。
「嫌だ…死にたくない…」
バカね。彼は命をかけて守ってくれているのに。なんで自分しか見ていないんだろう。
でも、こんな惨めで弱い私を、彼は優しく撫でてくれた。
「大丈夫、お前は俺が守る。」
彼に抱きしめられる。
ーあったかいー
胸がポカポカする。
ずっと、ずっと彼の腕の中にいたい。
ずっと、ずっと彼の胸の中にいたい。
ずっと、ずっと……私の傍に居て欲しい。
こんな気持ちは初めてだった。
あぁ…。そうか。
私は彼のことが、
好きなんだ。
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