第12話 王女の命を狙う者 死闘
ライト視点
「チッ!!」
斧を間一髪、護身用に持っていた剣で弾く。
逸れた攻撃は木々を薙ぎ倒し地面を深く抉る。
「嫌ぁぁぁぁぁあ!!!」
「チッ…」
やべえなこの威力。当たったら1発でお陀仏だ。咄嗟に攻撃を塞いだため、衝撃が巧く流せなかった。剣が曲がりやがった…。これじゃあ使い物にならない。エレンはというと、さっきの衝撃音でさらに弱々しくなってしまっている。どうする…。
「…っ!!」
また斧の攻撃が来る。
足で斧を横側から蹴り、攻撃の軌道を逸らす。
すぐ横の地面が深く抉られ、衝撃波で吹き飛ばされた。
考えてる時間すらくれないか。
背中を掴んでるエレンを無理やりお姫様抱っこする。おそらくエレンは俺にしがみつく余裕すらないだろう。両手は使えなくなるが、攻撃は躱せる。
「ぐおおおおおおおおおおっ!!」
悪魔が雄叫びをあげ斧を振り回す。
その度、木々が切り裂かれ折れていく。
それを俺はエレンを抱えて避け続ける。
森であるということが幸いした。悪魔は木々が邪魔して巧く狙いを定められていない。また、こちらからすれば隠れるにも丁度いいが
「うぐっ…ひぐっ…。」
泣きながら俺の胸にしがみつくエレン。
コイツを連れながら逃げ切ることは無理だろう。
ワイバーンデビルは鼻が異様に優れている。
俺の腕と服、エレンの脚は『彼女の』で濡れている。隠れたとしても、匂いで勘付かれる可能性が高い。
そしてワイバーンデビルは夜行性。つまり夜目がかなり効く。
このままだと夜になり一方的な虐殺の始まりだ。
かなり森の奥深くへ来たせいで、遺跡付近へと戻るのに時間がかかる。
俺たちの生き残るルートは、このままこの悪魔の攻撃を掻い潜り、森を脱出してレナード先生たちと合流すること。だが、それは時間的に不可能だろう。おそらく半分行ったほどで日は沈む。
もう一つはレナード先生たちが駆けつけることを信じて、このままこの悪魔の攻撃を避け続けること。
そしてもう一つは——…。
「カフッ…コフッ…カハッ!!!」
その音で気づいた。
悪魔の攻撃をかわすことだけに集中して、エレンのことを全く見ていなかった。
おそらく重度の恐怖心によって呼吸が出来なくなっている。
「カフッ!コホッ!………んん!?!?」
俺はエレンにキスをした。
自分の吐く息に魔力を込める。魔力を彼女の肺へと送り込み、彼女の呼吸を安定させる。
その隙に斧の攻撃の衝撃波を喰らう。咄嗟に受け身を取るが、そのまま地面に倒れ込んでしまう。
ゆっくりと唇を離す。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
とりあえず大丈夫になったようだ。
と、同時に左足首に鈍い痛みが走る。
先程の衝撃で足を挫いた。これでは攻撃を避けることはできない。
「…チッ!」
現状は最悪。
目の前には悪魔。
命乞いすら通用しないだろう。
チェックメイトだ。
「嫌だ…死にたくない…」
震える手で抱きつくエレン。
俺はそんな彼女の頭をワシャワシャと優しく撫でる。
あのときレナード先生がやってくれたように。
「大丈夫、お前は俺が守る。」
そう言うと彼女を優しく抱きしめる。
コイツの事は大嫌いだ。
コイツのせいで、俺がどれほど辛い思いをしたか…。
だが、だからといって見殺しになんか出来ない。助けられる命があるのなら助ける。
—そうアイツと誓ったから—
そう決意すると彼女を右腕で抱き締めながら左腕を天に向かってあげ、そして叫んだ。
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