第11話 王女の命を狙う者 嵌められた王女と招かざる客
エレン視点
第一班と分かれ、私達は森の奥へ奥へと進んでいく。
「…エレン様、本当にこんなところに遺跡があるんですか?」
「知らないわよ。けど、探すの、なんか文句ある?」
「い、いえ、ありません。ですがその、そろそろ戻らないと…。」
「なら1人で勝手に戻りなさい。」
「す、すみません。」
歩いてかなりの時間が経った。私についてきた下僕達も疲れが見えている。
—潮時かしらね—
そう思った時目の前に大きな岩があった、
よくよく見るとそこら中にある。
これは!!!
他の生徒も気づいたらしい。目に力が戻った。
少し先に進むと『ソレ』はあった。
立派な遺跡。まるで森の奥深くに眠る木の集落。
「ほら見なさい!!あったじゃない!遺跡!」
私は興奮していた。他の生徒も同じだ。ここに遺跡があるなんて聞いたことない。これは世紀の大発見だ。
「さぁ行くわよ!」
そう言って奥へ奥へと進んでいく。
その時——
「待てよ!!!」
うるさい声が響く。
「あら、平民が私たちに何か用かしら?」
「いや、お前ら何やってんだよ!!」
「見てわからないの?遺跡調査よ。」
「遺跡!?お前何言ってんだ!?!?」
「平民にはそんなことも分からないのね。もう良いわ。邪魔だから帰ってくれない?私たち新遺跡の調査で忙しいの。ゴミに構ってる暇はないのよ?」
周りがクスクスと笑い出す。
こんな薄汚い平民に手柄なんか渡さないわ。
「何言ってんだよ!!
ここに遺跡なんてないだろ!!!!!」
「は?何言って…」
その瞬間、私たちのあたりの景色が変わる
あたり一面木、木、木。
「あれ!?遺跡は!?遺跡はどうしたの!?」
私は訳がわからず混乱する。
周りもみんな同様だ。
ただ、平民だけは何か気づいたように顔を真っ青にしている
「まさか…幻術魔術?一体誰が…?なんのために…?」
彼は何か知っている。そう思った私は彼に詰め寄ろうとした、
その時
「!?」
私たちの頭上に大きな紫色の魔法陣が出現する。
そして中からは1匹のバケモノが出てきた。
赤黒い巨大な体。右手には斧を持ち、額からは立派な黒い角が2本生えている。
そして背中にはドラゴンを連想させるような翼。殺戮を好み、度々ギルドに討伐依頼が出され、その度多大な犠牲者を出している、第一級重要危険魔獣。一般の市民にですら恐れられるソイツの名前は…
「ワ、ワイバーンデビル…。」
誰かが言った。
Bランクの魔獣が
涎を垂らし、こちらを見ていた。
ライト視点
「なんでこんなところにワイバーンデビルがいるんだよぉ!!!!!!」
男子生徒1人が叫んだ。
決まってんだろ。誰かが召喚したんだよ。俺たち、いや、お前たちを殺すためにな。
ワイバーンデビルが出るときに見せたあの魔法陣はおそらく召喚魔術だろう。なら、近くに術者が居るはずだ。
おそらく敵は1人。
幻覚魔術を使い、ここまで誘き寄せ、ワイバーンデビルを召喚した。
もし、敵が2人以上いるならば、幻覚魔術を解く必要がないからな。むしろ幻術で操っていた方が殺しやすい。
じゃあなぜ解かなきゃならなかったのか。理由単純、魔力不足だ。
召喚士は魔物と契約することにより召喚を可能とする。すなわち、契約を維持するには常時、魔力を消費する。ワイバーンデビルを召喚するにあたって幻覚魔術を維持するのが困難になったんだろう。おそらく今術者の力はワイバーンデビルのみと見て間違いない。故にただコイツを倒すだけで良い。
…勝てるか?俺が。
少し無茶をすれば多分なんとかなる…が…
「何なの!!何なのよぉぉぉぉ!!」
「助けて!!ママぁぁぁぁ!!パパぁぁぁぁ!!!」
「嫌だぁ!!死にたくない!!嫌だぁぁぁぁ!」
さっきまでの俺に対しての威勢はどかいったのか。泣きじゃくる貴族たち。こんな足手纏いどもがいたら無理だ。
エレンに至ってはあまりの怖さに座り込み、失禁している始末。
「死にたくないならとっとと逃げろ!!!」
俺が大声を出す。
「う、うわぁぁぁぁあ!!」
「嫌ぁぁぁぁぁああ!!」
四方八方へ逃げていく貴族。
「うぅ…。こ、腰が、ね、ねぇお、置いていかないで!!」
近くにいた男子生徒の袖を掴むエレン。
しかし、男子生徒はそれを乱暴に振り解く。
「うるさい!黙れ!!元はと言えばお前がここに連れてきたんだろ!!責任持って食われろよ!」
そう言うと走り去ってしまった、
「あ、あぁ…。」
泣きじゃくるエレン、そして俺の背中を掴む。その手は震えていた。
やはりエレンが狙いか。逃げる他の生徒には目もくれずただただエレンのみを見ている。
だが状況は最悪だ。エレンはおそらく使い物にならない。逃げる事すらできない。完全な足手纏い。
「…助けて…いや、だ、死にたく…ない。」
俺の背中でつぶやくエレン。
おそらくエレンを差し出せばこの悪魔は帰るだろう。今まで俺はコイツにずっと酷い目にあわされてきた。そんなやつの為に命をかける気はないが、
「分かった。」
俺の口からは真逆の答えが出ていた。
そう言った瞬間、悪魔が俺たちに向かい斧を振りかざした——
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