第10話 王女の命を狙う者 奇怪な行動
日が登る前に王都を出発し、既に日が真上にあるとき、調査隊は目的地に到着した。
王都から南へ約50キロ
ピョンド遺跡。探査難易度は最底辺。初心者が調査するのにはもってこいだ。
今回ピョンド遺跡からあまり遠くない原っぱを拠点にした。
「まずはテントを作りなさい。明後日の朝、馬車は戻ってくるわ。今夜はここで寝て、明日の早朝から調査に入るわ。」
皆に指示を出すエレン。
能力で言えばリーダーはエレンでいいだろう。…ライトを除けば…だが…。
黙々と準備を始める。教授達は既にこの場にいなく、何処か遠くでここを見ているらしい。あくまで生徒の自主性を育てるためだ。
「おい平民、さっさと動けよ!!」
「こっちもやりなさいよ!私たちにやらせる気!?」
みんな初めはテンションMAXで乗り気だったが、さすが貴族の坊ちゃんと言ったところか、すぐに飽きてやめてしまった。教授たちがいないのをいいことに、ほぼ全ての労働をライトに押し付けている。指示を出したエレンはというと、数人の従者のような生徒とお茶会を開いている。
全員分のテントや必要なことを成し終えた時にはもう日が暮れそうになっていた。正直、もっと早く出来たが、目をつけられたくなかったため、ライトは手を抜いた。
Sクラス達はというと、料理に関しては女子はノリノリで行い、カレーを作っていた。
貴族といえど男子達。我先にと女子達が作ったカレーを貰いに行っていた。
ライトも貰いに行こうとすると
「アンタなんかにあるわけないでしょ?アンタが使えないせいでこんなに遅くなったんだからそこら辺の草でも食べなさい?」
ゲラゲラと笑う。
そう言われた。まぁ正直分かっていた、が、文句を言っても仕方がないので1人森に入り、きのみを探す。リンゴ3個ほど見つけると、食べた。思いの外労働は疲れていたらしい、すぐに食べ切ってしまった。
「…あー、めんどくせぇな、クソが」
そう呟いた。晩御飯も貰えなかったのだ。
おそらくライトの寝る場所はないだろう。
適当に森の中を探し洞窟を見つける。
また、近くに川があったので軽く汗を流しそして睡眠をとった。
ライト視点
翌朝—
「あら、生きてたの平民。」
テントの場所に戻った俺に対し声をかけてきたのはエレン。
「昨日いなくなってたから死んだのかと思ったわ。みんな喜んでたわよ?」
「そうかよ…。」
こんな奴が次期国のトップになると思うと吐き気がする。
…まぁ正直こんな国いつでも滅ぼせるからいいか。そう思い、無視して遺跡へと向かう。
「どこに行くの?リーダーである私に逆らう気?アンタみたいなゴミでも弾除けくらいには使えるの。勝手な行動しないでくれる?」
「ハッ、笑わせんな。俺をチームとして見てるなら昨日の時点で探せよ。」
無視して先に進む。
「…ふん。まぁ言いわ。このことはきっちり上へ報告させて頂きます。生きても死んでもこの学園に貴方の居場所があると思わないことね。」
そう言うと踵を返し、戻って行った。
バカな奴らだ。教授が護衛としてつくってことはいつでも見られてるということ。確かに全校生徒相手ではどうしようもないかもしれないが、1クラス程度なら何とかなるだろう。身分差別の扱いをし、俺を追放。まぁ自分から出て行ったんだが…。俺は穴埋めとはいえ調査隊の一員だ。仲間を見捨てるという行為は充分罰せられる材料となっただろう。おそらくコイツらの殆どはSクラスには居られなくなるだろうな。まぁ流石に退学とまではいないと思うが…。
他の生徒のバカさを嘲笑しながら、1人先に遺跡に興味深くあたりを見る。
古代の文字、壁画、彫刻。
物の価値には2つある。
1 材料の質や、機能性
2 一流の職人によって作られた芸術性
今回のピョンド遺跡は後者だろう
明らかに手の込んだ細かい彫刻や壁画からは作者の魂が浮かびあがってくるようだ。
「綺麗だ…」
柄にもなくそんなことを呟いた。
エレン視点
「まぁ良いわ。元々パーティ編成に入れてなかったしね。」
ライトを除く総勢28人の生徒、これを2つの班に分ける。
1 遺跡内調査隊
2 遺跡『外』調査隊
遺跡周辺に遺跡の新層や、別の遺跡が発見されるのは珍しくない。
正直「誰がもう何回も調査されているお古の遺跡を調査するもんですか!私を舐めてんの?」と思った。
かと言って外部を調査して何もなかった時、学園になんて報告すれば良いかわからない。そのため一応半分ほど遺跡内を調査させておく。
ピョンド遺跡の近くには深い森がある。そこに遺跡がある可能性は極めて高いわ。新遺跡発見の手柄さえ立てられればあんな平民の1人や2人死のうと関係ないわ。
さぁ、いくわよ!!
ライト視点
…騒がしくなってきたな。おそらくエレン達が遺跡調査を始めたんだろう。
鉢合わせるのは面倒だ。
もう少し見たかったが、一旦外へ出るか。
生徒達と入れ違いになるようにライトは遺跡の外へでた。そのとき、森の方からふと声が聞こえた。
「ほら見なさい!やっぱり……あったじゃない!…!!さあ…は…るわよ!」
エレンの声だ。
ここから少し離れているのか、声がよく聞こえない。
なんだか胸騒ぎがした。
すぐに森の中へ入る。
アイツらかなり奥へ行ったらしい。
勝手な真似を…。
気配を殺しながら走る。…近いぞ…。
しばらくしてエレン達が見えて来た。
この会話を聞いて俺は絶句した。
「ほら見なさい!!新しい遺跡があったじゃない!!さあ!!行くわよ!そして私たちでこの遺跡の秘密を暴くのよ!!」
「おぉぉぉぉぉぉおおおおお!!」
いつもより異様にテンションの高いエレン達がさらに奥深くへと歩いていく。
「何言ってんだアイツら!?遺跡なんてどこにもないだろ!!」
エレンの言っている遺跡などどこにもなく、先にあるのは深緑の木々だけだった。
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