第4話 2年後
「ここに来るのも久しぶりじゃの。」
ニックは呟いた。
2年前、奇妙な依頼受けてこの地へと赴き、そこで出会った、桁違いの少年ライト。今日、彼を学園長としてスカウトしに来たのだ。
「…もし、コレがバレたらまずいのう。」
去年就任予定だった学園長だったが、冥界に異変が見られ、ギルド長として急遽対応せざるをえなくなった。冥界の女王ルシファーの復活の兆候が見られ、対策に追われたものの、結局杞憂に終わったのだった。学園長として、1年間で他の教授達、というより、生徒たちの信頼を勝ち取り彼を堂々と推薦入学させるつもりだった。しかし、今回のことで自分の就任と同時に推薦するという結果になってしまった。これには少なからず反発があるだろう。おそらく、彼の優秀さを考えれば教授陣は大丈夫だろう。彼等は身分で判断せず、生徒の能力を適切に評価する者たちだからだ。問題は生徒だ。学園内の調査を行った結果、平民に対して横暴な行動をする生徒が多数見られた。そして今年は第一王女のエレン様も入学予定だ。
「何事もなく彼が学べるといいんじゃが」
その願いはすぐに打ち砕かれることとなる。
「ニックさん!!お元気そうでなによりです!!」
村に着いた途端、黒髪の少年が笑顔で挨拶する。
「おう、ライトか。久しいのう。元気だったか?」
「はい!」
「うむ。その様子だと良い返事が聞けそうかな?」
「はい!これからよろしくお願いします!」
「うむ!!良い気合いだ。君の成長を楽しみにしておるぞ!!」
「ライトー!!頑張れよ!!」
「ライト!!立派になってくるのよ!!」
「ライトならできるさ!頑張れ!!」
「魔術が上手に使えなくなったってお前には剣術がある!!諦めんなよ!!」
「ライトー!!お土産待ってるよ!!」
「おう!みんなありがとな!行ってくるぜ!」
ニックは会話の途中で聞こえた声にいち早く反応した。
「魔術が使えなくなった…?」
「…?どうかしました?ニックさん?」
固まるニックに声をかけるライト。
「いや、何でもない。いくぞライト、馬車を待たせておる。」
「はい!」
少し不安そうな顔をしたニックと共にライトは馬車へ向かった。
馬車の中には、小さな眼鏡をかけた若い男、ロイドがいた。
「…君がライトくん?」
「あ、はい。えっと…あなたは?」
「すまない、申し遅れました。私はフェルマー家の長男、ロイド=フェルマーと言います。王立学園で教授をしております。以後、お見知り置きを。」
「…なっ!!フェルマーってまさか第一公爵の!?!?と、とんだ御無礼を!申し訳ありません!!」
ライトは慌てて頭を下げる
「…ふふっ、聞いた通り、純粋で良い子ですね。将来が楽しみです。」
「そうじゃろう?だが、驚くのはまだ早いぞ?この子の能力をみてみぃ」
「ステータスをですか?…わかりました。」
ロイドの職業も鑑定士である。
ロイドは少し不思議に思いながらもライトのステータスを見る。
「…っ!これは!?!?」
途端、目を見開く。
「…のう?わかったじゃろう?」
「はい…。正直信じられません。
まさかこれほどの逸材がいたとは。」
「アハハ…。なんだか照れ臭いな。」
この国トップクラスの権力者に褒められて、ライトは嬉しそうだ。
「…これなら実技試験は無しでも良いでしょう。しかし、筆記の方はどうしますか?失礼な言い方かもしれませんが、正直あの村で生活していて学園入学の知識があるとは思えません。」
「一応個別で試験を受けさせる予定じゃ。まぁなんとかなるじゃろう。」
「それで大丈夫ですか?ライトくん。王国の歴史問題等もでますが。」
「はい。問題ないです。
実をいうとこの2年冒険者として活動していたんです。その際、何度も王都へ行きました。ついでに図書館で学園の試験用の本を大量に購入しておきました。難易度が高すぎるなんてことがなければ、なんとかなる自信がありますね。」
(…なるほど、だからか。第一公爵家であるフェルマー家のことも知っていた。何より、彼が自分の能力の高さについてちゃんと理解できていた。
以前会った時は、自分の能力どころか周りの能力ですら分かってなかった風に見えたから心配しておったが…。
この変化は入学においてかなりありがたい)
そうニックは感じていた。
「それは頼もしい。健闘を祈ります。」
「はい!」
「…そうじゃ!ライトくん!あの話は本当なのかね?」
ニックは、とあることを思い出した。
「…あの話とは?」
ライトは何がなんだかわかっていないらしい。
ニックが一度深呼吸していう。
「魔術が使えなくなったという話じゃよ」
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