第2話 アイテムの使い方

 円球メニューを開くと右上に黒い四角と黒い線が表示されているのに気がついた。

 どうみてもマップだ。

 現在地と思われるところには赤い点が点滅している。


 深呼吸する。


 俺は熱くなると周りが見えなくなる。

 今までの失敗から学んだ。

 深呼吸は俺の俺を取り戻す手段だ。

 浅い呼吸になると、酸素が十分に取り込めず、体内の酸素が不足する。


 トゲトゲ棒を握った手をゆっくり緩めた。

 危なかった。

 HPが0イコール死の可能性は高い。

 バーなのでHPの数値がわからないが、lv1ではスライムの体当たりが5回で0になる程度だった。

 また、lv1で2回攻撃を当てて倒すことができた。

 命中は、4回中2回。

 ルールも把握できていない中で初接触の敵がこれだとやばいバランスだよな。

 ガチ感がすごい。

 スライムの体当たりで5回。

 lv2だと何回耐えられるか。

 

 何事も数字の感覚は大切だ。本当にターン制のルールなのであれば、先を読みながら一つ一つの行動を落ち着いて処理するのが肝心である。


 まずは、この階層をしっかり回ろう。

 このトゲ棒のようなアイテムを集める。

 

 俺は、部屋に入った時の通路の反対方向にあった通路を進んだ。

 マップの情報は大きい。進めば自動的に更新されていく。

 

 っと。

 

 正面にまたスライムだ。

 よしっ、先制攻撃。

 当たった。

 

 lvが上がったせいか、前より当たりやすいという感覚がある。

 

 ぐおっ。

 

 スライムの体当たりを受けた。

 回避できるのだろうか。次は意識してみるか。

 落ち着いてHPを見る。

 うん。あと5回ぐらい耐えられる。

 1回分余力がうまれたって感じだな

 1撃の痛みも前ほどではない実感だ。

 俺は再度攻撃を当てて、スライムを倒した。

 今回も2回の攻撃が必要っと。


 歩いているとHPは自然回復するようだ。HPは満タンとなっていた。

 通路を進むとまた開けた部屋にたどり着いた。

 

 まずは安全確認。部屋にスライムはいない。

 部屋の真ん中には草が2つ生えていた。

 種類は違うように思われる。

 真ん中にポツンとあるなんて・・・、明らかに違和感がある生え方だ。

 アイテムに違いない。両方の草を抜いてみた。

 

 この草。

 

 何かしらのアイテムの可能性が高いが、どうやって使うのか。

 食べるのか?根に土が付いている。

 食べてみるにしても水場を探して洗ってからにしたほうがいいかな。

 とりあえず、俺は背中のリュックに2つの草を入れた。

 円球コマンドの”持ち物”を見てみた。


”薬草” 

”毒草”


 なるほど。

 リュックに入れると何のアイテムかわかるのか。

 これは便利だ。表示名に触れると、”効果”と表示された。

 それぞれの”効果”に触れてみた。


薬草・・・食べるとHPを少し回復する。

毒草・・・食べると攻撃が5減る。


 おいおい。毒草食べてたら洒落にならんじゃないか。

 相当ガチらないと、スライム倒せないほどの攻撃力になっていたであろう。

 今一時の気持ちで行動しない方がいいな。

 慎重に慎重に。


 俺は更に奥へ通路をゆっくり進むと水場がある部屋にたどり着いた。

 助かった。

 ちょうど喉が乾いてきたところだ。

 っと。この水は飲めるのか。

 何か試す方法は・・・。

 俺は思案するとすぐにある方法を思いついた。


 リュックからペットボトルを取り出し、残りの水を飲み干した。次に空となったペットボトルをリュックに入れた。

 ”持ち物”の表示は、”空のペットボトル”だった。

 さあて、ここからだ。

 俺は、空のペットボトルを取り出して、水場の水を入れた。

 リュックに入れて”持ち物”表示を確認した。


”水”


 なるほど。じゃあ、飲める・・・。いや、待てよ。

 慎重に行動するんだ。

 俺は、ペットボトルを取り出して、地面の土を入れた。

 ペットボトルの水が茶色になる。

 これを再度リュックに入れた。

 表示は、”泥水”に変化した。

 異物が入った水は、ちゃんとリュックでそのように表示されるようだ。

 ”水”は飲料できる水を示している。

 つまり、この水場の水は飲めるということだ。

 このリュックは便利だ。最重要アイテムだな。

 俺は、泥水を地面に捨てて、水場でペットボトルを洗った後、改めて”水”を入れて飲んだ。

 

 うん。うまい。


 少しづつ。少しづつだが、積み上げていく手応えを感じてきた。

 ルールがわかってきた。

 もしかして、行けるんじゃないか。地下3階。

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